イスンフン記者 11月1日





「慰安婦」被害者のお世話をしながら、給与の中から後援金を出した故孫英美(ソン・ヨンミ)所長に対して検察は「資金流用」だったと強弁






昨年6月10日ソウル、鍾路区の旧日本大使館前で開催された日本軍性奴隷制問題解決のための第1443回定期水曜集会で故孫英美所長の影像が置かれている。





韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協、正義連の前身)と正義記憶連帯(正義連)で働き、後援金と補助金を流用した嫌疑で起訴された尹美香議員の3回目となる公判が10月29日に開かれた。




ソウル西部地方法院で開かれたこの日の裁判には会計担当者ウォン某さんが証人として出席したが、検事は公訴事実にもなく、ウォンさんが担当したこともない尹議員の退職金支給事例に関連して繰り返し質問し、「記者たちを意識した質問」という弁護人の抗議と注意を促す裁判所の制止を受けた。




また、検察の捜査過程で自ら命を絶った故孫英美所長が24時間「平和のわが家(ウリチプ)」を運営して受け取った給与の全額を寄付した件に関連して、検察はあたかも故人が不純な意図で寄付したのでないかという質問を繰り返した。検事は2020年の寄付金領収書はなぜないのかと証人に尋ね、証人は「2020年にはすでに亡くなっておられたのにどうやって申請せよというのか」と答えた。このように公判過程で傍聴席がざわめき、失笑がもれるや、検事は語調を強めて傍聴人への制止を要求した。




この日ウォンさんは公金の内訳を虚偽で記載したことはないと明らかにした。検事が口座振り替えの「摘要欄」に事業名目を虚偽で記載し、費用を保全、受け取っていたことについてたずねると、ウォンさんは「そのようなことはない」ときっぱりと答えた。





尹美香議員がフェイスブックに追悼辞とともにあげた写真。尹議員が「平和のウリチプ」孫英美所長とともにした姿。





故孫英美所長が不純な意図で寄付をしたという検察



孫所長は麻浦区にあるウリチプで「慰安婦」被害者ハルモニを24時間見守ったことは公然の事実だ。故金福童ハルモニは生前孫所長に対して「神様が送ってくださった人」と話したことがあり、昨年6月の追悼式で参加者は「16年の間献身と真心でハルモニを見守った孫所長を守ることができなくて申し訳ない」として彼女の死に遺憾と悲しみを表わした。孫所長は自ら命を絶つ前、挺対協・正義連を取り囲んだあらゆる疑惑報道と検察の捜査を受けて自らの人生が根こそぎ不正なものと否定されたようで苦しんでいたと伝えられた。



孫所長はウリチプのハルモニたちのお世話をする労働に対する人件費として毎月100万ウォンの活動費を受けとっていたが、2019年に活動費の全額1200万ウォンを団体に寄付した。これ以外にも数千万ウォン相当を寄付したことが分かっている。



しかしながら検察は孫所長が不純な意図で人件費を団体に寄付したと疑った。



公判において検事は「孫所長が挺対協で給与を受けとりながら、ウリチプの人件費も受けとったが特別な事例ではないか」として、団体次元で補助金を流用するために孫所長に人件費として支給してこれを再び寄付させたのではないかという趣旨で質問攻勢を行った。



これに対し、証人ウォンさんは何度も「所長はウリチプに24時間常駐してハルモニを支え、見守って差し上げたし、そうしながらウリチプの管理全般の仕事も全部しなければならなかったために、挺対協が差し上げた給与はあまにり少なかった。それでウリチプの補助金から一部を支援したと理解している」と答えた。



実際、挺対協・正義連で仕事をする活動家の賃金はチーム長・局長級でも200万ウォンをやっと越える水準で非常に劣悪だった。ウリチプで24時間ハルモニを世話しなければならない孫所長に対する人件費はあまりにも少なかったために、ウリチプの補助金から100万ウォン相当を人件費に追加支給したという説明だ。だが、定期後援会員でもあった孫所長は定期後援の他にもウリチプの人件費を再び団体に寄付することによって日本軍性奴隷制問題を記憶し、知らせるために使われることを願ったものとみられる。





