（尹美香氏裁判 第17回公判 2022年9月2日） 神経科専門医、「吉元玉ハルモニの認知能力はたいしたもの」
ウン・テラ記者 法律ドット.com 2022/09/03
日本軍「慰安婦」被害者である吉元玉ハルモニが重症の認知症患者であるのか、および意思決定能力がないという検察の主張に、神経科専門医は正常な生活が可能だと反論した。吉元玉ハルモニの計算能力、社会性に問題はなく、むしろ創作と認知能力はたいしたものだと明らかにした。
ソウル西部地方裁判所（部長判事ムン・ビョンチャン）は2日、尹美香国会議員などの日本軍性奴隷制問題解決正義記憶連帯（正義連）関連17回公判を開いた。この日の公判には神経科専門医が証人として出席したが、先の検察側専門医の意見と対峙する証言として注目を集めた。
神経科専門医、「吉元玉ハルモニはレビー小体認知症であっても正常な活動が可能だ」
1998年以降、神経科を専担しているA専門医は、1週間に200～250人の認知症患者を診ている認知症専門医で、吉元玉ハルモニの健康状態に関する意見には重みがあった。
Ａ医師はまず、吉元玉ハルモニがレビー小体認知症という主治医の診断に疑問を提起した。A医師によれば、吉元玉ハルモニがパーキンソン病診断を受けた後、レビー小体認知症かどうかの診断を受けるためには1年間の経過を見守らなければならなかったが、主治医はそのような過程を経なかったこと。また、レビー小体認知症患者は「五角形の重ね描き」を行うことができないが、この日提出された証拠から吉元玉ハルモニは五角形の重ね描きを完璧にできていたためだ。
彼は「（「五角形重ね描き」は）時空間能力を知ることができる尺度だ。
認知症患者は視覚的刺激について認識できません。ところが吉元玉ハルモニはそれを正確に行った。最後までできた」とし、「普通、認知症初期ではその能力から壊れる。レビー小体認知症でもそれができなくなるとして論文で重要視されている」と強調した。
ただ、彼は主治医が臨床的に吉元玉ハルモニを診療したため、レビー小体認知症と診断したことを尊重すると言った。
一方、レビー小体認知症状態でも正常な生活が可能だという立場は曲げなかった。
レビー小体認知症の状態で認知の起伏があり、少し良くなったように見えることもあるのではないかという検察の質問には「私は同意しない。筋道を立てて話していても突然突然悪くなるのがレビー小体認知症だ。正常であるのは極めて正常である。私もそんな患者を見た」とし「薬を使うとレビー小体認知症は正常であるかのように過ごせる」と反論した。
映画俳優ロビン・ウィリアムズの場合にも自殺するまで普通に映画を撮って声優録音もしたが、死後剖検の結果、レビー小体認知症だったという点も根拠として提示した。
検察側の専門医が血管性認知症だと言った意見については「絶対ではない。血管性は運動機能に関連しています。代表的なのは脳梗塞が何度も起こって回路接続ができずに生じることだ。あるいは記憶力と判断力をつかさどる海馬などに本格的に認知症が来れば認知症となる。しかし、どちらも該当しない」と話した。
この日、法廷には吉元玉ハルモニによる創作詩と、手作りの押し花作品などが証拠として提出された。これを見たA医師は「創作が容易ではなかっただろうが、感情もこもっていて、考えも整理しておっしゃったようだ。相当な能力があったと考えられる」として「重症であれば対話ができなくなり、当然書くこともできない」とし、ハルモニの認知能力には問題がないと判断した。
吉ハルモニの歌う映像を見た後には「歌を覚えて歌っているのは様々な高次元的な機能」だとし「音程に合わせて歌詞を考えて歌う面で機能が高い方」と評価した。
検察は、吉ハルモニが認知症の状態で遺言状を作成した行為が準詐欺の嫌疑に該当するという主張だ。しかしA医師は認知症患者も遺言能力を備えていると強調した。
彼によると、米国でも準用している英国のアルツハイマー・ソサエティは、▲遺言状作成の意味及び遺言の効力について理解できること、▲今後の債権又は債務を持つことを含め、本人が何を持っているか、どのように資産が変動するのか理解できること、▲本人の遺言状に誰を指名したいのか、そしてなぜ本人が指名する人に相続または相続しないのか理解できていることなどを理解する場合、認知症患者の遺言能力を認めている。
これに照らして、吉元玉ハルモニは計算能力を持っており、お金に対する計算が上手くでき、判断力と問題解決能力、社会活動能力を持っているので、遺言能力があるという主張だ。
介護人「吉元玉ハルモニは健康な方だった」
この日公判には2013年から2020年はじめまで正義連が運営するシェルター「ウリチプ」で介護人として働いたBさんも証人として出席した。 彼女は吉元玉ハルモニが自らトイレを利用するなど健康だったと検察の認知症の主張に本人の経験に基づいて反論した。
Ｂさんは「ハルモニは健康な方だった」とし、「認知症だった実家の母親を１０カ月間お世話にしたが、母親と比較して吉ハルモニの認知症は１０点満点で１点程度」と話した。
続いて「失敗したことはあるが、トイレを99％一人で処理された」とし、「ハルモニが洗うときに私たちがシャンプーを差し上げたら、一人でやり、シャワーを差し出したら一人で洗いました。
突然、一人で洗ったことも1、2度ある」と話した。
そして「息子の誕生日だとおっしゃって、嫁の誕生日がいついつだとも話してすごいと言ったことがある」。「幻聴、幻視、異常行動はほとんどなかった」、「2018年までにインスリン注射を直接お腹に打っておられた」など吉元玉ハルモニが普通に生活をしていたと証言した。
一方、この日の裁判では吉元玉ハルモニの家族に関する話も出た。Bさんは「(ハルモニは)息子の家に行きたくない。孫には会いたくないと言った。息子の妻もハルモニに関心があまりなかった。お金を要求する時だけ関心があった」と話した。
また「2018年度だったか、正月に孫が手ぶらで来た。ハルモニにあいさつしたが、嫁から電話が来て（孫に）お年玉をあげてと言った。どうして手ぶらできてお年玉をもらって帰るのか、歳が三十も超えてるのに…」と舌を打った。
次回18回公判は9月23日に開かれる。