〈尹美香氏 第19回公判 2022年10月8日〉「安城ヒーリングセンター」慰安婦被害者治癒目的を再確認・・・検察主張を退ける
陰テラ記者 法律ドットコム (2022/10/08)
検察が尹美香議員(無所属)の日本軍性奴隷被害ハルモニたちの人権回復と介護に関する社会活動に対して「アラ探し」、「無理な起訴」をした有様が続々と現れている。
・韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が現代重工業から寄付を受けた安城(アンソン)「平和と治癒のウリジプ(ヒーリングセンター)」 は、日本軍性奴隷被害者が実際に居住する場所ではなく休息・治癒プログラム目的で建てられたとの内容が第18回公判と今回の公判で続けて確認された。
・当時、安城ヒーリングセンターを評価した社会福祉共同募金会の評価委員は、安城ヒーリングセンター購入のための挺対協理事会資料などをきちんと検討しないで、書類不備のC点数をつけたと確認された。この評価のため、挺対協は安城ヒーリングセンター事業を中断するほかなくなった。
ソウル西部地方法院刑事合議11部(部長判事 文ビョンチャン)は10月7日、尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員らの日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)関連の第19回公判を開いた。
この日の公判は、業務上背任容疑で安城ヒーリングセンターが主に取り扱われた。
「安城ヒーリングセンター、ハルモニ常駐ではなく、休息所として提供」
この日の公判で、安城ヒーリングセンターは検察の主張とは違い、日本軍性奴隷制被害者の居住ではなく、休息・治癒のための空間として設けられた事実が再度確認された。先月18日の公判に提出された「指定寄託事業 配分申請書」には、居住と休息所の分離の必要性を明記した事実が明らかになっている。
安城ヒーリングセンターの評価業務を担った社会福祉共同募金会の評価委員は、「慰安婦ハルモニの休息所提供、治癒プログラム、若い世代とネットワークなどが主要事業だった」と述べ、「必ずしも常駐ではなく、申請書にある通り居住と休息所の分離だ。居住地があっても、ここに来て1週間とかひと月とか回復と休息のプログラムが行われるもの」だと確認した。
先の第18回公判で公開された「指定寄託事業 配分申請書」には、居住と休息の分離の必要性をあげている。同時に「平和の家」は、より多くの地域の被害者たちが休息所として自由に活用できる空間、癒しプログラムに参加したり、訪れる人たちと新しい家族関係をつくるなどの過程を通じて、平和を築く空間として推進する」と記載されている。
社会福祉共同募金会を通じて挺対協に10億ウォンを指定寄付した現代重工業の関係者もこの日証人として出廷し、「ハルモニたちのための施設であれ、プログラムであれ、使用されることを望むという趣旨だった」と述べ、安城ヒーリングセンター は居住用に限定されていないと証言した。
そして配分申請書に休息活用と治癒プログラム計画が明示されており、「休息であれ、プログラムであれ、ハルモニのためという趣旨で同じ意味だ」とし、安城ヒーリングセンターはハルモニたちのための事業という点を強調した。
社会福祉共同募金会の評価委員、安城ヒーリングセンター関連資料の確認をしないでC点数を付けた
挺対協は当初、戦争と女性人権博物館近隣に休息所を設ける計画が予算不足で変更になり、京畿道安城所在の住宅を休息所に使用するようになったが、予想が外れて困難におちいった。これに関して社会福祉共同募金会に助言を受けたが、事業関連の援けはなく、結局は事業を中断した経緯が確認された。また、共同募金会側が書類をきちんと確認しないでC点数を評価した点も審議された。
