タンジ日報という韓国のインターネットメディアの掲示板に掲載された、尹美香議員第3回公判の様子を抄訳しました。


これは読者が自由に寄稿できる掲示板に上げられたもので、筆者の名前も分かりませんが、文脈から挺対協・正義連の支援者であることが分かります。



支援者ではありますが、あまりにひどい報道の嵐の中で、一抹の不安と疑念を完全には払拭することができず毎回公判を直接傍聴することにした、傍聴するうちにこれは完全に謀略だという確信を持つに至ったとされています。


長文のため少し割愛しましたが、ほぼ全文に近い内容です。是非、ご一読ください。







<抄訳>


尹美香議員の第3回公判に行ってきました


タンジ日報自由掲示板  2021/10/31





先週の金曜日(10/29)午後2時、ソウル西部地裁で開かれた尹美香議員の第3回公判に行ってきました。




 いつものように、早くから人々が集まっており、国民の力党議員の補佐官(秘書)らしき人も一人、来ていました。記者たちは報道機関の特権をふりかざして事前に申請だけしておいて列に並ぶこともなく入って来て、決められた席に着きました。入れない記者もいたようですが、これはすべて、コロナのせいで法廷に20人ほどしか入れないために起きていることです。




 開廷直後は、検察側の証拠目録と証拠謄写の検討問題で弁護人側と検事側が少し対立しましたが、検事側が自分たちの確保した証拠資料を弁護人側にきちんと見せなかったために発生した問題でした。異議申し立てがあり、とりあえず受け入れられました。検察側が全部見せると言い、今後はこのようなことがないようにすると言ってはいましたが、本当にそうするのかどうか……。





★挺対協から現正義連の会計担当者が証人として出席


 第3回公判は、2017年の後半に、挺対協時代に入ってきて現在まで正義連の会計責任者を務めているウォン局長が証人出席し、検察側と弁護人側の尋問が相互におこなわれる形で進められました。



 まず検察側が長い尋問をおこない、少し休憩した後で弁護人側が尋問しました。 その後は尋問の雰囲気が徐々に加熱し、双方の相次ぐ異議申し立てと裁判官の制止がところどころに入り、中間に休憩がもう1回入りました。


裁判は2時に始まって7時頃に終わりました。

傍聴席は、検事たちのとんでもない尋問内容に、ずっと失笑が漏れている状態でしたが、ついに傍聴者の一人が検事側に文句をつけ法廷から追い出されそうになる一幕もありました。幸い裁判官たちも検事の尋問内容にあきれていたのか、退廷を命じはせずに、ただ静粛にするようにと注意することで終わりました。




★背任横領などが入り込む隙がないのに ー 検察側が社会運動団体というものを全く分かっていない



検察側と弁護人側の攻防の内容は以下のとおりです。


まず、領収証がない支払い証や支出決議書をたくさん羅列して確認した上で、本当にこのとおりに支出したとどうやって分かるのかといった質問を検事側は立て続けにおこないました。しかしこれは、検察側が社会運動団体がどのように運営されているのかについて全く分かっていないことを示す傍証でもあります。



水曜デモや、全国各地に暮らすハルモニ訪問、麻浦(マポ)のシムト(「平和のウリチプ」、ハルモニたちの共同住宅)の運営、各種の国際セミナーや海外活動など、毎回おこなわれる定期的な事業は支出される内訳がほとんど同じです。定まった定期事業だからです。時々、領収証を紛失したり、あるいは仕方なく現金を使用したりすることがあったとしても、支出内訳がほとんど定型化されている上に、スタッフは全体でも数人しかいないので、担当者がいるとはいっても事実上、みんなで活動しなければ事業自体が成り立ちません。だから、その支出内訳が事実か虚偽か、会計担当者に分からないわけがないのです! 自分も一緒に活動した内容なんですから。そんな活動の際には数百ウォン(数十円)の単位まで全て記録します。検事たちも確認した内容です。背任横領などが入り込む隙がないのです。




