チョン・ジユン編集委員 市民メディア・ミンドゥルレ

   入力 2023.07.30 15:00 修正 2023.07.30 19:40




・信じていた人々に裏切られた正義連活動家たち


・進歩メディアとキム・ギョンユル、ソ・ミン、チン・ジュンゴン、カン・ジュンマンの加勢


・民主党、李洛淵体制になって尹美香と「手切り」


・根拠のない不動産投機疑惑で離党まで


・正義党ユ・ホジョンら左派陣営も大部分が非難のみ


・いつまで守旧右派の魔女狩りに加担するのか




尹美香議員(中央)210日、西部地裁で「正義連後援金横領」事件の1審判決を受けた後、カン・ミンジョン議員(左)と共に裁判所から出て来た。2023.2.10.聯合ニュース

 



[尹美香への魔女狩りを振り返る] ② 進歩改革陣営の無気力と責任

 


 周知のとおり、尹美香議員は既得権右派と特権カルテル、族閥・商業メディアのターゲットとなり攻撃を受けた。記者たちのペンとカメラ、著名人たちの舌は、刃や銃弾のように尹美香議員の全身を隅々まで切り刻み、無数の傷を残した。しかし尹美香議員と正義連活動家たちにとって、それ以上に痛かったのは味方だと信じていた人たちの反応だった。




 尹美香議員は「あの時、進歩系メディアだけでなく進歩人士、進歩団体もみんな(私を)疑いました。私が好きだった人たちもみんなそうでした。彼らがSNSで発信する言葉が全部目に入ってきました」(民衆の声、2023.2.22.)と振り返る。カン・ギョンラン正義連連帯運動局長も同じような記憶を持っている。




 「『尹美香』が飛び火するのではないかと近づかなくなった人、『もしもメディアが書いている内容が事実だったら』と正義連を疑った人、私たちのメディア対応がまずかったから市民社会全体に対する信頼が落ちたと怨む人たちもいた」(「『正義連誤報事態』はメディアに何を残したのか」討論会資料集、23.5.31.)

 



李容洙ハルモニが日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯の活動について批判したことに対応して、正義記憶連帯が記者会見を開いた(20205月)11日午前、ハン・ギョンヒ事務総長が発言しながら涙ぐんでいる。2020.05.11. 聯合ニュース

 




 実際に当時、ハンギョレと京郷新聞は初期にはそれなりに客観的な態度を維持し、事実を確認する態度をとったが、大々的な魔女狩りが本格化した後は、その圧力を受け入れて徐々にその雰囲気に乗る残念な態度を示した。当時、ハンギョレと京郷に載った記事のタイトルだけ見ても、それは分かる。

 



<ハンギョレ>


尹美香、マンション落札金2億ウォンの出どころ問題 (2020.5.18.)


夫には仕事を回し父親にはヒーリングセンター尹美香はなぜ? (2020.5.18.)


尹美香個人口座4つで10件の募金使用内訳なぜ公開できない (2020.5.19.)


[社説] 李容洙ハルモニの怒り、尹美香当選者が答えねば (2020.5.25.)



<京郷>


疑惑だけ膨らませた尹美香の釈明 (2020.5.18.)


「尹美香、慰安婦ハルモニを利用した」(2020.5.25.)


[社説]尹美香の長い沈黙、市民たちは理解できない (2020.5.28.)


市民団体「尹美香記者会見、説明不足」 (2020.5.29.)

 



 この他にもハンギョレと京郷は「尹美香と正義連のこれまでの運動方式にはこのような問題があった」という内部的な告発と批判の文を掲載し始めた。「尹美香1人体制が問題だった」「献身が毒杯になった」「疑惑は消えていない」といった主張と記事が続々と掲載された。




 またハンギョレと京郷には、尹美香議員を批判(非難)するキム・ギョンユル会計士、ソ・ミン教授、チン・ジュングォン教授、カン・ジュンマン教授らのコラムや、彼らの主張を引用する記事がよく掲載された。後に裁判の進行過程で政治検察とメディアが持ち出した疑惑がいかに根拠がなくメチャクチャなものだったかが明らかになると、族閥・商業メディアは全くそのようなニュースを報道しなくなった。