この日の証言として出廷した社会福祉共同募金会の評価委員は、安城ヒーリングセンター購入に関連した検察の尋問に、「建物を購入しようとしたがソウルにはなく、募金会と協議して安城に決めたと聞いた」と述べ、「安城へ移そうとして何カ所か見たが、引っ越しを決定するに至った会議録がなく、物件価格や物品が詳しく示された資料がない」と述べた。
しかしこれは事実ではない。挺対協はソウルや外郭地域に(適合場所がない)という社会福祉共同募金会側の答弁を受けたがそれ以降、龍仁(ヨンイン)、安城、江華島(カンファド)などを探し、このうち3カ所を候補地に選定、各候補地に関する詳細な内容を2013年6月に臨時実行理事会を開いて論議した事実が確認された。
弁護人側がこの理事会の会議録を提示すると、評価委員は慌てた様子を隠せず、「(会議録を)見なかった」と認めた。
また2013年7月、社会福祉共同募金会 指定寄託事業小委員会でヒーリングセンターをソウルではなく安城へ変更し、寄託金10億ウォンのうち93%を住宅購入、4%を治癒プログラム費用に変更するという結論を出した。しかしこれに関しても、この評価委員は「見たことがない」と述べた。
このように評価委員は資料を確認しないまま、ハルモニたちが毎週水曜デモに参加するが、安城にヒーリングセンターがあるのは問題だと評価を低く付けたとも解釈できる。
これに判事は、「ハルモニが休息所にひと月に1回とか1週間に1回、都合の良い時に行くものだ。毎日暮らす所でもない。水曜デモ参加が評価の前提に必ずなるものなのか?」、「毎日暮らして、毎週水曜デモに参加するとか、毎日病院へ行くとか、そうなら距離の問題があるが、目的自体が休むことではないのか?」と聞き返した。
しかし2015年9月、評価委員は安城ヒーリングセンターを現場評価して具体条件なしに12月に最終的にC点数を付け、会計評価でもF等級を付けた。このため挺対協は、この事業の中断に追い込まれた。
この評価委員は検察の調査当時、「現場評価の場合、相対的に評価経験がある人が現場へ行ってスーパービジョン*を示してアドバイスもする」と陳述したが、挺対協にはスーパービジョン提示やアドバイスをしなかったと思われる。
挺対協は2019年9月当時、現場評価のために「治癒と平和の家のための休息空間提供、共同体プログラム事業が計画通りに進まないで苦悩している」とし、「今後の事業推進が円滑に進むように適切なスーパービジョンやフィードバック*の提供を希望する」と建議をしたことも明らかになった。
会計評価でF等級を受けた点について評価委員は、「社会福祉共同募金会側が運営する会計教育を受けることを勧告した」と説明したが、これもやはり違っているようだ。
弁護人側は、挺対協が評価前に会計教育を受けるようにとの勧告を受けたことがない点、住宅購入のための寄託事業は募金会も初めてだった点、会計指針に関連した告知を受けれなかった点などをあげ、このケースは完全に挺対協の過ちなのかと質問すると、この評価委員は「挺対協の過ちと断定するのは難しい」と答えた。
ヒーリングセンター売買金額について検察は現代重工業関係者に対し、尹美香議員らの背任容疑を立証することに力を注いだ。しかしこの関係者は、「大枠でハルモニたちのために使用されたら良いとの趣旨であり、売買価格について判断をしない」と答弁した。
同日、挺対協にヒーリングセンターを売却した金某氏が証言し、居住(別荘)目的で建物を建てたことが再確認された。金某氏は、家族との居住目的だったので高級資材を使用するなど、建築に念を入れて工事費用が高くなった。だから販売価格も上がったと陳述した。
次回の第20回公判は10月27日に開かれる。
(訳 権龍夫)
(訳注)*スーパービジョン;対人援助識者が指導者から教育を受ける過程である。継続的な訓練を通じて専門的スキルを向上させることを目的にしている。精神医学、心理学にとどまらず、福祉、教育、介護などの分野での一般的な教育方法である。(ウィキペディアから)
*フィードバック;相手の行動に対して改善点や評価を伝え、軌道修正を促すこと。(ウィキペディアから)