こんな状況なので、検事側が会計支出そのものの信頼性を損なわせようとしたのですが、質問する検事がウォン局長の返答を聞きながらずっとため息をついていました。いったいどうしてあんな質問をするのか不思議でたまりませんでした。結局、ボスクラスに見える女性検事がいらついた声で時々割り込んできましたが、彼女も質問した後でやはりため息をつくだけでした。

まったく起訴自体がどうしてできたのか、理解できませんでした。




★尹美香議員の挺対協時代の退職金を二重支給に仕立てようとする試み ー 逆に、いかに低賃金で活動していたかが明らかにー



次に、尹美香議員の挺対協時代の退職金問題を二重支給に仕立てようとする試みがありました。

尹美香議員が挺対協で勤務したのは1992年からだと思います。挺対協が正義連に発展するのが2017年か2018年頃ですから、計算するとおよそ27年くらいになると思いますが、27年間、同じ職場に勤務したら退職金はいくらくらいもらうべきでしょうか。検察が提示した資料によると、法廷で目で見ただけなので正確ではありませんが、2,200万ウォン(約200万円)が一度支給され、後で1,500万ウォンだかがもう1回支給されたということでした。

27年間勤務して退職金が3,700万ウォン(約350万円)とは……、まったく……。


ところがこれに対して検察側は二重支給だと指摘したのです。計算が間違っていたら事後に精算して追加で支給したり、もらったりするのは一般的なことなのに、これの何がおかしいということなのか、どうして二重支給になるのか、まったく理解できませんでした。



これは一体何の話だろうという声が出始めた瞬間、検事の真の意図に気づきました。検事の退職金二重支給という主張の部分で猛烈にタイピングしていた記者たちが、その主張の後でみんな飛び出して行ったからです。わざと誤報を出させようと、こういうことを言っているのだなと思いました。

弁護人側も、この部分について抗議しましたが、検事はそんな意図はないと言っていました。まったくあきれたものです。



 笑ってしまったのは、検事が示したその退職金資料の下段の方に、今回の公判で被告人として一緒に裁判を受けているAさんの名前も見えたのですが、私の記憶に間違いがなければ、Aさんは300万ウォンだかを余分に支給してしまったので返還されたと記載されていました。これは一体何なのでしょうか。なぜ返納したのでしょうか。検事の論理どおりだとしたら説明がつきません。みんな背任で、横領で、はじめからそのような意図でお金が動いたと検事は主張しているのですから。だったらいったん支出されたお金を返納するなんてことはしないのではないでしょうか。

 



★会計が、個人的な基準や判断によって無原則に、場当たり的におこなわれた信頼できないものとの印象づけへ



尋問が思い通りに進まないため検事側のため息はさらに深くなり、このあたりから徐々に興奮し始めたかと思うと、結局証人に対して法廷で犯人の尋問でもするかのように問い詰めて裁判官の制止を受けるような場面までありました。


この時から検察側は、挺対協と正義連の会計が、担当者の個人的な基準や判断によって無原則に、場当たり的におこなわれた信頼できないものだという方向に向かい始めます。




例えば、運転中の速度違反の場合、挺対協の資金で事後補填したのですが、それはどうしてそうしたのかと質問した後、では車線変更違反はなぜ事後補填してあげなかったのかと質問し、会計処理と資金運用を自分勝手にやっていた証拠ではないのかといった形の尋問が続きました。




全国各地に点在するハルモニたちに会いに行く時、事前に時間の約束をして行きます。そうすると、ハルモニたちは普通、その日の日程を空けてずっと待っていらっしゃるので時間に間に合わせて行くことは非常に重要な問題です。

そのため速度違反をしてしまったケースがあるのですが、そういう場合には業務上しかたがなかったことなので罰金を補填してあげるのが原則であり、車線変更違反は運転していた個人の過ちなので補填してあげなかったという証人の返答に対して、検事は理解できないと言うのです。

