<正義連>第1495回日本軍性奴隷制問題解決のための定期水曜集会記者会見 週間報告
もう一つの反歴史的、反人権的、反憲法的判決が下された。
6月7日、ソウル中央地方法院民事31部(キム・ヤンホ部長判事)は強制動員被害者および遺族85人が日本製鉄・三菱重工業・日産化学など16社の企業を相手に起こした損害賠償請求訴訟を却下した。
キム・ヤンホ部長判事は「大韓民国国民が日本国または日本国民に対して持っている個人請求権が請求権協定によって消滅したり、放棄されたということではないが、訴訟でこれを行使するのは制限される」と判断した。1965年の韓日請求権協定により個人請求権は制限されるとし、既存の大法院判決を排斥したのだ。さらに驚くべきことに「大韓民国が請求権協定で得た外貨はいわゆる『漢江の奇跡』という輝かしい経済成長に大きく寄与した」とし、日本の「寄与」を強調したという点だ。
加えて裁判所は原告の勝訴で強制執行が成り立てば日本との関係が毀損され、対米関係が悪化して安保体制が揺らぎ、「国家および国益に致命的損傷」を招くという主張まで判決文に込めた。
人権侵害の有無と救済の可否を問う司法手続きにおいて、争点と関係のない韓米同盟と米日同盟まで引き入れて判断の背景として提示したわけだ。
司法部本来の価値と任務を守るどころか、裁判官の仮面をかぶった極右政治人のあきれた主張に他ならない。
人権より国益を、自国の利益より加害国の利益を心配して、大韓民国司法部の地位を地に落として国の品格を傷つけ、歴史の時計を植民地京城の裁判所に押し戻す判決と言わざるを得ない。
キム・ヤンホ部長判事は日本国を相手どって起こした損害賠償請求訴訟で勝訴した日本軍「慰安婦」被害者が、敗訴した日本から訴訟費用を受けとることはできないという判断を下した当事者でもある。
私たちは4月21日、日本軍「慰安婦」被害者が日本国を相手に提起した損害賠償請求訴訟を国家免除と「2015韓日合意」を口実にして却下したミン・ソンチョル裁判所を通じて司法府の後退を確認したところだ。
「反日種族主義事態」、「リュ・ソクチュン事態」、「ラムザイヤー事態」等を通して学問の自由という美名の下で強行される歴史否定論の拡散も目撃した。ことあるごとに頭を下げたりあげたりしながら一進一退、ドタバタする反民族的政治人たちの態度も見慣れた。
研究者の誤謬が明白な虚偽事実を両論論争の対象にあげておいて、判事の誤った判断が動かすことのできない物差しとなって真実を汚し、政治人の妄言が敵意と嫌悪、蔑視と暴力、怒りと無慈悲を煽って正当化してきた数多くの事例を見てきた。
生きるということはどれほど苛酷なものか、民主主義と正義の実現への道もまた、どれほど苛酷なものだろうか。 一つの山を越えればもう一つの山が現れて、死ぬ思いをしてのりこえるとまた次の山が現れる。寛容や寛大な心を期待することさえできない大きな山がまた現れて、私たちが死んでこそ終わるかのように持ちこたえているようだ。
それでも、地獄のように真っ暗だった植民地のトンネルを過ぎて分断と戦争、軍事独裁の時期を通過して闇のカーテンを一つひとつ勇気をもって突き進んできた大韓民国市民は絶望しないだろう。
諦めないで、中断することなく歩み続けるだろう。
私が消えれば他の人が、その人がいなくなれば次の世代が、ついには立ち上がり、この闘いいにけりをつけるはずだった、そして最後には私たちが望んだ平和な世の中が来ること、日本軍「慰安婦」ハルモニの願いを再び心に刻んで、堂々と歩いていくだろう。
正義の前に不正義が、真理の前に偽りが、平和の前に暴力が、愛の前に嫌悪が屈服することになるその日まで世界市民と共に闘うだろう。
2021年6月9日
正義記憶財団 理事長 李娜榮
(訳 方清子)