チョン・ジョンユン編集委員  市民報道・ミンドゥレ

入力 2023.08.03 19:30 変更 2023.08.04 10:15

 







・すべての言動に難癖をつけて「みんなで石を投げよう」と扇動

 

・「間違ってもゴメン」式の記事に無数の嫌悪コメントが群がる

 

・家族人質劇「無間地獄※1...最も悪質だった朝鮮日報

 

・伝染病のように広がる「レッテル貼り効果」の攻撃メカニズム

 

・尹美香の文章に込められた生々しい苦痛と思いやり


(※本記事は韓国語で音声で聞くことができます。)

音声   https://youtu.be/FQX8DmSTZ6I?t=11

 


正義記憶連帯の後援金流用容疑などで起訴された無所属の尹美香議員が2316日午前、ソウル市麻浦区西部地裁で開かれた公判に出席するため、法廷に向かっている。2023.1.6聯合ニュース

 



[尹美香への魔女狩りを振り返る]


終わりのない嫌がらせとイバラの道の3

 


20205月から6月までのクライマックスが過ぎた後も、財閥・商業メディアと魔女狩りは、その後2年以上、尹美香議員を自分らが必要に応じていつでも引きずり出せる首に鎖をかけた奴隷のように扱った。突然、尹美香議員を呼び出して顔に泥を塗りつけて、「ここのこの汚い魔女にみんな石を投げよう」と扇動する手口だった。このケースは多数あるが、その中で最も深刻で代表的だったのは次の3つの時期だった。

 



1つ目は2020年の年末だった。

当時、尹美香議員は2020127日に知人たちとささやかな食事の席を持ち、一緒にワインを飲みながら、吉元玉(キル・ウォノク)ハルモニの誕生日を共有して欲しいとSNSに投稿した。すると、「コロナ緊急事態の中、適切でない集まりを設けて、強引に吉元玉ハルモニを連れ出した」と集中的に攻撃し、非難の対象になり始めた。防疫指針を破ったわけでもなかったが、それは重要視されなかった。



 

今回も攻撃メカニズムは同じだった。

まず、朝鮮中央日報を筆頭に憎悪と罵倒の記事が殺到し、当時3日間だけで1,000件を超える記事が溢れ、ポータルサイトのトップまで上昇した。続いて、政治家や知識人の毒舌が飛び出した。「慰安婦ハルモニたちの生血を吸う吸血左翼の奇妙さ」〈国民の力党の許垠娥(ホ・ウンア)議員〉、「ハルモニをダシにしている」(ソン・ミョン教授)、マスコミ各社はこれらの発言を引用してまた記事を量産した。その記事には、口にもできないあらゆる悪口、罵倒、ヘイトが書き込まれ始めた。

 



2つ目は、ソウル市長、釜山市長などの再・補欠選挙があった20214月だった。

「国民の力」党の総選挙予備候補であり、極右ユーチューバーの余明淑(ヨ・ミョンスク)氏が「ケスジャクTV」に、「尹美香が病気のハルモニを引っ張り回して歌を歌わせた」と、ヘイト的な想像力に満ちた内容をアップした。すると、財閥・商業メディアはこれを拡大再生産した。

 


ソ・ミン教授は「尹美香は人類が生んだ最も残酷な悪魔」、「ジョンインの母親※2より尹美香が酷い」、「K悪魔の女帝・尹美香」と決めつけ、「尹美香を捕まえに行こう」と扇動し始めた。財閥・商業メディアはその極言をまたも記事化した。 さらに口にできないあらゆる悪口、罵倒、ヘイトと呪いのコメントが次々と続いた。

 