皆さんも理解できませんか。



むしろ会計の執行が正確で、一定の原則に則っておこなわれていたという証拠ではないでしょうか。誰かが要請したからといって無条件に全部出すのではなく、それが本当に妥当なのかどうか、一つ一つ検討して支給していたという話ではないですか! そしてそのような支出一つにしても、担当者だけでなく、最低でも3段階、普通は4段階にわたり決済ラインを経て、担当者は運営委や実行委にも出席してこのような支出について説明しなければなりません。無原則な会計執行ではなく、初めから横領や背任が不可能な構造なのです。




★寄付金品募集違反 ー 担当部署に確認済みのこと。なぜこれが起訴される事案なのか?ー



次に、寄付金品募集違反に対する争いがありました。

寄付金品募集登録は行政安全省におこないますが、申請書の内訳を見ると非常に細部にわたって記入するようになっています。挺対協や正義連のような団体は、事業を計画する時に、明日やることを今日決めてやるわけではありません。緊急に事業を企画するようなこともありますが、普通は1年前から準備して、それに従って動くので、事前にこのような書類も提出しておきます。例えば2017年に寄付金品募集をする場合には、2016年度に立てた事業計画に沿って201711日から1231日までの期間と細部の内訳まで明示して書類を提出し、行政安全省で承認を受けるということです。



 ところが、挺対協や正義連が申請する時には201711日~20171231日までと期間を明示して提出するのですが、公務員たちが承認を出す時には、なぜなのかは分かりませんが、開始の日時を数日または1カ月くらい遅らせて出すことが多いのです。これについて担当部署に抗議し問い合わせてもみましたが、仕方がないのだといった返答だけが返ってきたそうです。


挺対協や正義連としてはいずれにしてもやると決めた事業で承認も出たので、あまり気にせずに事業を続けて来たわけですが、現在、検察が起訴した内容を見ると、あんたたちの申請内容とは違って行政安全省の承認は201711日ではなく2017117日、または20182月○日から始めるということで承認されているではないか、なぜそれを違反して毎年11日から事業をしてきたのか! だから寄付金品募集違反だ! ということなのです。



 正義連は挺対協時代から慣例的に現在までずっとそのようにしてきたそうです。関係機関に担当者が問い合わせもしましたが、これについて指摘されたことは一度もないそうです。これが本当に起訴されるほどの事案なのでしょうか。無理筋だと思いませんか? 

それでも期間は守るべき、と言うなら、それ以上言うことはありませんが、これが本当に起訴にまで至る事案なのか、私はまったく理解できないのです。

こんなやり方なら検察を百万件以上、起訴できるのではないかと思います。直接、検察庁の監査を一度やってみたいものです。




★孫英美ウリチプ所長の献身的な行為まで貶める検察



その後、亡くなった孫英美「平和のウリチプ」所長に関する尋問がありました。

孫所長は挺対協から給与が出されていたのに、政府が支援した補助金からも別途、人件費を策定して受けていた理由は何か。挺対協の給与体系について、自分たちが資料を見て全部分かっているくせに、あえてこんな質問をします。



孫英美所長は、「平和のウリチプ」に24時間居住しながらハルモニたちの生活の世話をしていた方です。一言で言えば、療養福祉士がするすべての業務と「平和のウリチプ」の管理まで全部責任を引き受けて切り盛りしていた方です。初期からこの業務を担当してきました。私も、母が認知症にかかっているため、ハルモニたちのお世話というのがどういうものか経験済みなので、いつも一番申し訳なく思っていた方でした。



このような方に対して、給料はどれくらい渡すのが適切だと思いますか。かつて挺対協と正義連の賃金体系は一般の幹事(スタッフ)の場合で70~100万ウォン(7~10万円ほど)、勤務期間が5年ないし10年経ってチーム長クラスになると200万ウォンほど(20万円ほど)、最高責任者クラスでも230万ウォンを越えなかったとされています。


内部監査でも、活動家たちの処遇をまず改善せよとの指摘を受けるくらい劣悪でしたし、その頃の活動家たちはそれでも身を粉にして仕事をしていました。



孫英美所長も同じでした。

誰かがさせたわけでもなく、給料が多いからしてきたわけでもありませんでした。

劣悪な挺対協の賃金体系から孫英美所長も例外ではありませんでした。それゆえ皆、胸を痛めていましたし、孫所長に申し訳ないと思っていました。そこに政府から補助金が出たので、それを利用して所長の月給を優先的に補充したのです。

ところが検察はこれを二重支給だと言うのです。

この二重支給という単語は、あの時代を経験した挺対協活動家たちにとって、本当に心臓にナイフを突き刺すようなひどい表現です。

検事たちはそれを知らずに言っていると思いますか? 

