<資料>日本軍「慰安婦」の送出において募集人が有罪となった大審院判決ー長崎事件
日本軍「慰安婦」の送出が、当時において日本の刑法に違反するも のであり、募集人が検挙され有罪判決を受けた判決が大審院判決が、『大審院刑事判例集』にあり、国立国会図書館のデジタルコレクシ ョンで閲覧、印刷が出来ることが分かりましたのでお知らせします。
大審院刑事判例集. 第16巻上
■長崎事件
○國外移送誘拐被告事件
昭和十一年(れ)第三〇二一號
同十二年三月五日第四刑事部判決 棄却
【上告人】被告人 藤田稔 外六名
辯護人 松永 東
赤井 幸夫
中山 伊佐男
河鰭 彦治郎
山崎 佐六 外一名
【第一審】長崎地方裁判所
【第二審】長崎控訴院
◎判示事項
誘拐罪ノ謀議ト共同正犯ー上海ヘノ移送ト國外誘拐罪又ハ國外移送罪ノ成立―人ヲ誘拐シテ國外ニ移送セル場合ノ擬律
◎判決要旨
一 國外移送ノ目的ヲ以テ人ヲ誘拐シ其ノ被誘拐者ヲ國外ニ移送スルコトヲ謀議シタル者ハ其ノ實行行為ヲ分擔セサリシトキト雖國外誘拐竝國外移送罪ノ共同正犯タル刑責ヲ負フヘキモノトス【要旨第一】
二 上海ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ誘拐シ之ヲ同地ニ移送シタルトキハ直ニ國外誘拐罪竝國外移送罪ノ成立ヲ來スへク同地ニ帝國軍隊ノ駐屯スルト否ト帝國裁判權ノ行ナハルルト否トハ犯罪ノ成立ニ關係ナキモノトス【要旨第二】
三 國外移送ノ目的ヲ以テ人ヲ誘拐シタル者カ其ノ被誘拐者ヲ國外ニ移送シタルトキハ其ノ誘拐ノ點ニ付刑法第二百二十六條第一項移送ノ點ニ付同條第二項ヲ各適用シ其ノ間ニ手段結果ノ關係アルモノトシテ同法第五十四條第一項後段ニ照シ處斷スヘキモノトス【要旨第三】
◎事實
第二審ハ被告人等カ婦女ヲ誘拐シテ上海ニ移送シ醜業ニ従事セシメンコトヲ謀議シタル上被告人富雄以外ノ被告人等カ其ノ謀議ニ基キ長崎地方ニ於テ十数名ノ婦女ヲ誘拐シ之ヲ上海ニ移送シタル事實ヲ認定シ被告人等ヲ孰レモ共同正犯ナリト判定シ其ノ行為中誘拐ノ點ニ對シテハ刑法第二百二十六條第一項移送ノ點ニ對シテハ同條第二項ヲ各適用シ尚右兩行為ノ間ニ手段結果ノ關係アルモノト認メ同法第五十四條第一項後段ニ照シテ處斷シタリ
◎主文
本件上告ハ孰レモ之ヲ棄却ス