チェ・ジヒョン記者  「民衆の声」2023-02-09



 

尹美香無所属議員




日本軍性奴隷問題解決のための正義記憶連帯(旧韓国挺身隊問題対策協議会)後援金を横領したとして裁判にかけられた尹美香国会議員が10日に裁判所で判決を受ける。起訴されてから約25ヶ月。数ある疑惑のうち、起訴されたのはごく一部であり、それについても尹議員はすべてについて無罪を主張しており、裁判所の判決が注目される。


 

一瞬にして、悪質な犯罪者として烙印を押された尹美香

家族や知人まで巻き込まれたが、ほとんどが「嫌疑なし」と処理

 

挺対協代表と正義連理事長を務めた尹議員は、20205月に保守派の市民団体から詐欺と横領の罪で告発された。尹議員が国会議員として選出された直後のことだった。彼らの告発のきっかけは、日本軍「慰安婦」被害者である李容洙ハルモニの正義連を批判する記者会見だった。当時、ハルモニは正義連が後援金を受け取って日本軍「慰安婦」被害者たちに適切に支給しなかったという趣旨の主張を繰り広げた。

 


それによって、長い歳月日本軍「慰安婦」被害者たちの名誉回復のために尽力してきた尹議員は一瞬にして「被害者のお金を盗んだ泥棒」に追いやられた。尹議員と正義連に対する検察の重箱の隅をつつくような捜査が行われ、無差別な報道があふれ出た。尹議員だけでなく、彼女の家族や知人も不正疑惑と非難の対象となった。

 


しかし、これら数々の疑惑の多くは嫌疑なしで処理され、起訴すらされなかった。正義連の寄付金収入のうち、被害者に直接支援事業として使われていないお金を流用したという疑惑が起訴すらされなかったのが典型的な事例だ。正義連は寄付金を被害者への直接支援だけでなく、追悼、教育、広報、奨学金事業などの多様な事業にも使用し、これらについて問題がないことが確認されたわけだ。

 


尹議員が公金を流用して娘の留学費用やアパート購入にあてたという疑惑も嫌疑なしとして処理された。娘の留学費用は尹議員夫婦の勤労所得と夫の刑事補償金などで賄われており、アパートも定期預金と知人から借りたお金で購入されていたことが明らかになった。尹議員が父親を正義連付設機関である「安城ヒーリングセンター」管理者として形式上の登録をして、賃金を与えて背任したという疑惑も嫌疑なしとされた。尹議員の父親が実際に働いていたことが確認されたためだ。

 


尹議員が日本軍「慰安婦」被害者の葬儀費用を横領したという疑惑も、支出の内訳を確認した結果、真実ではないことが判明し、日本軍「慰安婦」被害者に和解癒し財団の慰労金1億ウォンを受け取らないように強要したという主張も証拠がなく嫌疑なしで処理された。それ以外にも、国民権益委員会が提起した義母の不動産名義信託疑惑、日本軍「慰安婦」被害者である吉元玉ハルモニに対する虐待疑惑なども警察の捜査過程ですべて嫌疑なしとして終結された。

 


国家事業を忠実に履行したのに、無理やり文句をつけて捕まえて起訴を強行した検察

 

にもかかわらず、検察は尹議員と正義連実務責任者だった金某前事務所長に対する起訴を強行した。さまざまな疑惑が解消されたにもかかわらず、尹議員に対する「魔女狩り」が今日まで続いている理由だ。

 


これに対して尹議員は「無理な起訴」という立場だ。ほとんどの事件が説明可能であるか、制度上の欠陥によるものであるにもかかわらず、検察が無理やりに法の基準を押しつけているのだ。尹議員をめぐる多くの疑惑のうち、裁判に引き渡されたのは7件のみであり、実際には裁判過程でかなりの部分が証明されたものとみられる。

 


第一の嫌疑は、尹議員が正義連の付設機関である戦争と女性の人権博物館を自治体に虚偽登録し、国庫補助金を不正に受け取ったことだ(詐欺・補助金管理に関する違反、地方財政違反)。検察は、博物館が法律上博物館登録要件である「学芸員」を備えていない状態で、尹議員が担当公務員をだまして博物館登録し、これを利用して文化体育観光部とソウル市に助成金申請し、受け取ったと主張している。

 