3回目は、政治検察が尹美香議員を起訴する際に作成した公訴状を政界に渡した202110月だった。 

その下らない仕上りの公訴状は、「国民の力」党の全珠恵(チョン・ジュヘ)議員に渡され、さらにそれを受け取った朝鮮日報は、それを書き写して、汚名と偏見を煽るように拡大、脚色して記事を流した。 そのため、一日中ヘッドラインを占めた「【単独】尹美香、慰安婦の後援金を横取りしてカルビを食べてマッサージを受け...」(朝鮮、2021.10.5.)という記事が誕生した。

 



朝鮮日報は今回も悪質だったが、「成功」した。当時、Naverで「尹美香」と入力すると、関連検索語として自動的に「カルビ」が表示された。魔女狩りには、政治検察官が公訴状に書いたこの一方的な主張が裁判の過程ですべて反論され、その反論の証拠が提出されていることは全く注目されなかった。

 


左から尹美香議員、金福童ハルモニ、吉元玉ハルモニ、孫英美(ソン・ヨンミ)麻浦シムト  所長※3が一緒にいた頃(写真出典:尹美香議員)



 

どうせ彼らは真実が重要ではなく、「魔女」の抗弁は聞く考えもなかった。これは公人に対する正当な検証と合理的な疑惑の提起ではなかったからだ。裏付けのない数々の疑惑が同時多発的にあちこちで提起された。黙っていれば疑惑は事実となった。釈明すれば被害者と闘う人になり、別の疑惑が提起された。一つ解明すれば、もう一つが提起され、反論の内容がまた攻撃される口実になった。

 



夫が、娘が、父親が引きずり出された(家族人質事件)。

「無間地獄」で喘いでいると、議員を辞職すべき後ろめたい悪人になっていた。あらゆることを疑惑と問題にして際限なく提起した。釈明をいくらしても、きちんと報道されなかった。尹美香議員のフェイスブックを何年分も調べ上げ、揚げ足を取って摘発し、娘のアメリカの学校まで追いかけ、尹美香の夫の人生をストーカーのように覗き見した。



 

一番呆れ返ったのは、尹美香議員の父親に対する攻撃だった。意義ある仕事をする娘を助けるために父親が仕事も辞め、安城シムトにあるコンテナに宿泊し、昼夜の警備と建物管理、清掃、修理、造園、庭の管理まで行い、月々の最低賃金ももらえなかったのは、娘である尹美香議員にとっては心痛み、申し訳ないことだった。

 



そのような劣悪な労働条件を耐え、後にガンまで罹り苦労した父親は、今や「親族不正」で「特恵」を受けた人物になり、娘は公開謝罪しなければならなかった。「尹美香、父に任せて7580万ウォン支給」というタイトルをつけた朝鮮日報は、7年間で7580万ウォンであり、1ヶ月の賃金が100万ウォンもないことを知らなかったはずがない。愛する娘の頼みを断り切れない父親でなければ、誰もこのような条件で受け入れない仕事だった。

 



おそらく尹美香議員は、一生懸命に議会活動をして誠実さを見せれば事態は良くなると期待したのだろう。実際、過去3年間、尹美香議員は非正規雇用と移民労働者の労働権、産業安全、女性人権、米軍基地、環境保護などの問題で、本当に献身的に努力する姿を見せた。しかし、マスコミはそのような姿をほとんど報道しなかった。むしろ財閥・商業メディアにとって、尹美香議員が国会でそのような活動をすることがもっと嫌だったのだろう。

 


無所属の尹美香議員が23213日午後、国会議員会館第8懇談室で開かれた「退役競走馬の福祉改善のための国会討論会」で開会挨拶をしている。左から2番目から朴洪根(パク・ホンギュン)動物福祉国会フォーラム共同代表、共に民主党のソ・テギョン議員。2023.2.13.聯合ニュース

 



結局、問題は標的になった人を厳しく残酷に批判し、噛みつくほど、より多くの富と権力が与えられ、それが職業と生計になった構造と制度の存在だった。政治検察と、彼らと癒着した財閥・商業マスコミがそれだった。彼らは李東官(イ・ドンガン)や韓東勳(ハン・ドンフン)のような人々を決してターゲットにしない。これはその構成員の個性や意志よりも、構造的な問題である。

