〈戦時性暴力問題連絡協議会〉報告 第58回「水曜行動in新宿」街頭行動、「政府と統一教会 戦前の『家』制度回帰で女性差別の政策協定」
2022年11月16日は、秋晴れの下、第58回目の街頭行動「水曜行動in新宿」を行いました。
11月25日は国連の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」で、女性に対する性暴力は重大な人権侵害であるというのが国際社会の人権基準です。
しかし、日本ではDVやレイプ被害が後をたたず、その状況をつくってきたのが、ジェンダー平等に反対し、戦前の「家」制度を復活させようとしてきた旧統一協会や自民党右派でした。
こうしたテーマの下に昨日のアピール行動を開催しました。
以下、簡単に報告します。
●池田恵理子さん(アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館・wam)
日本政府は、国連の自由権規約委員会の勧告が出されても、「法的根拠がない」と全く聞く耳を持たない。アルゼンチンに建立される「平和の像」など各国に建立されるメモリアルに対しても、「日本政府の立場と相いれない」と許せない妨害行動を続けている。安倍政権下から続く国家の報道・メディアへの介入が、NHKが公共放送としての役割を果たせない状況をつくっている。市民が声をあげ変えようとしている。
●福喜多昇さん(なくそう戸籍と婚外子差別・交流会)
1992年以降、婚外子差別撤廃を求めて、国連の人権規約委員会や子どもの権利委員会、女性差別撤廃委員会へのロビー活動を行い、各委員会から日本政府に対して婚外子差別撤廃の勧告を引き出してきた。また国内では、法務省交渉や総務省交渉などを行い、戸籍の続柄差別記載の撤廃や、出生届の差別記載の撤廃、相続差別撤廃、住民票作成などを求めて要請してきた。一定の前進はありつつも、しかし今なお差別記載が維持されている。この人権侵害の差別を続けてきた勢力は、一貫して神社本庁などを始めとした自民党右派であることを指摘したい。
●柴洋子さん(台湾の日本軍性暴力被害者・阿嬤たちを記憶し、未来につなぐ会)
呉秀妹(ウ・シュウメイ)さんの人生について。
1917年生れ。台湾で最高齢の被害者だった。
養父が亡くなったあと、養母にホテルに売られた。この生活がたまらなく嫌で「海外に行くといい仕事がある」ということばに騙されて中国・広東に連れて行かれ、日本軍「慰安婦」にさせられた。
34歳の時に結婚したが、外省人の夫(1945年以降、蒋介石と共に中国から台湾に渡ってきた兵隊)にはつらい過去は絶対知られないようにした。夫も亡くなり、長い間逡巡した後婦援会に名乗り出た。その後の秀妹さんは積極的にいろいろなことを吸収した。
2005年、来日して茅ヶ崎市にある文教大学で初めて自分の過去について公に話した。
●田中栄子さん(医療ケアの立場から)
6カ国の被害者の医療ケアをしてきた。海南島の被害者の黄玉鳳さん、陳金玉さんについて話した。
日本で裁判を起こしたが証言の途中で、性暴力、レイプ拷問の辛い過去を思い出しフラッシュバックを起こして倒れた。この辛い過去を生きた被害者のことを忘れない。
保田千世さん(リーフレットの内容を説明)
日本軍「慰安婦」問題は、被害者たちが沈黙を破って「恥ずかしいのは私たちではない。このようなことが二度と起こってはならない」と自身の辛い体験を勇気を出して語り訴えてきたことで、性暴力根絶をめざす国際社会の歩みが大きく前進した。今も性被害をどこにも訴えられず苦しんでいる女性たちに私たちは共に闘おう、そして私たちは自民党と統一協会の戦前回帰の女性差別に反対する。
以上、簡単ですが報告です(皆さんの報告はとても充実した訴えでした)。
(報告:木瀬慶子)
戦前の「家」制度回帰で女性差別の政策協定
―旧統一教会関連団体と自民党議員が国政選挙で取り交わした「推薦確認書」―
10月20日、朝日新聞は、旧統一教会関連団体と自民党議員が昨年や今年の衆.参議院選挙で取り交わした「推薦確認書」を入手したと報じました。
その内容は、「憲法を改正」「家庭教育支援法の制定に取り組む」「同性婚合法化などに関しては慎重に」などで、選挙支援の見返りの政策協定です。
11月25日は国連の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」で、女性に対する性暴力は重大な人権侵害であるというのが国際社会の人権基準です。しかし、日本では、DVやレイプ被害者の約半数が、どこにも相談すらできないでいます。
戦前の日本社会では、夫が妻を殴るのは当たり前のことでした。それが形を変えて、現在でもDVとして残っています。
妻は家を継ぐ男の子を産むのが務めで、そのために結婚前の女性には純潔が、結婚後は貞操が要求される一方、男の性欲は抑えられないと公娼制度があり、娼婦を汚れた女として蔑みました。アジア太平洋戦争になると、国のために忠良な兵士を産み育てることが女性に要求されるとともに、兵士を慰め士気を高めるために「慰安婦」制度が作られました。
このような戦前の社会風土が今も残っていて、性暴力の被害を恥と思わせ、刑法では抵抗不可能な暴行脅迫があったことを被害者が証明できなければ加害者は処罰されません。だから、被害者の女性は声を挙げられないのです。
男が上、女は下、家父長である戸主が家族を支配し、個人は「家」のため、「家」は国のためという戦前の「家」制度の下での女性差別をなくすために、憲法24条は「家族関係における個人の尊厳と両性の平等」を定めています。
また女性たちが戦後長い間、女性差別をなくすために闘ってきたこと、特に近年の「#MeToo」運動やフラワーデモなどのように被害者が声を挙げるようになってきたことで、やっと日本社会にもDV、セクハラ、レイプなどの性暴力は犯罪であるという認識が高まり始めました。
このような動きに危機感を持った旧統一教会と自民党右派が手を結んで、以前から、憲法24条改悪や「家庭教育支援法」制定運動を進めてきています。
ジェンダー平等は行き過ぎた個人主義、人権に基礎を置く性教育は過激で性道徳を乱す、夫婦別姓は伝統的家族の美風を壊すと攻撃し、LGBTQや男女共同参画を否定しています。家庭教育支援法で国家が家庭に介入し、女性を抑圧してきた戦前の「家」制度に戻そうとしています。
長い間、汚された存在として貶められてきた日本軍[慰安婦」被害者たちは、沈黙を破って、「恥ずかしいのは私たちではない。このようなことが二度と起こってはならない」と、国の内外で自身の体験を語り、訴えてきました。その勇気は、性暴力根絶を目指す国際社会の歩みに大きく寄与してきたのです。
性被害をどこにも訴えられずに苦しんでいる女性たちと、このことを共有し、私たちは自民党と統一教会の戦前回帰の女性差別の動きに反対していきます。