彼らは分かっているのにわざと二重支給という単語を使っているのです。わざと……。

検事に聞きたいです。

オムツを替えて、看病もしながら、血縁でもないおばあさんたちの面倒を24時間みなければならないとしたら、あなたなら一体いくらもらいたいかって。




 驚いたことに、そんなふうに孫所長に賃金の補填をしたにもかかわらず、孫所長は結局、受け取った賃金をコツコツと貯めて、挺対協に支援金として寄付してしまったというのです。50億ウォン(5億円)をはした金という世の中で、1000万ウォン(100万円)なんてたいしたことないと思われるかもしれませんが、当時、孫所長が受け取っていた賃金と、彼女が担当していた業務の強度を考えたら、ため息が出る話です。




 孫所長だけがそういうことをしていたわけではありませんでした。挺対協の給料100万ウォン(10万円)の、他のお人好し活動家たちも、自分たちが補填された賃金があると、それを自分の働く組織に寄付してしまったのです。

その組織の活動家でありながら、自分の組織の最も強力な後援者でもあったわけです。挺対協と正義連はこんなふうに維持されてきた組織です。



検事はこういう状況を全然理解できない様子でした。実際、証人に、この人たちは一体どうしてこんなことをしたのか、こういう行動をとる気持ちはどういうものだと思うか、というあきれた質問までして失笑を買いました。

あんなのが検事だなんて……。いったいどこの国で生きてきたのか……。という考えが自然と浮かんできました。


一言で言って、この国が前に進もうとする時になぜ足を引っ張られるのか、その理由がはっきりと見えてくる法廷でした。

 


★検察の愚かな質問 ー お金を尹美香が無理矢理かすめ取ったのではないかと言いたいために「二重支給」を繰り返す


皆さんも理解できませんか? 検事たちは、自分たちが資料を全部持っており、それを全部検討した上で直接その場に持って来ていたにもかかわらず、この人たちが本当に寄付したのかどうやって確認できるのかというバカな質問までしました。寄付をしなかったのだとしたら、そのお金を誰かが奪ったとでも言うのでしょうか。おそらく検事は、そのお金を尹美香議員が無理矢理かすめ取ったのではないかと言いたかったようです。


さかんに二重支給という主張をしていたのは結局、尹美香議員がその活動家たちに分からないようにこっそりとお金を二重に処理した上で自分のふところに入れたのではないか、そんな主張がしたかったのだと思います。


おそらくこの検事たちは、何らの条件もなく他者を助け、他の人の人生のために闘うなどということを全く信じることができないのでしょう。


こんな検事たちに、どうやって正義の具現ができるのでしょうか。否、彼らにとって果たして正義とは何なのでしょうか。韓国の法体系に疑問を持たざるを得ない法廷でした。

 


★安城ヒーリングセンター、検察、宿泊業所のように運営し、その収益をふところに入れたという疑惑を主張するも立証できず


安城ヒーリングセンターについても、尋問がなされました。すでに皆さんご存じのとおり、安城ヒーリングセンターは挺対協の資金で買ったものではありません。たとえそれを売買して収益が出たとしても、挺対協とは何ら関係がないのです。そのお金は全額、買い入れ資金を提供した社会福祉募金共同会と寄付元である現代重工業に関連するものです。挺対協や尹美香とは何ら関連はなく、いかなる収益も得ることはできない構造になっています。検察も、それを知っています。だから初めから、買い入れる時に尹議員が知人の土地と建物をわざと高く購入して、その収益を分け合ったのではないかという疑惑を持ちだしたのです。