しかし、裁判過程で明らかになった証拠と担当公務員の証言によると、学芸員を置かなければならないという具体的な基準は規定されていなかった。検察側が主張するように、戦争と女性の人権博物館には学芸員が常駐していなかったとしても、これを法的な問題にすることは困難だという指摘だ。また、正義連が補助金申請趣旨に従って実際に事業を遂行したことが文化部の資料などから確認された。博物館自体も優秀だとの評価を受けた。これらの事情からすると、補助金を不正に受給したとみるのは難しいという反論が出る。


しかし、博物館登録当時の状況をめぐっては学芸員と尹議員の主張が多少異なり、裁判所がそれらをどのように判断するかが嫌疑を決定するうえでの鍵になるとみられる。尹議員は「学芸員Aさんが博物館登録時、学芸員になってあげると許可してくれ、それによって、履歴書と学芸員証を送ってくれて登録した」と明らかにした一方で、Aさんは検察の捜査と裁判の過程で「参考用」として送っただけであり、博物館登録に自分の資格証が使用されることを知らなかったと主張した。

 


2つ目の嫌疑は、正義連が女性家族部事業に参加し、人件費の名目で受け取った国庫補助金を目的に従って使用しなかったという嫌疑(詐欺および補助金管理法に違反)。検察側は、正義連の活動家が女性家族部の事業である「日本軍慰安婦被害者治療事業」と「日本軍慰安婦被害者保護施設運営費支援事業」を実施し、受け取った人件費を正義連に回し、運営費として使われるようにしたことは、国庫補助金の不正受給とみなした。

 


しかし、裁判過程で、実際に当該事業を運営し、人件費を受け取った元活動家は、自らの「良心」に従って団体に「寄付」しただけだと証言した。既存の業務に加えて、ひとりで事業を遂行するのは負担が大きく、他の活動家たちと互いに助け合って協力したため、人件費を自分だけ受け取ることはできなかったというのだ。実際に仕事をして受け取った人件費をどのように使用するかをめぐって起訴したことそれ自体が過剰であると反論が出された。

 


3つ目は、後援会員から会費を受け取る際に事前に申告しなかったことだ(寄付金品の募集及び使用に関する法律違反)。寄付金品関連法によると、1000万ウォン以上の寄付を集めるには、事前に管轄の登録事務所に登録する必要があるが、検察は正義連が後援会員の募集をはじめ「ナビ基金後援金」、「博物館の後援金」、「ハルモニの米国遠征費」、さらには「金福童ハルモニ葬儀費(弔慰金)」を募集する際にそうしなかったと問題提起した。

 


しかし、不特定多数ではない後援会員から受け取る「後援会費」は寄付金品関連法適用対象ではないという指摘がある。検察は以前、2016年に挺対協に対する寄付法違反事件を調査した結果、挺対協が受け取ったお金は「後援会費」に該当し、寄付金募集行為はなかったと判断して不起訴処分とした。にもかかわらず、状況が変更したわけでもないのに今回再び同じ容疑で起訴することは、検察の公訴権乱用に他ならないというのが尹議員の立場だ。

 


そのほか、他の後援金募集もまた後援会員を対象として特別会費を募集したもので問題ないという立場だ。特に、予測が困難な死亡事件による葬儀費用募集をめぐって、「事前に登録しなければならない」という検察の主張は矛盾しているという批判も出された。



 

2020521日午後、寄付金横領疑惑などを取り巻く正義連捜査の一環として、被害者ハルモニのシェルターであるソウル麻浦区の平和のウリチプ家宅捜査が行われた。2020.05.21.

 


検察の論理によれば、10年間で1億を横領して1億を寄付するという矛盾した状況

 

4番目の容疑は、尹議員が正義連の資金を私的な小遣いとして使用した嫌疑だ(業務上横領)。口座やデビットカード、ATM引き出し方式で合計217回にわたって、合計1億ウォン相当を流用したと検察は見ている。一回で少なければ数千ウォン、多い時には数百万ウォンを使用した。

 


重要なのは、実際にどのように使用されたかを証明することだ。尹議員は古い領収書や写真など証拠を見つけなければならなかった。しかし、大多数は正義連の口座から自身の口座に送金するたびに何に使用したのか記録に残っていた。「〇〇ハルモニに贈り物」「海外ローミング」「〇〇ハルモニ・パンツ」「〇〇ハルモニ・運動器具」「〇〇ハルモニ・ランチ」「平和記念碑」などだ。これについて、尹議員は「先に支出、後に保存」であり、正義連だけでなく、ほとんどの市民社会団体、一般社会でも運営する方式であり、これを横領と見なすのは難しいと反論が出た。

 


尹議員は2011年から2019年まで正義連と金福童の希望に1億ウォン以上の寄付をしたことが確認された。検察側の公訴事実によれば、10年の間に1億ウォンを横領し、1億ウォンを寄付したという矛盾した状況だ。

