大韓民国国会議員の皆さま

      韓国市民の皆さま




2022年2月7日

日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワーク

                  共同代表 足立修一 

                       田中利幸 

                       土井桂子

               



韓国国会倫理特別委員会は直ちに尹美香議員の除名手続きの

中止をされるよう要請します



私たちは敬愛する尹美香さんが韓国で起訴されたというニュースに接して以来、検察の起訴内容は裁判の過程できっと誤りであることが証明される、という強い確信を持ち深い関心を払ってきました。実際9回までの裁判で、起訴自体に本来無理があったことが検察側証人によって証明されるなかで審理が進んでいます。



ところが、裁判が進行中であるにもかかわらず、今度は韓国国会倫理審査諮問委員会が議員除名を議決したと知らされ、しかもその理由が「伾対協に損害を与えた」ことだと聞き、あまりの展開に驚き、憂慮を深めています。



すでに多くの団体から出された声明が述べているように、尹美香さんは伾対協(韓国伾身隊問題対策協議会/現日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)に損害を与えるどころか、その献身的な活動を通して日本軍性奴隷制問題を世界に知らしめ、被害者たちを支援してきた団体の中心的な方です。10年前の日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワークの発足に際しても「戦争と女性の人権博物館」の開館直前でご多忙であるにもかかわらず来広され、記念講演をしていただきました。また、2013年には金福童ハルモニ、吉元玉ハルモニに同行して西日本各地での「慰安婦」問題解決キャンペーンに参加されました。




 30年前は、日本軍性奴隷制被害者が戦時中の性被害は自分の責任であるかのように自らの身に起こったことを恥じて隠し、身を潜め、沈黙して生きざるをえなかった社会でした。しかし伾対協の国内外における諸活動が、紛争下の性暴力被害者問題に光を当て、被害者ハルモニたちの証言活動を通して世界の認識に変革を起こし始めました。尹美香さんは献身的に被害者ハルモニたちに寄り添い、非人道的な日本軍「慰安所」制度の犠牲となられた方々の被害が癒されるように、様々な分野の人々の協力を得てプログラムを実施する組織の中心にいました。『20年間の水曜日』という彼女の著書を読めば、伾対協の運動がどのようなものであったかよくわかります。伾対協は、被害者が被害者という受け身の立場に留まらずサバイバーとして積極的に生を全うできるために、自らの名誉と尊厳の回復を獲得していく環境を用意した組織です。毎週水曜日に定期集会を開くことがどれほどのエネルギーを要することか、多くの団体で成り立っている組織の運営がどれほど大変か、市民運動に取り組めばわかります。「被害回復の過程はまず、自らの体験を語ることから始まる。語り、受けとめられることを繰り返すなかで、信じてくれる人、自分を否定しない人がいることを何度も何度も確認しながら、被害者たちは被害回復の道を歩んでいく。そしてそのようなサバイバーの姿が周囲の人々を変え、社会を変える(梁澄子)」。(『「慰安婦」問題と未来への責任』より抜粋)そうした中で韓国の日本軍性奴隷制被害者は女性人権活動家へと自ら変革していき、コンゴへ、ベトナムへと連帯の活動を広げていかれています。




 尹美香議員が与党ともに民主党から排除され今度は国会から除名されようとしている問題の根源は、1993年、日本政府が河野談話によって日本軍「慰安所」制度に関する日本軍の関与を認め、謝罪の意と、記憶に留め同じ過ちを決して繰り返さない決意を表明したにもかかわらず、日本政府が責任を果たさなかったこと、それは日本市民の責任でもあります。司法の判断が出ない中で、間違った情報を利用して尹議員が政治的、社会的に抹殺されていくのを私たち加害国の市民は座視することができません。



大統領選挙を控える政治状況の中で、懸命に誠実に政治家としての責務に励んでおられる尹美香議員の政治生命が絶たれることは韓国の民主政治に汚点を残す結果となることでしょう。歴史上恥ずべき政治的除名が起こらないことを私たち加害国の市民も強く願っています。倫理特別委員会は直ちに除名手続きを中止されるよう要請します。