ところがそんな主張は立証できないので、今度は安城ヒーリングセンターを申請もなくこっそりと宿泊業所のように運営しながら、その収益をふところに入れたという主張を展開しているのです。


 安城ヒーリングセンターは、ハルモニたちがまだ健康だった時に、問題が解決したらソウルから出てそこで老後を過ごそうと用意された場所でした。実際にハルモニたちが数日休んで行ったようなこともありましたが、朴槿恵が勝手に日韓合意をしてハルモニたちがそれまでに積み上げてきた国際的な闘いを無為なものにしてしまい、その後ハルモニたちの健康状態も急激に悪化して、安城ヒーリングセンターは事実上、利用できない場所になっていきました。


ハルモニたちが再びソウルの街頭で闘いを開始し、病院にもしょっちゅう行かなければならなくなり、遠い安城まではなかなか行けなくなったのです。元々、ソウルを離れるつもりで購入された場所だったのですから。


その後、安城ヒーリングセンターは事実上、空いている状態でしたが、そのまま放置しておくわけにもいかず、最低限の人件費で管理する方法を模索した結果、尹議員のお父さんに管理をお願いすることになりました。その後も活用方法を模索し続けた結果、挺対協の関連団体に限って合宿の用途で使用したい場合に事前届け出を受けて限定的に開放することになったのです。ハルモニたちの住居として考えていた意味のある場所だったので、合宿の場所としてはぴったりだったのです。


つまり、個人に使わせたわけでもなく、これまで挺対協活動を共におこなってきた関連団体に限って、挺対協・正義連のシステムに従って正式に承認された団体だけが使用できる場所でした。ところが検事たちは、これらの団体が場所を使用した際に出した寄付金と、安城ヒーリングセンターを利用した関連団体の関係者からセンターの話を伝え聞いた人が個人的にそこを使用したいと正義連に問い合わせて断られて事例をめぐって、宿泊費を受け取っていた、事実上宿泊業を運営していたのではないかと言い張っているのです。



さらに、それを正義連には知らせずに尹議員が運営して、その金額を横領したのではないかというのですが、利用者と寄付金額が全て記載されている安城ヒーリングセンター利用台帳があり、システムに則って複数が決済をしており、 運営委や実行委に報告までしなければ使用できないのに、一体どのような方法で横領できると言うのでしょうか。関連団体の関係者の中で誰かが正義連活動家個人の通帳に寄付金を送ったり現金で渡したりしても、すぐに台帳に記載され挺対協の通帳に振り込まれているのです。そんな方法で横領する人がいますか? これは小切手で賄賂を渡したというのと似たような主張です。



★社会運動団体に対する検事の浅はかな見方を赤裸々に示す


このような尋問が続き、自分たちの意図通りに進まないことにイラついてきたのか、質問するたびにため息をついていた検察側は、今度は後援者が運営に直接関わったり参加することもあるのかという質問を投げました。システムだの何だの言うが、実際には尹美香議員が自分勝手にできる組織だったのではないかと言いたいようです。


後援会員たちは当然ながら後援会費を出す義務があり、挺対協・正義連活動に対する紹介や案内を受ける権利、各種行事に参加する権利を有します。このような当然なことを、検事はお金だけ出して動員されるのではないかと質問するのです。社会運動団体に対する検事の浅はかな見方を赤裸々に示す質問でした。社会運動というもの自体を理解することができないのでしょう。社会的な問題に対して人々がお金まで出しながら何かをしようとするという事実を、あの検事たちは全く理解できないのです。お金をもらってするのではなく、自分のお金を出して社会活動をするだって? そんなことが可能なのか? どうしてそんなことをするんだ? あり得ない話だ、という見方が、本当に尋問の間ずっと見え見えでした。


挺対協や正義連のような組織の事業は早め早めに企画・決定されて、日程と予算まで組んだ上で、数段階の内部決済を経て確定します。後援会員が電話や現場で意見を述べれば、それらの意見を集約して、リアルタイムで反映することができない場合には次回の事業の際に反映されることもあります。それが当然ではありませんか! 事業をする上で会員の意見を1年中リアルタイムで100%反映させて修正し続ける組織なんて、この世の中にあるのでしょうか? それが可能なのでしょうか?

