2015年の「慰安婦」問題に関する日韓合意では、被害者の願いを無視する「合意」がなされました。



2019年に川崎にお越しになった李玉善ハルモニは、「日韓合意」について「朴クネが悪い。日本人が札束を持ってきて、私たちの口を塞ごうとしている」と抗議しました。



2019年、日本に賠償を命じたソウル地方裁判所の勝訴判決についても「うれしくない。お金は必要ない」「1億ウォンもらっても3億ウォンもらっても嫌だ。日本の謝罪が先だ」と、あくまでも事実認定に基づいた日本の誠実な謝罪を求めました。


被害者が求めているのは、日本の謝罪なのです。

 


ところが、この「慰安婦」問題についての日韓合意と同様なことが、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の下で行われようとしています。


徴用工として動員された日本製鐵や三菱重工や、朝鮮女子勤労挺身隊としで名古屋・三菱重工に動員された被害について、日本政府や加害企業を免罪し、被害者の願いに逆らうような「解決案」が発表されようとしています。



名古屋三菱重工・朝鮮女子勤労挺身隊とは、1944年、敗戦色が強くなった日本で戦争遂行の不足する労働力を確保するため、植民地であった朝鮮の国民学校(小学校)を卒業するくらいの幼い少女たちを強制動員した問題です。


学校で教員や校長たちが、「日本へ行けば美味しいものがたくさん食べられて、働きながらおかねももらえて、女学校にも通える」と少女たちを騙して、日本に連れてきて、ゼロ戦など飛行機の製造工場などで働かせました。日本での確定判決となった2007年名古屋高等裁判所の判決は原告の訴えは認めませんでしたが、騙して連れていったことは強制連行にあたり、少女たちへの過酷な児童労働は強制動員でありILO条約に違反しているなど、判決で事実認定が行われ三菱重工の責任を事実認定しています。

 



韓国では2018年に大法院(最高裁判所)の判決で勝訴しました。しかし被告である日本製鐵・三菱重工は判決に従わず原告との話し合いにさえ応じませんでした。


そのため韓国の裁判所は、この企業の韓国内での財産の差し押さえ、さらに財産の売却を命じました。


日本の反発により現在、尹錫悦政権は韓国の財団(日帝強制動員被害者支援財団)が、本来、日本の加害企業が被害者へ支払う賠償金を肩代わりし、さらにその金額を韓国企業が補填するという案を発表しようとしています。日本に忖度した案を決めようとしています。

日本の加害企業である日本製鉄や三菱重工は謝罪も賠償も行わず完全に免罪されています。当然、被害者・弁護団・支援団体はこの案に強く抗議しています。




植民地支配と戦争犯罪の責任を問い、事実の認定と謝罪を求めている被害者であり、原告である梁錦徳(ヤン・クムドク)さんは、「お金の問題ではない。謝罪こそが必要なのだ」と車椅子に乗る不自由な体で、光州からソウルまで行って抗議をしています。



日本は「ボールは韓国側にある」と言って、韓国側が「解決策」を出すことを求めています。しかし、1965年の日韓請求権協定では問題は解決されていません。当時の椎名悦三郎外相は日本からの5億ドルは、植民地支配の謝罪や賠償金ではなく、あくまでも経済援助であると主張し、被害者の賠償は行われませんでした。

加害企業である日本製鉄と三菱重工が、自ら謝罪と賠償を行えば問題は解決するのです。



日本と加害企業は過去の戦争責任の事実を直視し、謝罪と賠償を行うことを強く求めます。

 



岡田 卓己

(川崎から日本軍「慰安婦」問題の解決を求める市民の会・名古屋・三菱重工 朝鮮女子勤労挺身隊裁判を支援する会)