  尹美香議員






公訴事実にもない質問を反復

結局、判事が制止「注意しなさい」



公判で検事は裁判で起訴されてもいない事件を繰り返し担当者でもないウォンさんに尋ねて、判事の制止を受けたりもした。



尹美香議員は挺対協と正義連が統合される過程で中間精算の性格の退職金を2016年と2017年に2度にわたって受けたことがある。これは2016年支給当時の計算が誤っていて、2017年に追加で支給したものだったという。反対に当時もう一人の挺対協職員は受けるべき退職金よりも多くの金額が支給されており、退職金の一部を返還した場合もあったと伝えられた。



検事はこれもまた尹議員が後援金を流用するために2度にわたって退職金を受け取ったと疑った。問題はこの内容は以前の公判過程で担当者が出てきて釈明した事項であり、この日の裁判に証人として出廷したウォンさんは尹議員に退職金を支給した担当者でもなく、検察がこれを公訴した事実もないという点だ。「私がしたことではなく、分からない」という証人の返事に対しても検事は質問を繰り返した。




弁護士は「公訴事実と関係のない質問を繰り返すのは納得できない」として「(裁判を見守る)記者らを意識したもの」と抗議した。判事は「誤解を招く内容に対しては注意して尋問しなさい」と検事の質問を制止した。すると検事は「記者たちのために質問するのではない。非常に不愉快だ」と語調を強めた。



検事はこの他にも裁判の過程で挺対協の公金が給与ではない形で尹議員の口座に入金された事実があるとして後援金の流用などを主張したことがあるが、これは病院治療費と車両の修理費として出金されたお金だった。



ハルモニの訪問および講義など数多くの日程を消化するため尹議員は20年余り個人の車両を使ってきた。特に2016年には韓日合意の無効化活動で地方日程がより一層頻繁になり、共同代表団が2016年11月に発生した車両修理費を保全するのが正しいと判断し、支援を決めたと伝えられた。また、尹議員は2015年頃甲状腺癌診断を受けて手術を受けたが、当時も共同代表団は一種の障害補償的性格のものとして手術費用を支援していたことが分かった。





尹美香議員がソウル、汝矣島(ヨイド)国会で開かれた環境労働委員会全体会議に出席し質問している。






過料、安城「憩いの家」問題など攻防



この日ウォンさんは職員の速度違反過料を団体が支出した理由についても詳細に明らかにした。


ウォンさんは「ハルモニたちを訪ねる地方訪問日程があれば、ハルモニに何時に訪問するという約束する。するとハルモニは朝から私たちが来るのを待つ。問題はおひとりだけ会うのでなく、それぞれの居住地を訪問しなければならず、そうすると遅れないようにスピードをあげるケースが発生したりする」として「業務を遂行する過程で発生したことであり、やむをえないことだと判断して支給したもの」と話した。




日本軍「慰安婦」被害ハルモニたちの憩い場である安城「憩いの場」に関連した尋問も続いた。検事は「水原にある新聞社でも安城「憩いの場」を利用した」とし、挺対協・正義連が安城「憩いの場」を営利目的で運営したり、営利目的で運営しろとの指示を受けていたのではないかと質問を続けた。これに対してウォンさんは「そのような事実はない」として「当該新聞社は挺対協活動に参加した連帯団体」と答えた。あわせてウォンさんは連帯団体ではない個人が「憩いの場」を使いたいと何回も問い合わせがきたことがあるが「断った」と明らかにした。



一方、この日の公判の検事は「正義連が開催した行事にきて座って拍手することが運営に参加するということなのか」と水曜デモ・後援会員活動を愚弄するような質問などで傍聴人の笑いをかった。これに対し反対尋問で弁護士はウォンさんに「水曜デモで連帯団体は単純に拍手だけするのではなく本人が主管して水曜デモを進めたりもするのではないか」等を尋ね、これに対し「そうだ」と明確に答えた。


(訳 方清子)


〈原文〉