それをしていないからといって、後援会員は操り人形なのではないかという質問をするなんて、検事たちはいったいどういう考え方でこの世の中を生きているのでしょうか。


結局、検事たちは挺対協が後援会員をだまして、数人が自分勝手に動かしている組織なのではないか、システム上に存在する顧問とか諮問委とかいうのも実際には名目だけなのではないか、という質問までしました。


自分たちが検察総長の下に捜査審議委員会のような操り人形の組織を運営しているから、他人もみんなそうだと思っているようです。



★失笑。証人の会計責任者を攻撃しはじめ、法廷そのものを侮辱する常識外れの質問までした


あれこれやっても失笑を誘うだけで何も引き出せないため、結局、検察側は証人として出席した会計責任者を攻撃する禁じ手まで使うことになります。


1980~90年代でもあるまいし、本当に久しぶりに見る奇怪な光景でした。単式と複式の会計区分もできない検事たちが、会計士ではありませんが一般企業の会計畑で10数年の経歴を積んだ上で「慰安婦」問題解決に役立ちたいと、自分の意志で意義深い仕事がしたくて挺対協の公募で採用された会計担当者に、会計基準をどうして自分勝手に決めて適用したのかといったとんでもない質問をし、それもまたうまくいかないことが分かると、事前に被告側と接触したのではないかという法廷そのものを侮辱する常識外の質問までしたのです。


挺対協や正義連のような組織の会計監査や報告は、法に従って主務官庁にすることになっています。とりあえず外交省という主務官庁がありますから、そこにまず報告しなければなりませんし、国税庁にも毎年報告しています。挺対協の会計担当者が自分勝手に報告するのではなく、官庁が定めた様式に従って報告するのですが、外交省の報告様式と国税庁の報告様式が異なります。それは挺対協や正義連が決めているわけではないじゃないですか! 当然ながら、官庁から法的に求められる様式と内容に沿って報告すればいいわけです。これまでずっとそうしてきました。なのに、報告書の様式にもなく、法的にも報告する義務がないために報告しなかったものについて、故意に漏らしたのではないか、あなたが恣意的に判断して会計操作をしたのではないか、もしかして誰かに指図されてそうしたのではないか、とずっとそんな質問をするのです。

ちょっと、検事さんたち!!! 法的に決められた報告様式があるんだってば!!! 

挺対協や正義連の会計担当者が報告様式をつくっているわけじゃないんだよ!!! 

なのにどうしてそれを、この人に追及するんですか! 

だったら国会とか、外交省とか、国税庁を追及してよ!

あの人たちが報告様式をつくったんだから! 


だったらあんたたちはどうして恣意的に判断してチュ・グァンドク(注参照)を不起訴にしたんだ? 

共謀してそうしたのか? 誰がやらせたんだ? 

 



金曜日に証人として出席した正義連のウォン会計担当責任者は現在、正義連で局長の地位にあります。

2017年頃、挺対協時代の末期に採用されたそうです。ウォン局長が入った当時、挺対協は単式会計、つまり入出金中心のシンプルな会計システムで、それに従うプログラムを使っていたそうです。そして、挺対協が財団法人である正義連に改変された後、単式よりも複式会計がこの組織には合うと判断して複式会計プログラムを導入する等、自分で組織に合った会計システムをつくり適用してきた方です。



挺対協に入る前に尹美香議員と何か関係があって入ってきた方でもありませんし、一般企業に勤務し、自分の意志で薄給の挺対協に入ってきた方です。10年以上の一般会計業務のキャリアを持っているのですから準専門家と言っても問題はないと思います。検察が出した記録だけ見ても、一方的に誰かが要求した通りにお金を出すという会計処理をしてきたのではなく、何百ウォン単位まで一つ一つ細かく検討して、処理すべきものは処理し、払い戻しが必要ならばさせるという、明確な会計原則を打ち立ててきた方です。



