2021.12.20イ・スンフン記者


戦争と女性の人権博物館登録時の担当公務員「学芸員の常勤如何は重要ではなかった」



 「戦争と女性の人権博物館」を運営する際、国庫補助金を不正に受領したとして起訴された尹美香無所属議員に対する1審裁判で、ソウル市の担当公務員らが検察側証人として出廷したが、むしろ尹議員側に有利な証言を次々とおこなった。すると検事が法廷で同じような質問を繰り返して証人を追い詰める様子を見せ、弁護人が「取り調べでもしているのか」と抗議する一幕もあった。また、証人の一人は検察の聴取時には尹議員側に不利な陳述をしたが、その背景について、事実関係を明確に知った上で陳述したわけではないと認めた。








「当時、学芸員が常勤しているかどうかは重要ではなかった」
決定的な証言出ると……検察、激高した声で質問

尹議員側弁護士「証人の取り調べでもしているのか」と抗議



 

 ソウル西部地裁刑事11部(裁判長ムン・ビョンチャン)は17日、西部地裁303号法廷で尹議員らの補助金管理法違反、詐欺等の容疑に関する第6回公判を開いた。尹議員は、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の代表として勤務していた2013年から2020年まで「戦争と女性の人権博物館」を運営し文化体育観光省等から合計で約3億ウォン(訳注;約3千万円)の国庫補助金等を不正受領した容疑で裁判にかけられている。



 この日の公判では、検察側の証人として2013年「戦争と女性の人権博物館」がソウル市に博物館登録申請をした当時、当該業務を担当していたソウル市の公務員Aさんが出廷した。先月26日の公判に出廷したソウル市の公務員Cさんは、2020年以降に博物館の登録と補助金支給業務を担当した人物だったため、過去にどのような手続き及び基準で博物館の登録と補助金支給がおこなわれたのかについて知らなかった。一方、この日公判に出て来たAさんは直接、「戦争と女性の人権博物館」登録申請を受け付け、現場調査にも出かけた公務員であるため、核心的な争点について答弁できる証人である。




 この日の証人Aさんの法廷陳述には、容疑があると見なした検察の立場に正面から反する内容があった。

 補助金管理法違反・詐欺容疑に関する公判では、「尹議員側が2013年頃に戦争と女性の人権博物館の登録申請をした当時、博物館の登録要件である学芸員保有条件を満たしていたのか」が核心的な争点になっている。




 尹議員側は、2013年に博物館の登録をおこなった当時、学芸員1名が戦争と女性の人権博物館の学芸員になることに同意し、関連書類を揃えて博物館登録手続きをおこなったため、学芸員保有用件を満たしていたという立場だ。一方、検察は「学芸員を保有していた」ということは「常勤学芸員がいた」という意味と見なし、尹議員側が常勤していない学芸員を常勤しているかのように欺して、博物館の登録完了後に各種補助金を不正受領したと見ている。




 これに対しAさんは「学芸員が常勤しているかどうかは(博物館登録において)決定的な事案ではなかった」と証言した。裁判官が改めて証人の答弁の趣旨を確認するためにおこなった質問に対しても、Aさんは「(学芸員が)常勤かどうかが核心的な事案だったとしたら、文化体育省からも指針が降りていただろうし、書類用件でも(4大保健の加入など常勤関連)証明書類が別途必要だっただろうし、博物館の現地調査でも審査委員たちがその部分について確認作業をしただろう」とし、当時、常勤かどうかを確認しろという文化体育省の指針等はなかったと証言した。




 当時の基準では、提出した履歴書等で学芸員を保有しているかどうかさえ確認できれば博物館の登録要件を満たしていると判断したという意味と解釈される。




 Aさんの証言は、先月26日の公判で弁護人側が示した文化体育観光省の2017年「博物館及び美術館の登録業務指針」ともつながる。同指針で、学芸員が博物館の常勤かどうかの評価項目は「定量評価指標(最低用件)」事案ではなく「定性評価補完」事案だった。4大保健内訳など常勤かどうかを確認する資料は定性評価補完基準要件にだけ書かれており、最低用件事案には単に「学芸員1名以上」とのみ記されている。学芸員が常勤か非常勤かに関係なく確保されていさえすれば博物館登録の最低要件は満たされていると解釈できる余地がある部分だ。




