日本軍「慰安婦」問題解決全国行動は、620()、内閣府への「慰安婦」問題解決に向けた申入れを、日韓市民の共同で行いました。

 

韓国の「慰安婦」被害者たちは、1990年代後半から日本での裁判を行ってきましたが救済されず、そのため被害者たちは、韓国で日本政府を相手取り裁判を行ってきました。それらの裁判で、202118日、20231123日、25515日、原告勝訴の判決がでており、日本政府への賠償請求も出されています。しかし日本政府は、いずれも「主権免除」を盾に裁判に参加せず、「国際法違反」と言って誠実に向き合おうとしていません。

そんな中、韓国の裁判での代理人である弁護士たちと裁判の原告団体が来日し、全国行動とともに内閣府への申し入れを行いました。





梁澄子全国行動共同代表は、『石破政権は、河野談話を継承するとしている。談話では、歴史の真実を回避せず、記憶し、二度と同じ過ちを繰り返さないとしているが、記憶するための世界に建立されている「平和の少女像」を撤去するために動いていることは許せない。また「強制連行はなかった」「性奴隷ではない」と歴史否定を繰り返すことが、問題をこじらせている』と最初に明言しました。



被害者の代理人を務めたイ・サンヒ弁護士は、「韓国の被害者たちは日本で4回の裁判を行っているが救済されていない。日本政府に責任があり、これは外交問題ではなく普遍的な人権問題として考えるべきだ。日本政府は国家免除ができると言っているが、人権問題には国家免除は適用されない。被害者の人権の観点から考えるべき」と強く訴えました。

 

故金福童ハルモニの継承人としての正義連のイ・ナヨン理事長は、「性奴隷制はなかったと言って、日本政府が韓国政府に責任を転嫁することは、被害者への2次被害だ。韓国国民の勇気と努力によって新政府が発足した今、日本政府は過去を直視し、共に平和な未来を築いていくために働いてほしい。韓国の被害者はすでに多くが亡くなっており、存命の方は現在6名だけ。被害者が生きている間に問題の解決を」と訴えました。




内閣府の担当者は、このようなことが二度とあってはならないと述べ、要望を官邸や外務省にしっかり伝えることを約束しました。






猛暑の中、内閣府要請の結果報告を待つ官邸前の仲間たちは、官邸に向かって「事実を認めて謝罪、賠償せよ!」とシュプレヒコールをあげて、今後もしっかり闘い抜くことをアピールしました。



(木瀬慶子)




〈以下、当日提出した要請書〉



日本国 内閣総理大臣 石破茂 殿


日本軍性奴隷制問題の解決を求める要望書



2025 6 19 日、<日韓条約 60 年日韓歴史正義平和行動代表団>が訪日した。これまで日本の植民地支配と侵略戦争の被害者と連帯し、東北アジアの平和と歴史正義の実現、被害者の人権回復のために共に努力してきた韓国と日本の市民社会が、日韓条約 60年を迎え、日韓市民連帯の成果を確認し、残された課題を共に模索するためである。

 

 

1991 8 14 日、長い沈黙を破って日本軍性奴隷制の被害者であることを公に証言した故・金学順さんをはじめとするアジア太平洋地域の多くの被害者の勇気は、世界中の戦時性暴力に対する人権規範を先導的に変化させてきた。

 

 

日本軍「慰安婦」被害者たちは、2021 1 8日の韓国のソウル中央地方裁判所第 34民事部判決、2023 11 23日のソウル高等法院第 33 民事部判決、2025 4 24 日の清州地方裁判所民事 7単独判決など、計 3回にわたって日本国を相手に起こした損害賠償請求訴訟で勝訴した。

 

「国家免除(主権免除)」という大きな壁を超え、日本軍性奴隷制度を体系的かつ組織的に考案し実行した日本政府と日本軍の責任を確認した先導的な判決だった。今や、国際法は国家中心から個人の普遍的人権を保障する方向に変化しており、もはや反人道的な犯罪をおかした国家が「国家免除(主権免除)」を理由に免罪符を受けることはできないことが明白になった。ところが、日本政府は日本国の法的責任を認めた韓国司法の歴史的な判決に対し「国際法違反」だとして反発し、履行を拒否している。