検察側は尹美香議員を詐欺罪で起訴しました。背任があり、横領があったと言います。挺対協と正義連を尹美香議員が私組織化して自分の思い通りに振り回し、その組織の資金もそのように扱ったのだろうと主張します。もしそうだとしたら、尹美香議員はなぜわざわざ自分と何の関係もない会計の専門家を採用したのでしょうか。背任し横領するのに面倒になるだけなのに。自分の言うことをよく聞く人を一人連れて来て会計責任者にして、自分の思い通りにやればいいのに、なぜそんなおかしな行動をとったのでしょうか。まだ公判は3回目で、証人尋問は2回目ですが、検察側はこれについて説明できていません。



むしろ薄給にもかかわらず、なぜたいへんな思いをして手にした給料まで自分が所属している組織に、小銭を集めてまで寄付して自ら後援者にもなるのか理解できないという質問ばかり繰り返しています。



つまり検察側は、人々が社会運動をし、社会的寄付をする行為自体を理解できないのであり、そのような行為を認めて信じることができないので、このような荒唐無稽な起訴をしたということです。皆さんはこれが理解できますか?



★検察は、背任と横領の金額リストを提示したが、その金額がどのように算出されたものなのか説明できず。

 

さらに検察は、背任と横領の金額だと言って年度別に数億ウォンにのぼる金額リストを提示しておきながら、その金額がどのように算出されたものなのかについて何らの説明もしていません。証人として出てきたウォン局長に、何らの説明もなしに、この背任および横領の金額に間違いないかという呆れた質問をし、ウォン局長がそれはどのように算出された金額なのかと聞き返すと、それに対して答えることができませんでした。


全体の年間予算がおおよそ3億ウォン程度の組織で、百ウォン単位まで支出内訳を記録しながら最低でも3段階、普通は4段階の決済を経て、運営委への説明まで経て支出をしてきたのですから、いったいどうやって毎年数億ウォン単位の金額を横領できたというのか……。


自分たちが背任・横領金額だといって提示した金額の内訳がどうなっているのかも説明できないのです。単に、領収証がないため確認後に支出決議書で代替したり活動家個人の通帳を通して動いた金額を、内訳の確認もろくにしないで機械的に合算してあんな金額を作り出して起訴したのです。


こんなことが許されるのでしょうか。


正義連のような組織の年間予算は、どんなに多く見積もっても3~4億ウォンを超えることはありません。寄付と後援で事業を続けてきました。人件費も、その中で解決しなければいけませんし、事業もその中でしていきます。人をたくさん雇用できない理由は、仕事の特性上、志願する人が多くないからでもありますが、予算の特性と限界ゆえに十分な報酬を出せないからでもあります。会計監査をした方たちが、活動家たちの待遇改善をまずやるべきと指摘したくらいなのです!


正義連は、自分の人生を犠牲にして活動してきた世代ではない新しい世代が少しずつ入ってきて、これからやっと最低賃金を保障する努力を始めようとしていたところでした。しかしそれはあくまでも希望であって、実際は寄付と後援で維持される組織なので、なかなか簡単には実現できません。下手をしたら人件費を払っただけで資金不足になる状況です。そういう組織なのです。評判が何よりも重要な組織であり、その評判一つで存在自体が揺るがされる組織です。このように弱点が何なのか明らかな組織だからこそ、常に用心しながら志しある人々が集まって、自分を犠牲にして活動してきたのです。背任と横領自体が不可能な構造を持っています。


検事があんなふうに貧弱な証拠を出して、ため息とイラつきの混じった尋問を続けるのも、自分たちもなんとかしようと資料を見たのに、こんなやつらがこの世の中にいるのか、という気がしたからではないかと思います。

何かなければ作り出すこともできません。

何もないんですからどうすればいいのでしょうか。

いくら最低賃金に合わせようとしても、今のように評判をおとしめる攻撃が続けば寄付や後援に変動が起きるので、確固たる意志を持つ人でなければ支持し続けるのは難しいことです。