 また、国内のいかなる法や施行令にも博物館登録要件として「常勤する学芸員がいなければならない」という明示的な規定はないとされる。




 上記のようなAさんの証言が出ると、検事は同じ質問を繰り返しおこなった。常勤と保有の意味が分かるかと質問したかと思うと、やや激昂した声で「証人! 証人が博物館登録業務をおこなうために現地調査(書類を)作成したことに間違いないですね」と責め立てたりもした。これに対し尹議員側の弁護人が「取り調べをしているみたいだ」と抗議する場面もあった。



 裁判官も反復的な質問が多すぎると検察の尋問を制止した。



 但し、Aさんは「学芸員保有」をどう定義するのかについてやや曖昧な答弁をおこなった。Aさんはアルバイトまたは時々諮問を受ける程度ならば保有していたと見ることは難しいという趣旨の発言をおこなった。




 また、博物館の登録審査過程でAさんが作成した現地調査書類に戦争と女性の人権博物館に学芸員が常勤していると記載したことと関連して、Aさんは「任意に作成したわけではない。電話などで聞いて記載したと思う」と述べた。正確には思い出せないが、任意に記載したとは思えない、聞いてみて記載したと思うという趣旨の答弁だ。当該書類は、Aさんが博物館登録業務を担当する前から使用していたもので、「専門職員確保の有無」を記載するようになっており、具体的な項目としては△学芸員確保の有無、△学芸員常勤の有無に分けて記載するようになっている。




「違法」と陳述した別の公務員

「検事の質問内容に基づいて返答したもの」



 この日の公判では、2020年に私立博物館の補助金支給関連業務を担当していたソウル市の公務員Bさんも検察側の証人として出廷した。



 Bさんは検察での聴取の際におこなった陳述は正確な法的判断または諮問を受けておこなったものではなく、自身の考えだったと述べた。また一部、尹議員側に不利に適用される陳述について正確な事実関係を分かった上で述べたものではないと答えた。



 Bさんは検察側の尋問に対し「尹議員側が、学芸員がいるかのように欺して博物館の登録申請をおこなった」と前提した上で「学芸員がいないと知っていたら補助金支給はしなかったし、登録を取り消すよう権限のある人に知らせるか、誰が見ても明白に登録が無効ならばすぐに排除しただろう」と述べた。



 しかし、尹議員側の弁護人が「戦争と女性の人権博物館を運営中に学芸員が不在だった状況を補助金事業の現場調査審査委員たちが知っていた」ことを示す審査資料を提示すると、Bさんは「他の学芸員を採用するまでに救済期間があるものと認識している」と述べた。これに対し弁護人が「一時的に学芸員がいないという理由で補助金支給を取り消したケースを知っているか」と質問すると、Bさんは「知らない」と返答した。



 またBさんは「博物館登録申請時に学芸員が必ず常勤していなければならない」という趣旨の陳述をしたことがあるが、これについても「法律諮問などの根拠をもって陳述したのか」という弁護人の質問に「いや、自分の考えを述べたものだ」と返答した。「常勤していないという理由で補助金支給をしなかったり返還させたりしたことがあるか」という問いにも「ない」と答えた。



 Bさんは検察の聴取で「戦争と女性の人権博物館の博物館登録申請過程で明白な違法があった」という趣旨の陳述をおこなったことについても、「当時、学芸員がどのような形で挺対協に合流して、どのような仕事をしていたのか分からない状態で答えたものか」と尋ねる弁護人側の質問に「博物館に勤務してもいないのに(勤務しているかのように欺した)、そんな記憶があって違法だと答えたのだと思う」と述べ、「そのような記憶は学芸員から直接聞いた話なのか、あるいは報道内容だったのか」という質問には「検事の質問にそのような内容があった」と返答した。



 一方、今月24日は1審裁判の分水嶺になると予想される。この日に、戦争と女性の人権博物館登録時の学芸員が検察側の証人として出廷する。

(訳 梁澄子)



〈原文〉 

https://www.vop.co.kr/A00001605581.html