 



だから朝鮮日報は、「ニセ進歩派の偽善の悪臭が鼻を突く」などと言いながら、尹美香議員や曺国(チョ・グㇰ)教授をその類例として挙げる社説とコラムを掲載した。保守右派的でない知識人でも「既得権になった民主党と586世代※4の偽善と腐敗」を言及する分析と主張をして、いきなり尹美香議員と曺国教授をその類例としてあげつらった。

 



すれ違いざまに、そんなヘイトを投げつけられることが当事者にとってどれほど大きな傷になるのか、少しも悩んだ形跡は見られなかった。これがまさに「スティグマ効果※5(レッテル貼り)」だった。一度汚名を着せられたら、あなたも私も何も考えずに無心に石を投げ、相手がどんな痛みを感じるか少しも想像しようとしなかった。感情は簡単に伝染するので、魔女狩りはその標的にされた人を憎悪する感情を社会に広めた。

一斉に誰かを憎悪して呪えば、多くの人がそれに同調する。

 



そうすると、それに同意しない人は口を閉ざすのが難しくなり、そうすればするほど憎悪の声はさらに大きくなり、その人を非難する言葉はより信頼されるようになる。その人の問題点やミス、過ちについての情報だけがますます多く、頻繁に露出され、そうすればするほど、汚名と偏見はさらに強化される。そうすると、今度はその人が非人間的な扱いを受けても、人々は「そんなものか」と鈍感になってしまう。

 



マスコミ(そして検察)の標的にされた人と、その家族や知人まで奪われる過程を何度か目撃した人の心には、得体の知れない恐怖が染み込み、標的にされた人とは距離を置くようになる。民主党と改革メディアでも「尹美香や曺国とは一線を引いて距離を置き、自分たちに火の粉が降りかからないようにしよう」という政治工学的な考えが勢いを得た理由だった。

 



このような魔女狩りとレッテル貼りの結果は、民主党の古参政治家よりも市民社会の声を反映する尹美香議員の口に猿ぐつわをはめ、手足に枷(かせ)が付けられることになった。

過去3年間、「慰安婦」被害者に対するマーク・ラムザイヤー教授※6の暴言問題、慰安婦責任賠償2次訴訟に対する司法部の反歴史的な決定などにおいて、尹美香議員はまともに声を発することができなかった。

 



また、各種改革法案に名前を挙げるのも難しい状況になった。名前を出すと、すぐに「尹美香が発議に参加した奇妙な法案」という汚名を着せられるからだ。魔女狩りの人たちは「尹美香はいくら剝いても疑惑が出てくるタマネギ」と言ったが、真実は彼らが尹美香議員の人格と魂を鋭いナイフで際限なく剥ぎ取ったということだった。血がドクドクと噴き出ているのに、肉を剥ぎ取り、骨をバラバラにしても止めなかった。

 



魂と人格をタマネギの皮だと言って剥ぎ取る過程。それを見ている私も悲惨で苦しいが、その当事者と彼らを愛する人たちの心情はどれほどか想像もできなかった。検察のデタラメ公訴状を基に朝鮮日報が「カルビとマッサージ」とレッテルを貼って攻撃していた202110月、尹美香議員の妹がSNSに投稿した文章は、その心情を鮮明に見せてくれた。




下のこの文章を見ると、尹美香議員を愛する両親とその家族の心情が過去3年以上の間、どれほど地獄だったかある程度推測できる。

今、私たち皆は心に刻印していた境界を壊して、自分がこの立場と心情だったらどうだろうと想像してみるべきだ。私たちすべてが心に刻まれた境界を壊し、もし自分がこんな境遇におちいったらどうするだろうと想像すべきだ。その境界破壊と想像力は、魔女狩りに共に立ち向かうための重要な出発点になるだろう。



