在米韓国人作家・李ミンジンさんの小説「パチンコ」がAppleTVでドラマとして制作され、世界中の話題になっています。日帝植民地時代に生まれたソンジャという少女、その母親のヤンジン、ソンジャの息子と孫、4世代にわたる在日朝鮮人史を扱った作品です。




 強圧的な国権侵奪、資源と人間に対する略奪と搾取、差別と蔑視、強制労役と暴力、強制動員とディアスポラ、強姦と日本軍性奴隷制、冷戦と分断の歴史、この逆らうことができない選択、一人の人間の強靭な意志、この二つの軸を中心にストーリーが展開されます。在米韓国人たちが制作・監督したこのドラマは20世紀初めの日本、20世紀末の米国と大韓民国、日本の時空間を巡って女性の視点で現在に暮らす私たちの姿を重ねます。そして私たちが誰なのか、どう生きて来たのか、どんな社会を夢見るべきかを問いかけています。




 ドラマ「パチンコ」は、日本の否定的で敵対的な反応が例外的だといえるほど、世界中の市民たちの爆発的な関心と熱烈な好評を受けています。歴史とは、そうなのです。消そうとしても消されず、隠そうとしても覆い隠すことはできません。現在を生きる私たちがどう記憶し、どう継承するかによって、新しい歴史が描かれます。歴史とは、過去に生きた人間の単純な痕跡ではなく、私たちと彼らの間の限りない対話であり、これを通して未来を描く重要な現在的行為だからです。だからいつも私たちは努力して話し、聴き、書いて記録し、再度記憶し、伝承してきました。




 誰も話そうとしないで、誰も聞こうとしないとき、理解の言葉まで不在の時代であっても日本軍「慰安婦」被害者たち、そして彼女たちの痛みに共感する数多くの市民たちは話し、伝え、記憶してきました。堂々と立って加害者の責任を追及し、世界各地で勇気をもって証言し、数多くの話を証言集と映像で残しました。国連などの国際機関に訴え、国際民衆法廷を開催し、博物館を建立し、韓国は勿論、米国とドイツの真ん中に「平和の少女像」を建て、「表現の不自由展」を東京で開催し、日本帝国主義による辛い過去の出来事に留めるのではなく、戦争と暴力、差別と人権侵害に立ち向かう市民的な力と意志の象徴として記録してきました。




 現在もロシア軍による集団虐殺と集団強姦の辛い報道が伝わってきます。日常の安全を訴える女性、児童、性的少数者、弱者層、障害者、移民たちの話も途切れることがありません。日本軍「慰安婦」被害者を始めとする各種のジェンダー暴力の被害者を保護・支援する女性家族部は、廃止の危機にさらされています。過ちと責任を消し去るため、日本政府のユネスコ文化遺産登録推進と教科書歪曲の報道が続く中、「未来志向型の韓日関係改善」意志が響き合っています。




 私たちは何をすべきか?むしろ明確になってきました。反省と謝罪のない「和解」、過去を直視しない「未来」、平等と正義がない「公正」、人間に対する最小限の尊重もない者たちが述べる「自由」に、どうやって対峙するのかしっかりと教えてくれます。




 瞬間的に退行するような歴史は、いつも人間の集団的意志で前進し、どうにもならない怒濤のような流れの中でも新しい突破口を開き、私たちを現在のこの場に導いてきました。正義連は、困難の中でも屈しない被害者たちと、全世界の市民たちの精神をしっかりと守り継承するために、今後とも邁進します。私たちが進めばまた他の私たちが、他の私たちが進めばさらに他の私たちが、真実と平和の松明を限りなく引き継いで反動の波に対峙すると信じます。




 202246

 正義記憶連帯 理事長 李娜榮

 


(訳 権龍夫)



*ディアスポラ;国や民族からの離散、または離散した個人・集団をいう。離散先での定着と、再び帰還できないことを暗示している。(訳注)