ウン・テラ記者 法律ドットコム 2022.8.13




 ソウル西部地方法院  大理石の文字   (写真=ウン・テラ記者)
「自由・正義・平和」と刻まれている




検察側専門医たち「吉元玉ハルモニ 自分の活動を理解していた」
~専門医たち、記録だけ見て意思決定不能 認知症推定…活動映像見て「当惑」~




尹美香(ユン・ミヒャン)議員に対する検察の起訴が「強引な起訴」だったという主張が次第に強まっている。



検察は尹美香議員(無所属)が日本軍「慰安婦」被害者元玉ハルモニが認知症の状態で寄付をするよう強要するなど、準詐欺行為をしたと主張しているが、検察側専門医らは吉ハルモニの当時の活動している映像を見た後には 「意思が明瞭に見える」と陳述した。




当該専門医は、検察側が提供した吉ハルモニの医務記録と日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)の文書等に基づいて、吉ハルモニが意思決定能力に深刻な障害を持つ認知症患者であるという所見を検察に提出した。しかし、裁判の過程で実際の吉ハルモニの活動映像を見て当惑した気配を見せた。




ソウル西部地方法院刑事合議11部(部長判事ムン・ビョンチャン)は、12日、尹議員など正義連関連16回公判を開いた。この日、公判には先月吉元玉ハルモニの主治医を尋問したのに続き、検察指定の専門捜査諮問委員のうち精神科専門の2人に対する証人尋問が行われ、医学的判断が注目された。



検察側専門医、記録だけ見て意思決定不能 認知症推定・・・活動する映像を見て「当惑」したり 専門医ごとに判断のずれがみえる


専門医たちは検察の捜査過程で一様に吉元玉ハルモニが意思決定が難しい認知症患者だという所見書を検察に提出した。これを土台に検察は、尹議員らが認知症患者を利用して寄付行為、遺言状の作成などを強要するなど、準詐欺の疑いがあると主張した。
しかし、弁護人側が提示した吉元玉ハルモニの活動などの映像を見ると、専門医たちはハルモニが意思決定能力がないと断定することはできなかった。検察側が提示した資料に基づいて所見を明らかにしたが、当時の具体的な状況を知ってみると、実際の吉元玉ハルモニに会って診断してはいない限界があったとみられる。




この日の証拠として提出された映像には、吉元玉ハルモニが2017年5月にドイツでキャンペーンしたときに行われたマスコミとのインタビュー、2017年7月に日本を訪問して在日朝鮮学校に奨学金を伝達する姿、2018年9月に在日朝鮮学校訪問当時、直接、奨学生選抜 を要請する姿などが含まれていた。




同映像で吉元玉ハルモニは、ドイツ人記者の質問を通訳を通して聞いた後、次の世代には自分と同じようなことが起きないように、戦争のない国を作るために世界を回っていると活動の趣旨を説明するなど、明確に回答を続ける様子を見せた。在日朝鮮学校の学生たちには一生懸命勉強してほしいというお願いとともに奨学金を直接伝達したり、経済的理由で苦労して勉強する学生二人だけを選抜してほしいと参加者に直接意思を明らかにする場面もあった。




これを見たA専門医は「意思が明瞭で自分の行動を理解していると思うか」という弁護人側の質問に「そう思う」と答えた。あわせて「診療記録と、現れる状況との間に若干の不一致がある」と付け加えた。また、彼は検察側が提供した診療記録と実際の吉元玉ハルモニの海外キャンペーンなどでの活動が一般的な認知症患者の症状と一致していないという点で「双極性障害」という所見を出した。つまり、ハルモニがいわゆる躁うつ病を持っており、海外活動当時は躁病だったという意見なのだ。

しかし、これは吉元玉ハルモニの医務記録上にはなかった病名だ。専門医によって解釈に差を見せる課題はこれだけではなかった。




過去の公判に証人として出てきた専門医は、吉元玉ハルモニに対して「レビー小体型認知症」の可能性を最も高く見ており、この場合、日常生活が可能な程度の症状も見える特性を持っていることが知られている。




これに裁判部が「躁病ではなくレビー小体認知症状況だからではないか」と尋ねると、専門医は「担当主治医ではなく、記録と団体活動記録をみて判断した。一般的に認知症患者が見せる様相と異なる面があって(双極性障害と)推定したものであり、「私たちは(レビー小体認知症)検査機がなくて確信的なことは言えない」と答えた。「(証人の)患者の中にレビー小体認知症の例がないか」という弁護人の質問にもそうだと答えた。

 該当臨床経験のない専門医が検察の資料だけを見て解釈したものと思われる。




検察側証人として立ったB専門医も同様だった。 主治医がレビー小体である可能性が高いとしたのとは異なり、血管性認知症である可能性が高いという所見を示した。これに対して弁護人が主治医の所見と異なると指摘すると、「可能性がある」ということだと答えた。




この専門医は「天の国に行くまで誰と一緒と暮らしたいですか?」という尹議員の質問に「家(シェルター)の所長」と吉元玉ハルモニが答える映像を見た後「そのことばは真実だとみることができる。ハルモニはそこでの生活に慣れた方だから、息子と住むという意志はなかったと思われる」と話した。




意思決定能力のない認知症患者という検察の主張をよそに、吉ハルモニは、意思を明確に明らかにしたという趣旨の陳述として見ることができる。




また、吉元玉ハルモニが2017年女性人権賞と一緒に受けた賞金1億ウォンのうち5千万ウォンを正義連に「吉元玉女性平和賞」賞金として寄付し、子どもたちに4千万ウォン、養子の娘に1千万ウォンなどを支出したことについても 「ハルモニの意思通りに執行されたものだ。 認知症と関連して語ることはできない」と話した。

ただし、「全体的な脈絡を見なければならない。なぜそんな行為がなされたのか分からないので悩んでいる」とも言及した。




遺言状の作成をしても「直接目で確認して答えることができれば正確だろうが、限られた資料で推定するしかない」としながら、吉元玉ハルモニが遺言状にサインする姿を前に「どうやって集中して行ったのか分からない……」 と、記録だけで見て下した所見という趣旨で言及するだけで確実には答えなかった。



10年、一緒だった看護師、「吉元玉ハルモニの遺言は普段おっしゃっていたことば」


この日の公判には、吉元玉ハルモニに2010年から2020年6月までお世話したC看護師が証人として立った。彼女は「(認知症の症状が)深刻な状態には見られなかった。お休みになってからもトイレに(自分で)行かれた。私も何度も支えて(トイレに)お連れし、終わった後は手を洗って出てこられた」と、大小便も行けなかったという検察の主張を一蹴した。
そして「いつも困難な人、自分のように学びたくても学べなかった子どもたちの話をたくさんされた」。 困難な人を手助けするのは当然だということだった。本人が活動しながら受けとったものは施さなければならないというハルモニ自身の意思に従って寄付行為を行っていたと述べた。




吉元玉ハルモニが遺言公証をしようとしたときにも同行したという彼女は、公開された遺言状の内容は「吉元玉ハルモニが普段に言われていることば」とし「(当時)ハルモニが公証という表現を使われなかったが、死んだ後にしなければならないことをしに来たと言われた」 と明らかにした。

また、公証準備当時、弁護士と吉元玉ハルモニのやりとりのなかで「葬儀やあれこれについて『はい』と答えた。 葬儀を行うのは正義連、尹美香に同意した」と確認した。

ただし、この日の遺言公証は問答の過程で、ハルモニが明確に意思を示さなかった部分もあり、法律的な公証手続きを終えなかった。




次回公判17次公判は9月2日に行われる。



(訳 方清子)