前回お知らせしたナヌムの家臨時理事会が臨時理事たちの退任をもって解散となったことをお伝えしました。
(下記、全国行動HP参照)






元々1年という期限付きの臨時理事会だったわけですが、大統領候補だったイ・ジェミョン氏が曹渓宗の意をくむという形で組織された理事会でしたので、ナヌムの家は何の改革もなされないまま予定通り解散となったわけです。むしろ状況は悪化しました。




さて、4月20日水曜日午後、「第一次臨時理事会」なるものがナヌムの家敷地内にある教育館建物にて開かれました。曹渓宗僧侶、私服の人、運営人などおよそ15名ほどが参加した模様です。何が話し合われたのかこちらには直接知るすべはいまのところありませんが、近日中にナヌムの家のHPに議事録がアップされるかもしれませんので、それが確認され次第別途お伝えできればと思います。




こちらとしてはこの日に正式理事会が発足するものとみていましたが、来月5月13日に開かれる予定の次回理事会で社外理事を正式選任するのと同時に曹渓宗主導の正式理事会を発足させるようです。これによりナヌムの家の民主化改革はさらに困難となり、過去のナヌムの家運営体制に逆戻りするのは明確となりました。




最初にハルモニたちの現状をお伝えしたいと思います。




イ・オクソン
ハルモニ:運動治療に参加するときにのみ顔を見ることができますが、挨拶する程度です。看病人たちが横に張り付き監視する中でハルモニたちと自由に話すのは難しい状況です。かれこれ1年近くこうした状態が続いています。



先月コロナに感染しましたが軽い症状で済み、現在は回復しています。ただしハルモニの体力・気力は衰えていくばかりで、言葉を交わすときもろれつがうまく回らなくなりましたし、活気もすっかり抜けてしまったようです。
4人のハルモニのなかで衰えが一番顕著なのがこのイ・オクソンハルモニです。2019年に最後に日本の川崎を訪問した時とはまるで別人のようです。私たちを含む周囲の人たちとのコミュニケーションをとる機会がほぼ奪われてしまっている状態が長期続いていますし、中国にいる家族との連絡も以前のように頻繁にできなくなっています。
また私たちと外出できなくなってから1年ほどになりますが、この間運営人たちがハルモニを連れて外出することはただの一度もありませんでした。定期検査で病院に行く以外ハルモニの自由意思で外出できる機会がないのです。




ソンリサンハルモニ(イ・オクソン):元来の自由奔放な性格もあってか明るく楽しく過ごすようにはしているようです。運動治療の時のみ顔を見ることはできますが、以前のように一緒に好物を食べに行ったり買い物に行くという機会は全くなくなりました。

先月コロナにかかりましたが、軽症で済み現在は回復しています。以前なら自ら編み出したという祈祷の声が夜中に響いていたのですが、それが聞こえてこなくなってから久しくなります。ハルモニ本人にとっての健康維持法なので誘われると私もなるべく付き合うようにしてましたが、いまではお互い自由に話をすることもできません。




パク・オクソンハルモニ:先週コロナに感染し市内の病院に入院しましたが、無事退院しました。体調が回復すれば来週あたりから運動治療にも参加する予定です。

昨年運動治療開始以後もう寝たきり状態ではないことは以前にもお伝えしました。むしろ長年にわたり寝たきり状態にさせられていた、というのが実情です。

ハルモニたちを前面に押し出す形で集めた巨額の寄付金をこういうところに使わず、行政から出る補助金だけで福祉施設としてのナヌムの家を運営してきた弊害はほかにもいろいろありますが、寄付金を使用し本来提供されるべきサービスを受けられないまま亡くなっていったハルモニたちのことを思うと、“歴史ビジネス”のありようを考えざるを得ないのです。




カン・イルチュルハルモニ:日常の様子に関する情報が最も少ないハルモニになってしまいました。娘さんが運営陣側についており、私たちとハルモニが接するのを極度に嫌っております。私たち内部告発したスタッフたちが看病人たちに対して人権侵害を行っていると運営陣が主導する形で国家人権委員会に昨年陳情を出したのですが、陳情人の中にカン・イルチュルハルモニの名前も入っていることがわかりました。

