2020年5月7日、被害者であり女性人権活動家であるイ・ヨンスさんの記者会見以降、韓国の保守メディアは正義記憶連帯(以下正義連)に対して様々な疑惑を提起している。


しかし、これらの報道の大部分は事実ではない、もしくは偽のニュースであることが明らかになっており、そのうちの一部は言論仲裁委員会による調整も受けた。一連の過程において韓国言論の混乱が露見したにもかかわらず、検察はユン・ミシャン議員と正義連活動家を法廷に立たせた。国際フェミニスト研究者と活動家のネットワーク、バンディ[1]は検察の不適切な起訴を強く糾弾する。

 


5月下旬、検察は正義記憶連帯の事務所を捜索し、日本軍性奴隷制の運動に献身してきた活動家や市民の基本的人権を侵害した。検察は、疑惑にまみれた報道と公益性が担保とされない保守団体の疑惑を無批判に受け入れた。検察官の押収捜査に関する法律に従えば押収捜索は具体的な犯罪の嫌疑に応じて、捜索は最小限にとどめる必要がある。法的規範は、基本的人権保護のための基準を定めているが、検察はこの事実を無視し、必要以上の押収捜索を対象に設定した。さらに、4 日間で40 件に及ぶ過剰な電話など、様々な方法で活動家に圧力をかけ、心理的および肉体的影響を及ぼした。このような渦中にひとりの活動家は「人生すべてが否定されたようだ」という言葉を残してこの世を去った。国連女性差別撤廃委員会作業部会とのやり取りの中で、バンディは基本的人権原則に違反した検察の強圧的捜査を指摘した。

 


強引な検察の捜査に加え、検察の起訴に対してさらに重大な憂慮を表します。9月14日、検察当局は、ユン・ミヒャン議員が娘の留学や住宅購入のための資金横領および流用した事実はなく、正義連の流用、横領、補助金の重複支給、安城ヒーリングセンター売却関連背任嫌疑もなかったと結論付けた。正義連を貶め、活動家らの名誉を棄損した疑惑は事実でなかったことが明らかになった。しかし、検察はユン・ミヒャン議員と正義連活動家1名を起訴し、死者にまで共謀の疑いを被せた。起訴直後、韓国と日本の市民社会は、活動家らの名誉を棄損する検察の強引な起訴に対して憂慮を表明した。

 


また、検察は、被害生存者であり、女性人権活動家である吉元玉さんとともにしてきた努力と活動を「準詐欺」とみなし、2017年に吉元玉さんが「女性人権賞」に寄付をよせた際、「心神微弱」状態にあったと主張した。検察の行動は、被害生存者の崇高な決定を損ねるばかりか、韓国社会は今も日本軍性奴隷制被害生存者を主体性を持った存在とは見ていないという事実を証明した。検察は、吉元玉さんが世界中を回って国際キャンペーンを行い、研究者/活動家/メディア/未来世代と出会い、貴重なメッセージを残してきたプロセスを無視した。吉元玉さんと彼女が歩んできた足跡を消そうとする試みであり、人権蹂躙と名誉棄損に他ならない。



李容洙さんから吉元玉さんまで、私たちは右翼が政治的目的のために被害生存者たちを神格化したり卑下したりするのを目撃した。彼らは運動を黙らせようと、被害生存者たちの言動を文脈の外に取り出して混乱させた。

 


さらにやりきれないのは、保守言論が検察の起訴を利用して根拠のない疑惑を噴出させるために再び爆弾を装着した。保守言論は言論仲裁委員会の指示を無視し、「会計不正」の疑惑を繰り返し、「ほとんどの容疑は起訴された」というフレームを被せて運動を貶めた。


 

正義連は<慰労金>など、真実の謝罪や法的賠償責任を回避、または日本軍性奴隷制問題について沈黙させようとする試みと闘ってきた代表的な団体だ。2015年、安倍首相と朴政権が主導する2015年の日本軍「慰安婦」合意(以下、2015年日韓合意)後、日本の右翼だけでなく、韓国の右翼、親植民地主義者は、正義連と日韓合意に反対する活動家たちを両国の外交関係を妨害する障害とみなした。2015年日韓合意当時、生存者らにお金を受け取れないよう妨害したなど正義連に対する無差別な攻撃と根拠のない主張が横行した。韓国の保守メディアは5月11日の記者会見で、正義連が提示した明確な説明、日韓合意破棄のための正義連の努力が込められた数多くの書類、そして2017年外交部タスクフォースの報告書などにもかかわらず、正義連が合意の未公開内容について知っていたというフェイクニュースを報道し、嘘を広めた。検察の起訴から4日後の9月18日、朝日新聞はユン・ミヒャンと正義連を批判し、2015年の日韓合意が「被害者中心主義」のために「再検討」しなければならないと主張した。2015年韓日合意を正当化し、正義を求める声を阻止しようとする保守言論、歴史修正主義による親植民地主義勢力らの政治的攻撃は看過できない。

 


私たちは日本軍性奴隷制問題解決のための運動に献身し、運動の継続を確実にするために努力した活動家たちと連帯する。私たちは、活動家や被害生存者らと連帯して、その活動と声を弱めようとする試みに対抗できるよう連帯する。私たちの連帯は、日本軍性奴隷制問題解決のために30年間、限りなく闘いを続けてきたユン・ミヒャン議員にも向けられる。ユン・ミヒャン議員と正義連に対する名誉棄損と不当な攻撃が続く間、バンディは正義のための運動に対する無差別的攻撃を目撃してきたものとして、そして日本軍性奴隷制問題の正義の解決と平和のための友としてともにします。

 

2020年9月25日。

バンディ


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[1]バンディは、韓国、日本、米国のフェミニスト研究者や活動家のネットワークです。バンディは韓国で日本軍性奴隷制問題を解決する運動に疑惑が提起される中、世界中の市民が運動と疑惑に関する真実にもとづく情報を集めるのが難しいとの懸念から形成された。バンディは、日本軍の「慰安婦」問題や関連運動について、世界中の「慰安婦」問題に関心を持つ人々のために、多言語で日本軍「慰安婦」問題および関連運動に関する批判的でグローバルな議論に寄与したいと考えている。


バンディブログ:https://bandieforjustice.blogspot.com/


                                  (訳:方清子)


〈原文〉

https://bandieforjustice.blogspot.com/2020/09/2020-5-7.html