★自分も混乱した。疑念の確認のため裁判傍聴をするうちに尹美香議員は謀略に遭っていると確信



実は私もはじめはかなり混乱しました。しかし、息子を連れてこの10年間参加してきた水曜デモと、その水曜デモで体験したこと、その過程で出会った挺対協の活動家たちと数多くのハルモニたちのことを思いました。


にもかかわらず、一抹の疑いは明らかに残っていました。実際、あえて時間を割いて裁判を傍聴することにしたのも、その疑念を確認するためでした。私が間違っている可能性もあるからです。もしかして私がだまされているのではないか? そんな気持ちが間違いなくありました。なかったとしたらウソでしょう。それでこれまで3回の公判を現場で見守りました。とりあえず私は今後も裁判をずっと傍聴するつもりです。傍聴する価値があるという確信が徐々に得られてきました。


韓国社会の既得権層と一般人が、日本の過った過去と現在を指摘する活動をしてきた人々に対してどのような反応を見せるのか、一つ一つ記録していっているところです。


現在までの状況を見守りながら、私は少しずつ尹美香議員が謀略に遭っているという方向に確信を持ちはじめました。検察側が持ち出す証拠と論旨をいくら見ても、この裁判は話にならない裁判だからです。 



この裁判がいつまで続くのかは分かりません。おそらく非常に長くなるだろうと思います。こんなふうに尹美香と正義連の手足を縛って活動できないように妨害したい勢力が以前からいたことを私たちは皆知っています。誰が尹美香に謀略を仕掛けているのか、すでにメディアを通しても時々出ています。明確にしていかなければならない問題だと思います。



現在裁判を担当している裁判官は、裁判が終わる前に他のところに移転になるのは確実だと思います。西部地裁での勤務年限になっているようなので。そんなふうに一度脈絡が途切れるでしょうし、大統領選を迎えてろくでもない記者たちが裁判に関するトンデモニュースを流し続けて、大統領選に否定的な影響を与えようとするでしょう。尹美香議員の裁判は、彼らにとって明らかに良い餌の一つですから。



★人権運動と民主主義運動をする活動家たちと組織を、今よりももう少しだけ大切にー尹美香と、この運動を孤立させずにー


一般人だけでなく民主主義を積極的に願う人々の間でも、現実的な条件を問題にして尹美香とこの運動を孤立させようとする人々が出てくるでしょう。そんなふうに日本軍「慰安婦」問題を解決するために始まった人権運動そのものを破壊し、私たちの民主主義運動の方向性をねじ曲げようとするのです。これは以前からずっとあったことです。

 


私は、この文を読んでくださった方々が、人権運動と民主主義運動をする活動家たちと組織を、今よりももう少しだけ大切にしてくださったらと思います。

自分の暮らしがたいへんでも、時には少し時間を割いて関心を持ち、可能ならば少しずつでも後援し寄付し、揺れることなく彼女たちを支援し続けていただきたいと思います。

そして、活動家たちをしっかりと支援していくためにも、皆さんがもっと豊かに暮らしていけることを願っています。



尹美香と挺対協、正義連は最初につくられた時から現在まで、韓国だけでなく全世界各地で謀略に遭ってきましたし、また支持も受けてきました。それは今も同じで、これからも同じだと思います。そして尹美香と正義連は今、韓国で再び謀略に遭っています。これに対抗する支持が必要です。自分の支持に疑いがあるなら直接、裁判を傍聴して自分の目と耳で確認してみたら分かると思います。


もうこれ以上、こんなふうに私たちに代わって、正しいことを言ってきた活動家たちを失うことがあってはならないと思います。


(訳 梁澄子)



※訳注 チュ・グァンドク;曺国元法相の娘の学生生活記録簿の内容を公表して、情報保護法違反等の容疑で告発された元自由韓国党(現国民の力党)議員。検察が「記録簿を流出した者を特定できなかったため真相を明らかにできなかった」という理由で不起訴決定したことで、市民の怒りをかった。



出典

https://www.ddanzi.com/index.php?_filter=search&mid=free&search_target=content&search_keyword=%EC%9C%A4%EB%AF%B8%ED%96%A5&document_srl=707706154