 

 

判決文にも明記されたように、これまで国連をはじめとする国際機関は、被害者中心の原則から外れた「2015日韓合意」は日本軍「慰安婦」問題の真の解決策にはなりえないと繰り返し警告してきた。

 


いわゆる「2015日韓合意」は、過去 10年間、問題解決どころか新たな問題を発生させる障害となってきた。被害者の相当数が反発し、日本政府の法的賠償金ではない「見舞金」ともいうべき 10 億円で設置された「和解癒やし財団」は 2019年に解散となり、完全に清算することが残されているだけだ。「見舞金」を返還するために韓国政府は両性平等基金に日本円で 10億円に相当する金額を預託した。「2015日韓合意」は破棄されるべきである。

 

 

日本政府の露骨な犯罪事実の否定で遅れた歴史正義は、より深刻な歴史歪曲を招いている。私たちは、日本政府が続けてきた「軍や官憲による強制連行を示す資料はない」「性奴隷ではない」といった日本軍「慰安婦」に対する強制性を否定する主張を直ちに撤回し、責任を認めて歴史歪曲を正すよう求める。

 

 

日本軍性奴隷制の被害者が全員亡くなったとき、日本はついに反省しなかった戦犯国家として歴史に残る。今年は日韓国交正常化 60年、朝鮮半島が日本から解放されてから 80 年を迎える年だ。私たちは、日本政府が一日も早く国際社会が認めるような解決策を講じ、平和と人権を実践する国家として立ちなおることを心から願い、以下のように要求する。

 

7 つの要求事項のうち 6 つまでは、2018年の第 15回「日本軍『慰安婦』問題解決のためのアジア連帯会議」に集結した、世界各地の被害者と支援団体が決議した日本政府に対する要求項目である。

 

 

1. 日本政府は、犯罪事実を具体的かつ明確に認め、それに基づき、翻すことのできない明確で公式的な方法で、被害者に謝罪し、法的賠償を行うこと。

 

2. 日本政府は、日本軍「慰安婦」制度の政策決定過程、被害者の規模、強制連行、移送、慰安所の設置及び管理と運営、戦後処理状況を含む日本政府が保有する一切の資料を全面公開し、追加的な資料調査を通じて徹底的に真相を明らかにすること。

 

 3. 日本政府は、日本軍性奴隷制に関する事実が義務教育課程のすべての教科書に記述されるようにし、学校教育と社会教育を通じて再発防止に努めること。

 

4. 日本政府は、日本軍性奴隷制という反人道的な犯罪の事実を否定することによって被害者にさらなる苦痛を与える一切の言動を直ちに止めること。

 

5. 日本政府は、国連と国際社会の勧告を直ちに受け入れ、国連機関と各国政府及び民間団体に対する抗議と不当な干渉、脅迫を直ちに中止すること。

 

6. 日本政府は、平和の碑・追悼碑に対する撤去工作と建立妨害の脅迫を中止し、犠牲者を追悼するためのあらゆる措置を講じること。

 

7. 日本政府は、韓国の裁判所の判決通り、日本軍性奴隷制被害者に速やかに賠償すること。

 

 

私たちはこれまでそうしてきたように、世界市民と固く連帯し、日本軍性奴隷制問題が完全に解決され、被害者の正義が回復される日まで、決して闘争をあきらめない。

  

上記要求に対する日本政府の回答を「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」に送るよう要請する。

  

2025 6 20

 


 訴訟原告李容洙及び日本軍「慰安婦」被害者の対日本国損害賠償請求事件(2023 11 23 日言い渡しソウル高等法院第 33民事部判決)の訴訟代理人弁護団

 日本軍性奴隷制問題の解決を求める<日韓条約60年日韓歴史正義平和行動代表団>及び記者会見参加者一同

 日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯

 日本軍「慰安婦」問題解決全国行動