そしてこの部分においても、ハンギョレと京郷は特段、違う姿勢を示さなかった。改革メディアのこのような態度についてオ・テギュ元ハンギョレ論説室長は「自分たちは進歩陣営も公正に批判するということを誇示したいという一種の良い子コンプレックス」だと指摘する。



 「自分の側であっても誤りがあれば批判するのは、きちんとしたメディアであれば当然するべきことです。しかし、進歩系メディアが報道の過程でやっておかなければならない事実確認や検証をおろそかにして『良い子』になることにばかり力を注いだ結果、保守メディアがつくったフレームを強化する脇役に転落した。その代表的な例が尹美香報道問題だと言えます」(「『正義連誤報事態』はメディアに何を残したのか」討論会資料集、23.5.31.)




 これに加えて、検察特捜部と主要メディアの法曹チームが形成するネットワークの中で、検察が流し、メディアが写し書きし、誰かに烙印を押して追い込んでいくという枠組みから、ハンギョレや京郷も決して自由ではないという古くからの問題も作動したように見える。

 



不動産投機疑惑で共に民主党から除名された比例代表の尹美香議員(右)が(20216月)22日、国会本会議で民主党のチョン・チュンスク議員から慰められ抱擁している。2021.6.22.聯合ニュース

 



 尹美香議員をさらに苦しめたのは2020年の総選挙で自身を候補として迎え入れた民主党指導部と議員たちの沈黙と無視だった。李海讚(イ・へチャン)代表時代の民主党指導部はそれなりに魔女狩りに耐え抜こうとした。「あることないこと晒すような疑惑報道に屈服してはならない」という李海讚代表の発言は族閥・商業メディアの非難を浴びた。民主党内部でもキム・ヘヨン議員らは指導部を批判し、「尹美香との手切り」を求めた。




 このような圧力に対する屈服が目立ち始めたのは李洛淵(イ・ナギョン)代表体制からだった。魔女狩りが長期化するに伴い、民主党指導部は尹美香議員を守るのではなく「手を切ろう」とする方向に動き始めた。支持率を管理する過程で、適当に妥協して問題を繕おうという安易な気持ちが働いたようだ。




 族閥・商業メディアと、騒乱と関心を追いかける知識人たちが尹美香議員を苦しめ攻撃する中、防波堤になって立ち塞がったり、一緒に雨に打たれようとする民主党議員は見当たらなかった。大部分は背を向け、あるいは距離を置き、キム・ヘヨン議員、チョ・ウンチョン議員、パク・ヨンジン議員などはむしろ尹美香議員を攻撃する側に回った。




 そして20209月に検察が尹美香議員を在宅起訴するや、民主党指導部はまず党員権を停止する重い懲戒を下し、距離を置き始めた。それが終わりではなかった。尹美香議員にはより苛酷で大きな試練が迫っていた。始まりは20213月に韓国土地住宅公社(LH)職員らが内部情報を利用して不動産投機をおこなった疑惑が暴露された「LH事件」だった。




 同事件の波紋が広がる中で、民主党は所属議員全員の不動産全数調査を国民権益委員会に依頼した。その結果、12名が疑惑の対象者として浮上、尹美香議員がその中に含まれていた。ところがよく調べてみると、これは全くデタラメなものだった。義母が暮らしている慶尚南道咸陽のマンションが尹議員の夫の名義になっていることが引っかかったのだが、田舎のたかだか10坪の安いマンションが不動産投機と関係あるはずがなかった。




 ところが民主党は「疑惑を解いて戻って来い」と言い、疑惑対象者たちを離党させる際、尹美香議員も除名にした。結局、尹美香議員はすでに数多くの烙印が押されていた額に、さらに「不動産投機」というスティグマまで刻まれて、民主党から追い出された。




 その後、疑惑が解けた他の議員たちが全員復党する過程においても、民主党指導部は警察の捜査により容疑なしと確認された尹美香議員だけは最後まで復党させなかった。何よりも最も過酷な瞬間は、大統領選挙運動期間である2022年初に訪れた。




