澤田公伸 まにら新聞2022.9.18


フィリピン人慰安婦としてちょうど30年前に最初に名乗り出た故ロサ・ヘンソンさんを偲ぶミサと集会が17日午前、パラニャーケ市のバクララン教会で行われ、被害者3人が参加。マルコス政権に慰安婦問題への支援を訴え


バクララン教会の慰安婦像の台座周辺でロサ・ヘンソンさんら亡くなった慰安婦被害者や支援者らを偲ぶ花束が次々と供えられた。台座近くに被害者3人が花束を持って立っている。=9月17日午前10時半ごろ澤田公伸撮影



 フィリピン人元従軍慰安婦の被害者と支援者からなる市民団体「リラ・ピリピナ」(シャロン・カブサオ事務局長)は17日、首都圏パラニャーケ市のバクララン教会(カトリック教会)で、故マリア・ロサ・ヘンソンさんが比人被害者として初めて名乗り出た日からちょうど30周年を記念するミサと集会を開催した。


 集会では被害者らがマルコス新政権に対して慰安婦問題への支援を呼びかけた。

 同日午前9時半から開かれたミサではテオドゥラ・ホルガド主任司祭がリラ・ピリピナの被害者メンバーやその娘や孫、また支援者たちを壇上に上げて。教会のミサに訪れた多数の信者たちに紹介した。その後、同主任司祭の案内で、教会内にある元慰安婦の銅像を建てるために作った台座に案内し、そこでロサ・ヘンソンさんを偲ぶために参加者らがそれぞれ花束をささげた。ホルガド主任司祭は「この教会の中には元マルコス政権期やドゥテルテ政権期に失踪させられたり、超法規的殺害で殺された市民たちを偲ぶ慰霊碑などもある」と説明し、教会として人権侵害の問題に今後も取り組む姿勢を改めて示した。


このあと教会の別の建物の中で記者会見が行われ、ミサや集会に参加した慰安婦被害者3人が紹介され、それぞれメッセージを述べた。

この3人の被害者たちはいずれもロサ・ヘンソンさんがラジオで戦時性暴力の被害を名乗り出るよう訴えたの聞き、自ら名乗り出ることを決心したという。ネグロス島で被害に遭ったエステリータ・ディさん(92)は「名乗り出てから30年近くたつが、日本政府による公式な謝罪と補償、教科書への慰安婦問題の記述という3つの要求がまだ実現されておらず、被害者への正義は回復していない」と強調し、マルコス新政権に日本政府に対してこの問題を取り上げるよう求めた。


 フィリピンの最初の慰安婦像はマニラ市のロハス通り沿いに2017年12月に設置されたが、翌18年4月に当局によって撤去され、一旦は製作者の元に戻された。19年8月にこの慰安婦像をもう一度設置するためにバクララン教会の敷地内に台座を用意し、除幕式の日程も組まれていた。しかし、直前になって製作者の元から何者かが銅像を盗み出したため、結局、同教会内に台座だけが残された形となっている。