2020年5月7日に行われた人権運動家イ・ヨンス(李容洙)さんの1回目の記者会見から2ヵ月が過ぎました。この間、私たちは多くを失いましたが、同時に、多くの教訓を学び、新しい仲間とも出会うことができました。日本政府による加害事実の否定と責任回避によって歴史的正義の実現が引き延ばされている間、被害当事者の方々の苦情と運動の疲労感が累積されてきたことも如実にあらわれてきました。


驚くべきことは、
加害国日本に対する責任追求はおろか、被害者の訴えに耳を傾けたり共感したこともない人らが、被害当事者の発言を選別的に抜粋したり歪曲して、被害者と活動家らが共に歩んできた30年の運動の歴史を全面否定する刃として使っている点です。日本の極右と共鳴しながら被害者たちを「ウソつき」と決めつけて歴史の歪曲・否定の先頭に立ってきた人らが、被害者の言葉を好きに継ぎ合わせて解釈し、自己を正当化する道具として活用していることです。

その真っ只中に、韓国のメディアがあります。
一部のメディアは、意図せぬ無知と悪意ある意図の間を縦横無尽に行き交いながら、被害者と活動家、遺族と活動家、支援団体と団体の関係を引き裂き、自らが提起した「疑惑」を「不正」だとし、偏った意見を「事実」だとでっち上げることで、団体と運動の道徳性と真正性を深く傷つけてきました。まともな市民監視や税務調査さえ受けてもいないマスコミ各社が、最低限のバランス感覚も失ったまま「ニュースを装ったデマ」を撒き散らし、自分たちだけの「表現の自由」を聖域化しています。

これに対して正義連は、無責任なメディア報道に警鐘を鳴らし、より責任ある、成熟した韓国ジャーナリズムの姿勢を求めるべく、第1次としてマスコミ7社の8件の記事、第2次としてマスコミ4社の5件の記事について、訂正報道および損害賠償を求める調停を、言論仲裁委員会に申請しました。

言論仲裁委員会による1次調停の結果、記事の削除と訂正報道文の掲載、記事の削除などで2件は終結し、3件については訂正報道の掲載、反論報道の保障、記事の見出し削除などと、それぞれ強制調停がなされました。
その他の記事に対する調停は、引き続き進められています。

呆れたことに、言論仲裁委員会で調停の対象となっている記事の一つを書いた記者は、ある大学の同門会が主管する「第8回義血言論人賞」の受賞者に選定されたといいます。

その記者の該当記事は、正義連が、国税庁に対して、指定の書式通り複数支出の代表支給先1ヵ所のみ記載して提出した内容を「ひと晩で3300万ウォンの飲み代」と、また、正当な募金事業費の支出を「あやしい寄付」に塗り変えて掲載した、悪意な虚偽・歪曲報道の典型であります。仮に国税庁のホームページで関連書式や記入手続きを確認したり、少なくとも国税庁関係者に一度だけ確認さえしていれば分かるはずの事実を、確認もせず報道した記者に対して、「韓国言論退行賞」や「韓国言論発展の足かせ賞」でもなく、「韓国の言論の発展に貢献した」と賞を与えるとはどういうことでしょう。

正義連は、このような現象が、韓国言論の全体像ではなく、更に韓国のジャーナリストの資質や素養を全面否定する兆候ではないことを良く知っています。表現の自由と言論の独立性を自ら阻害し、民主主義を脅かし、韓国社会全般の危険な要素となる記者は、ごく一部であろうこともよく知っています。

正論報道を目指して今日も現場で汗を流している多くの記者の皆さんに敬意を表します。そして、ヘイト発言とフェイクニュースに対抗し、この国の言論の地位と価値を堅固に守っていただきたいと切に願っています。

                                                                      2020年7月8日
                                 正義記憶連帯 理事長  イ・ナヨン(李娜栄)

(訳:正義連提供)