 民主党の選挙運動を指揮していた宋永吉(ソン・ヨンギル)代表が「民主党の刷新と政治改革案」という名分で民主党のイ・サンジク議員、国民の力党のパク・ドクフム議員と共に尹美香議員の議員除名を迅速に処理する意向を示し、国民の力党に同意を求めたのだ。




 宋永吉代表は検察とメディアがつくり出した烙印と偏見に基づいて尹美香議員の除名を主張した。国会を足場に日本軍「慰安婦」問題の解決をはかろうとした尹美香議員の期待は粉々に崩れ、民主党に完全に手を切られてボロ切れのように捨てられる形になった。



 

前回の大統領選の際、国会議員除名の危機の中でも、共に民主党の李在明候補支持を宣言した無所属議員の尹美香議員。2022.2.19 尹美香議員のFacebookから

 



 残念なことに、民主党よりもさらに左に属する進歩(左派)陣営や労働運動の中からも、特段これらと違った声は出てこなかった。正義党のユ・ホジョン議員は「尹美香と正義記憶連帯を擁護」したことが民主党の「身の毛がよだつネロナムブル(自分に甘く他人に厳しい姿)」だと非難した。




 民主党の宋永吉指導部が議員除名を推進している状況で「尹議員と正義連(正義記憶連帯)が歩んで来た30年の運動の歴史が民主党の政治工学的な計算の犠牲にされてはならない」と進歩党の金在姸(キム・ジェヨン)大統領選候補の選挙対策委員会が批判したことくらいが、珍しく出た反対の声だった。




 実際、急進的左派団体の中でも、このような声はほとんど出なかった。むしろ尹美香議員を非難し攻撃する声はあった。例えば「革命的社会主義」を自称する団体「労働者連帯」は当時、「会計をいい加減に運営し釈明もきちんとしないこと自体が、この運動の支持者とハルモニたちに対する冒涜だ」とし、従って「魔女狩りと見ることはできない」と述べた。




 結局、問題は魔女狩りが起きるたびに現れる、より根深く構造的な反応にあった。溺れる人を目の前で見ながら腕組みしたまま「あの人がこれまでにどのような過ちをおかし、欠陥があったのか」を探そうとする人々、「あの人が助けてくれと悲鳴を上げながらどんな失言をするのか」「あの人がどの党派に属しているのか」を突き止めようとする人たちが必ず現れるという問題だ。




 今回も、「尹議員はなぜ進歩政党ではなく民主党に入ってこんな攻撃を招いたのか」「これまでの正義連と尹議員の運動の方法にはかくかくしかじかの問題があった」「メディアと検察の攻撃への対応に間違いとミスがあった」という指摘と批判があふれ出た。代表的なものとして『メディア今日』は「あふれ出る批判に右往左往した」と言い、「尹美香と正義連の『メディア対応』は失敗だった」と結論づけた。




 しかし問題は、あらゆる人間は足りない点があるから間違いやミスをおかし、何らの欠陥もない人だけが魔女狩りの標的にならずにすみ、そんな人だけが守られるということでもないということだった。もちろん、今回出た批判や指摘の中には妥当で一理ある内容もあった。




 「正義連はその社会的地位に見合うように、もっと徹底的で透明な会計管理をしなければならない」「被害者の声をもっと傾聴し意思疎通しなければならない」「問題を反日と親日に単純化してはならない」「運動の大義を楯に様々な意見や批判を押さえつけてはならない」等々。




 そかしそれらは族閥・商業メディアと政治検察の集団暴行を受けて喘いでいる人たちにとっては、浴びせかけられる石つぶてに混ざる一部にしか感じられない。それゆえ、ありがたい忠告ではなく、もっと痛い傷になった。その批判が妥当で、事実に基づいたものかどうかは核心ではなかった。




 検証されていない疑惑をより分けて、当事者たちの釈明に照らして確認しながら待つことが非常に重要だったのだ。結局、当時必要だったことは、降り注ぐ雨に打たれる人々に近づいて一緒に雨に打たれ傘を差しかけて慎重に対話を試みることだった。