検察が正義の記憶連帯の元理事長である共に民主党の尹美香議員を業務上横領・背任など計8つの容疑で書類送検した2020915ソウル市麻浦区の「戦争と女性人権博物館」の壁に貼られた蝶形のメモ2020.9.15聯合ニュース

 



〈尹美香議員の妹がSNSに投稿した文章


「母と父はニュースが出るたびに日常が壊れて、夜、眠れないお母さんニュース見ないでくださいコメントを読まないでくださいと言っても、自分の子供のことだから仕方ないスマートフォンの世界が恨めしい。今日も元気に一日を始めようと音楽もかけようとパソコンをつけたらインターネットに接続するとすぐにポータルニュースの最初の行に「尹美香」の名前が見えるダメだインターネットを閉じてと頭の中で警告が鳴るが、思わずクリック悪意に満ちた書き込みに、本当に腹が立つ

 

母から電話がかかってくるねえこれは何なのよ?お母さん、新しいことじゃないわよ お姉ちゃんの公判で検察官が何千とか何万とか言ってたことバカバカしくて法廷で笑い声が上がったあのことそれを検察が流してあいつらが局面転換のために報道しているんだから絶対に気にしないでね それでも気にならないわけがない

 

仕事が終わる頃、母は心配とため息で喉を詰まらせながら電話をかけてきてその側にいる父は母がニュースを見てコメント読んで心配し続けることに逆ギレしているお父さんも心配な気持ちを表に出さずわざと無関心なふりをしているのにお母さんがずっと心配しているから逆ギレするのでしょう

 

二人はあんなに喧嘩をしながらも、姉の心配には一丸となるお姉ちゃんはご飯を食べたのかな?どれだけ寂しい思いをしているのかな?胸が焼け付いているだろうに...しっかり耐えなければならないのに...と言いながら、父母が一日をどう過ごしたのか目に浮かぶ

 

私の姉は今頃おそらく幽霊のような姿で、眠れない眠りを求めているのだろう。知っているのは耐えること黙々とすべきことをすることしか知らない姉だからこれから続く無数の日々も黙々と耐えて与えられた仕事をこなしていくのだろう。私は、生涯こうして生きている姉が馬鹿みたいで涙が出る。」





(訳 権龍夫)

 

 



(訳注)

1 「無間地獄」:仏教でいう八大地獄の一つで、最下底の地獄。絶え間なく厳しい責苦を受ける所。


※2 ジョンインの母親:昨年に生後16か月のジョンイン君を虐待して死なせた母親のこと。裁判で懲役35年の刑が宣告された。


※3 孫英美・麻浦シムト所長:献身的にハルモニをお世話していた。尹美香・正義連魔女狩り事態の中で過酷な政治検察の取り調べを受け、極端な選択に追い込まれ、この世を去った。


※4 586世代:現在50歳代で、1980年代の民主化闘争に加わった1960年代生まれの人たちのこと。


※5 スティグマ効果:ある個人の属性や特徴に対して、その周囲の人が否定的な意味づけをして、不当な扱いや差別すること。


※6 J・マーク・ラムザイヤー教授の暴言問題:「慰安婦」は契約売春婦だったとして「性奴隷」を否定する論文を発表した。




〈原文〉

https://www.mindlenews.com/news/articleView.html?idxno=4459&fbclid=IwAR0TsoXnaQ4CeOnhq-pOD-o5lOCI_tRZ9rQ_VWbPITCLSLNxhJCnlCipoSM

 



[尹美香への魔女狩りを振り返る] ①根と背景 尹美香への魔女狩りは日韓右翼の合作だ

https://www.restoringhonor1000.info/2023/08/blog-post.html


[尹美香への魔女狩りを振り返る] ② 進歩改革陣営の無気力と責任 進歩陣営と民主党は尹美香を守るべきだった

https://www.restoringhonor1000.info/2023/08/blog-post_17.html