 


5番目の容疑は、重い認知症を患っている日本軍「慰安婦」被害者である吉元玉ハルモニの心身障害を利用して吉ハルモニの賞金などを盗んだという嫌疑だ(準詐欺)。中でも重要なのは201711月頃に女性人権賞として受け取った1億ウォンの賞金の半分を「金福童の希望」という団体に寄付したのが本当に本人の意思に従ったものなのかどうかだ。検察はこれを吉ハルモニの健康状態を悪用した尹議員の強要による寄付行為だと見なした。

 


しかし、裁判の過程で吉ハルモニが自発的に賞金を寄付することができる健康状態であったという尹議員の主張を裏付ける一連の証拠と証言が続いた。尹議員の準詐欺行為が特定された後も、吉ハルモニは何度も日本軍「慰安婦」問題について公開的に発言していた。吉ハルモニは20205月に養子縁組の法的行為をとっていた事実も指摘された。専門医は、吉ハルモニは検察が主張するほどに意思決定を下すことができないような状態ではなかったと証言した。

 


残りのふたつの容疑はすべて「安城シェルター」と呼ばれる正義連の付設機関である安城ヒーリングセンターに関するものだ。検察側は、安城シェルターの敷地を挺対協が購入する過程で市場価格よりも高い価格で購入し、挺対協に物的損害を与えたため、尹議員に業務上背任罪に当たると主張した。しかし、検察は、尹議員が挺対協に「どの程度の損害を与えたか」を具体的には特定できない抜け穴を露呈した。さらに、敷地の購入は事業費を寄付した現代重工業と社会福祉共同募金組合の両方と協議した結果という点からも業務上背任とみるのは難しいという反駁も出された。尹議員の不正行為はどこからも検出されなかった。

 


あわせて検察は尹議員を公衆衛生管理法違反で起訴した。安城シェルターを管轄官庁に宿泊事業施設として申告していないのに宿泊施設と設備をそなえて約52回宿泊したというのがその理由だ。しかし、不特定多数の人々に開放された施設ではなく、事業の目的に応じて歴史教育、平和教育、人権教育の場として利用され、実費のみを受け取ったというのが尹議員の主張だ。さらに「52回」という公訴事実に重複が含まれていることが明らかになったため、遅ればせながら41回に修正された。これは、56か月で月に2回にも満たない水準だ。検察の推測通り宿泊業で金儲けをするためには、それを繰り返す必要があったが、むしろそうしなかったことが確認された。

 


尹美香「あまりにも辛い2年間、決して自己の利益を求めたことはなかった」

 

にもかかわらず、検察は裁判所に尹議員に懲役5年の刑を求刑した。同じく起訴された金前事務所長には懲役3年の刑を求刑した。尹議員と金前事務所長は最終陳述で、挺対協と正義連で活動しながら決して自己の利益を求めたことはなかったと述べ、裁判所に適切な判決を求めた。

 


尹議員は「毎週水曜日、駐韓日本大使館前、『平和路』では、水曜毎に『慰安婦で金稼ぐ尹美香を逮捕せよ』と書かれた大きな横断幕とあわせて金学順、金福童、吉元玉ハルモニを含む被害者に対するあらゆるヘイトと誹謗中傷、人権蹂躙のスローガンをあふれさせている」と述べ、「私個人の痛みは別として、私の事件によって起こったこうしたことをこの目で見るのがあまりにも辛い2年半だった」と語った。

 


尹議員は「犠牲者と活動家、そして日本軍『慰安婦』問題解決運動が経験しているこの苦難の時間を止めるために死を考えたりもした」とし、「でも、金福童ハルモニの死に直面して『希望になる』と言った約束、姜徳景ハルモニの最後の病院のベッドで交わした『ハルモニの分まで頑張る、信じてください』と言った約束、黄錦周ハルモニに、『ハルモニがいなくなっても、日本政府の謝罪を、絶対に受け取る』という約束を守らなければならないという思いで耐えてきた」そのために裁判で最善を尽くし、誠実に臨んできた」と語った。

 


尹議員は裁判所に「ハルモニが歩んでこられた人権運動家としての生、世界から英雄として、希望として評価された日本軍「慰安婦」被害者の活動が、自らの意思ではなく、非主体的に活動家によって引きまわされた運動として貶められることがないよう、被害者たちの人権と名誉が損なわれないよう支援してくださることを心よりお願いします」と訴えた。



(訳 方清子)