「慰安婦」問題に取り組んでいる私たちには、夏は超多忙な季節です。特に814日は1991年に韓国の金学順さんが初めて「慰安婦」被害者として名乗り出た日で、「慰安婦」メモリアルデーになっているため、日本各地や韓国で記念行事やイベントが行われます。特に今年は、「慰安婦」問題にとって忘れてはならない「河野官房長官談話」が発表された199384日から30年目の節目の年になったので、意気込んでしまいました。




 被害女性たちが次々と名乗り出てから、日本政府も調査や聞き取りを行って発表したのが「河野談話」でした。


それは、慰安所の設置・管理・移送には軍が関与していたこと、慰安所で強制された生活は痛ましいものであり、「お詫びと反省の気持ちを表明する」といった内容です。

慰安所に関して軍は「関与」どころではなく、軍が直接行ってきたものでしたが、その後はどの政権も「河野談話」を継承すると表明しました。今の岸田政権でも、松野官房長官は83日の記者会見で「全体として継承している」と述べています。




 しかし政治家の中には、「河野談話」で語られている「お詫びと反省」とか「歴史研究や教育で永く記憶にとどめ」とは真逆のことを発言する人が何人もいました。


 特に安倍元首相は、「強制連行の証拠はない」とか「性奴隷ではない」「国家責任はない」と主張して、「慰安婦」問題をなかったことにしようとしました。ですから被害女性たちはいくら「お詫びと反省」などと言われても、信じることができなかったのです。そのため彼女たちは、「慰安婦」問題の真の解決を求めて、日本政府との闘いを生涯、続けることになりました。




被害女性たちの想いを継いだ私たちも、国内外の市民連帯の力で真の問題解決を目指さなければなりません。政治を変えるだけでなく、政治家や政権の意向を忖度して「慰安婦」問題をタブー視し、ほとんど報道しないメディアも変えていかなければなりません。そうでないと、2015年末の「日韓合意」で両政府が「最終的・不可逆的な解決を確認した」と勝手に発表して、メディアも「これで一件落着」などと報じたので、「慰安婦」問題はもう終わったのではないかと思う人が増えるばかりです。




ただその一方で、「慰安婦」にされた被害女性たちは世界に大きなインパクトを与えてきました。性暴力の根絶や女性差別、性差別の撤廃など、女性の人権を確立するための動きを推し進め、それを受けて、国連の人権委員会や各国の議会も日本政府に勧告や決議を出すに至ります。

「#MeToo運動の元祖は『慰安婦』被害者」と言われる所以です。




日本政府は戦後一貫して、戦争や植民地支配での加害の事実を認めずに ひたすら隠蔽し、加害責任を自らに問うこともしてきませんでした。これは「慰安婦」問題だけでなく、今年で100年目を迎える関東大震災の朝鮮人・中国人虐殺についても同様で、この事実を歴史から消してしまおうとしています。小池都知事が追悼式典に追悼文を送らなくなったとか、東京都側が公共施設で虐殺に触れている映画の上映を禁じる…といったことが今でも起こっています。



私たちが歴史の真実に向き合い、自らの責務を果たし、それを次世代に引き継いでいくべきことは山のようにあるのです。