認知症の症状が進み数分前に起きたことを思い起こすことさえ難しい状態となったハルモニの名前を利用して陳情書を作成したということなのですが、他にも議員や機関幹部訪問などがある度に昨年来動員させられているのはカン・イルチュルハルモニのみです。

ほかのハルモニたちは医療関係者を除く外部の人たちとの接触をほぼ断たれている状態です。


特にイ・オクソンハルモニは自分たちが死んでも生活館を自分たちが生きた証を展示する博物館として残さねばならないという考えを持っています。だから、曹渓宗の方針(ハルモニたちの死後ホテル式療養施設に変える)に反する発言を外部からの人たちの前でされることを嫌って面談に参加せないのだと思われます。


ソンリサンハルモニは自由奔放な性格なので爆弾発言をされるのを避けるため。認知症が進み家族も取り込む形でもっとも管理しやすいハルモニと運営陣が見なしているようで、カン・イルチュルハルモニが昨年来曹渓宗の広告塔をさせられる機会だけが増えました。



次に私たち内部告発したスタッフたちに関することです。


全く助けにならなかった臨時理事会でしたが、先月臨時理事5名が退任したことを受けて、私たちもナヌムの家を退社する心づもりでした。その事情を知った市民社会との連帯運動が臨時理事会解散と入れ替わる形で先月末よりスタートしました。


『ナヌムの家の正常化を求める市民の会」(以下市民の会)というのが結成されたのですが、内部提報実践運動、共に開く広州連帯、青い森ヴァルドルフ学校、 正義党の広州支部、江東労働教育などの市民団と個人が参加しています。


これまでは監督責任ある行政機関等に対し内部告発スタッフたちが直接交渉するという形をとってきましたが、私たちにとっても現実足かせとなっていた臨時理事会が解散したことでかえって市民社会と連帯を深めながら市民運動としてナヌムの家の問題をイシュー化していく流れができました。




まず市民の会でナヌムの家が所在する村内の公道と広州市内の交通量の多い場所約20か所に広州市と曹渓宗の癒着、曹渓宗と運営人による弾圧を批判しナヌムの家の現状改善を伝えるバナーを設置しました。

内部告発者が同様の内容のバナーを設置したときは村役場と広州市が即時撤去してしまったのですが、今回のバナーは数個が撤去されたもののほとんどのものはまだ現場に残っています。これからもバナーを増やしていく予定です(記事あり)。





次に4月20日に市民の会主導で京畿道に対しナヌムの家問題に関して広州市を監査対象とした住民監査実施の請求書を提出してきました。広州市の権限でナヌムの家法人理事が選出されるのですが、その中身は曹渓宗関係者だけで構成されており、これまで提起された問題の解決どころか再度曹渓宗に偏ったナヌムの家の運営に戻ることをよしとしない地域住民みずから監査の実施を求めたものです。



一応受理され5月の連休明けに監査実施に向けた作業に入るだろうとのことですが、曹渓宗との癒着は京畿道も広州市同様です。こちらが期待する結果が出るとは思いませんが、目的は問題そのもののイシュー化にあるので次のステップを準備しているところです。


このことは聯合ニュースも報じていますので関心のある方は以下のリンクからどうぞ。




今度の水曜日(4月27日)から3800番バスキャンペーンというのが毎週水曜日に始まります。ソウルのヤンジェ駅とナヌムの家を結ぶバス路線(3800)が2020年秋に開通しましたが、関心のある人たちを募ってこのバスを利用しソウルからナヌムの家を訪問、運営陣に対する抗議集会やイベントを開くというコンセプトです(こちらも記事あり)。




このように市民連帯による運動と実践がスタートしました。


とはいえ即座に難しい現状をひっくり返すことができるというわけではないので、ナヌムの家はこれで大丈夫だとは決して思わないで下さい。

5月13日に正式理事会が発足すれば、あの手この手でさらなる弾圧が行われると予想されます。ナヌムの家問題はこれまで市民社会からほとんど見向きもされない状況でした。ようやくその市民社会との連帯がスタートしました。なにせ闘っている相手は曹渓宗です。韓国社会で絶大な権力と権威をもつ宗教マフィアです。大きな期待はしないが希望は捨てず、といったところが正直な心情です。

何か動きがありましたらまたお伝えします。



(矢嶋宰)