第20代大統領当選を祝賀する。


 当選人が日本軍「慰安婦」問題に関する政策アンケートに回答せず、明確な公約もない状況で、どうなって行くのか怖い心情だ。「グランド・バーゲン」などの発言から見るなら、「2015韓日合意」がまたも反復されるのでは、それで被害当事者たちと全世界の人たちの真実と正義に向けた30年以上の闘いが水泡に帰するのではと気掛かりだ。



 しかし「公正と常識」を叫び、「大韓民国自由民主主義の憲法精神を胸に刻む」という当選人の所感を本心からと受止め、何点か要請する。



 第1に、「2015韓日合意」のような政治的「野合」が再び進められないよう望む。「2015韓日合意」は被害当事者たちの意見を排除したまま、公式的賠償ではなく、幾ばくかの金銭で「最終的・不可逆的」問題解決を宣言し、「少女像撤去と国際社会での誹謗自制」という裏合意まで与えただけの「外交的な大惨事」だった。大韓民国の歴史に残る屈辱的な事件の一つだ。



 日本軍性奴隷制は、帝国主義・軍国主義日本国と日本軍が主導した、歴史上類例がない反人道的犯罪行為だ。犯罪事実に対する加害者の明確な認定と、撤回のない謝罪、徹底した真相究明、正しい記録と記憶が非常に重要な問題解決の原理だ。国際社会で常識になっているこの原理を根底に据え、持続可能な韓日関係の未来を打ち立てることを丁重にお願いする。



 第2に、日本軍「慰安婦」被害者たちは残酷な戦時性暴力、性奴隷の苦痛はもちろん、長い軍事文化と家父長制の影の下で二重三重の被害を受け、そのトラウマのために生涯沈黙してきた。にもかかわらず、相当数の被害者たちが勇気をもって社会に登場し、女性人権運動家として堂々と活動した。



 大韓民国に公式登録した被害者は240名。現在の生存者12名は、時間が過ぎるほどに消えて行くという単純な数字ではない。名もなく戦場に消えた数多くの女性たち、声すら出せないで遂に死んでいった被害者たち、ようやく小さな希望の糸を掴んで社会に出た被害生存者たちの象徴だ。この人たちの人権を保護して名誉を回復することは、大韓民国大統領として憲法的な価値を守って実現する当然の責務だ。

どうかこれ以上、性暴力の被害者が羞恥を感じない社会、加害者が相応の処罰を受けて反省し、同じ間違いを反復しない社会を築くために寄与してくれることを望む。「被害者中心の原則」が1、2人の話を断片的に聴くことではなく、到底言葉にできずに秘められた話、30年間以上限りなく繰り返された被害者たちの「言葉」の核心、被害救助の原理を理解して、当選人が胸に刻むよう望む。



 第3に、歴史的真実を現す正義ある解決のために努力してきた30年以上の国際的な人権運動が最近、歴史否定勢力によって酷く棄損されている。ようやく積み上げてきた真実の塔が揺れ動いている。継続して論議になっている米国のラムザイヤー・ハーバード大教授の「慰安婦」問題の歴史否定と嫌悪は、突然飛び出てきた一時的な事件ではない。日帝の韓半島強制併合、植民地・戦争犯罪を否認し、強制動員と性奴隷制を否定してきた日本発の極右歴史否定勢力の組織的なグローバル化の結果だ。彼らが韓国内極右勢力と連結し、水曜デモと国内外の「平和の少女像」を深刻に攻撃している。「慰安婦は詐欺」などの主張で生存被害者は勿論、既に個人になった被害者を侮辱している。日本軍「慰安婦」問題の解決だけでなく、大韓民国の主権と国格、未来世代のためにも、当選人が必ず直視して解決すべき問題だ。「一度崩れた歴史は、再度正すのは難しい」という教訓を胸に刻んでほしい。



 最後に、過去の過誤を直視することは平和な未来を拓く上で障害ではなく、必須条件であることを、人権と民主主義の原則が韓日関係の土台であることを忘れないでほしい。戦争のない世界、差別と暴力がない平和な世界を夢見た日本軍「慰安婦」被害者たちの念願を実現するため、最善を尽くしてくれるよう望む。葛藤と憎悪、嫌悪と排除ではなく、尊重と共存、愛と抱擁で未来世代がより平等で安全に生きられる社会を拓いてくれることを切に要請する。



2022年3月10日

日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯



(訳 権龍夫)