 



20206月)10日午後、ソウル鍾路区の旧駐韓日本大使館前で開催された第1443回日本軍「慰安婦」被害者問題解決のための定期水曜デモで、正義連の麻浦区シムト「平和のウリチプ」孫所長を追悼する額と花束が置かれている。2020.6.10.聯合ニュース

 




 正義連の運動にも当然ながら成果だけではなく誤謬や不足点はあった。資本と権力に立ち向かう長くて至難な闘争を近く中からのぞき見れば、そこには遠く外から見た時のように、正義に満ちた純潔な人々と、美しい連帯だけがあるわけではない。




 あらゆる人間的な欠陥や葛藤、互いに与えた傷や問題点も、ないはずがない。いかなる運動であれ結局は不完全な人間が八方にぶつかりながらつくっていくものだからだ。運動というものは、そのような問題も痛みをもって振り返り、共に正し、懸命に解決していく過程にならざるをえない。




 ところが今回の魔女狩りは族閥・商業メディアと政治検察が市民社会運動のより多くの省察と発展を手助けし、市民社会団体の会計の透明性を高めるという意図で開いてくれた空間などでは決してなかった。尹美香議員は「完全無欠の活動家ではなかったから/進歩政党ではなく民主党に行ったから/衛星政党という誤った方法に参加したから」魔女狩りをされたわけではない。




 したがって、これが成功すれば直ちに他の社会運動団体や活動家たちへの攻撃の罠になる可能性があった。実際に尹錫悦政権と国民の力党は「尹美香と正義連に見られるように」と言いながら市民社会団体に対する様々な攻撃に拍車を加えている。




 「検察による尹美香起訴後、大統領選を通して検察政権が樹立されると、多くの市民運動家たちが心配した。『尹美香基準なら我々もやられる』。その基準というものは、特別なものではない。10年前であれ、千ウォンであれ、関係なくかき集めて合算すれば1千万ウォンになり、1億ウォンになる。心配したとおり、領収証を出せという厳しい権力の通報が全国の労組に届き、市民団体の補助金内訳は顕微鏡で隅々まで調べ上げられている」(「記者手帳:尹美香を語るべき理由」民衆の声、2023.2.22.)




 

パン・ムンギュ国務調整室長が7日午後、ソウル鍾路区の政府ソウル庁舎で開かれた「民間団体の不正」後続対策づくりのための中央行政機関監査官会議に出席して発言している。この日の会議で出席者たちは、先週大統領室が発表した民間団体の不正と関連して、補助金の返還、告発及び捜査の依頼、報償金などの制度改善、補助金予算の調整、追加監査計画などの後続措置事項を議論する。2023.6.7.聯合ニュース

 



 このような魔女狩りは、現在のように多くの人々が無視し、沈黙すればするほど、曺国(チョ・グク)教授や尹美香議員にとどまらず、果てしなく新しい犠牲者をつくり出しながら続くだろう。中世の魔女狩りも、嘘の自白や魔女の名指しをして魔女狩りに加担することを拒否する人が一人二人と増えていく中でやっと中断された。




 従って検察-メディア-保守勢力の「曺国狩り」や「尹美香魔女狩り」等を共に阻止することが重要だった。曺国教授や尹美香議員の主張や運動方式について批判的だったり同意できない部分があったとしても、もともと何かよくない感情を持っていた場合であっても、背を向けてはならなかった。

今後は同じ過ちを犯さないためにどうすればいいのか、我々みなが考える必要がある。




(訳 梁澄子)




〈原文〉

https://www.mindlenews.com/news/articleView.html?idxno=4386





[尹美香への魔女狩りを振り返る] ①根と背景 尹美香への魔女狩りは日韓右翼の合作だ

https://www.restoringhonor1000.info/2023/08/blog-post.html


[尹美香への魔女狩りを振り返る] ③ 終わりのない嫌がらせとイバラの道の3年 マスコミの仮面をかぶった人間狩り...惨劇だった尹美香の報道

https://www.restoringhonor1000.info/2023/08/3.html