7月18日、朴振(パク・チン)外交部長官は林芳正外務大臣と韓日外相会談を持った。

これについて大韓民国の外交部は報道資料を通じて、朴振外交部長官が強制徴用判決に関連して、現金化がされる前に望ましい解決策が準備できるように努力すると言及した。
また韓日の外相は、この問題の早期解決が必要という認識を共有したと発表した。



  朴振外交部長官は韓日外相会談を前に、2015韓日「慰安婦」合意について「非常に重要なことは合意の精神だ」とし、「合意精神に立って解決方案を探す」と述べた。しかしすでに露呈しているが、「2015合意の精神」は被害者の人権と名誉回復ではなかった。



 過去30年間、国連などの国際社会は、日本軍「慰安婦」問題はアジア太平洋地域の少女と女性らに対する日本軍の人道に反する犯罪と規定し、日本政府に犯罪事実を認定すること、公式謝罪、法的賠償などを通じて被害者の名誉と人権を回復させることを勧告してきた。しかし大韓民国の外交部長官と日本国外務大臣が2015年12月28日に共同発表した日本軍「慰安婦」関係合意(以下、「2015韓日合意」)は、国際社会の長い間の努力と精神に反するものだった。 



2015韓日合意はすでに破棄された。
2017年12月27日に韓日「慰安婦」合意の検証TF(団長:オ・テギュ)は調査結果を発表し、この合意が被害者中心主義に反したもので、密約が存在した事実も突き止めた。この発表に続いて文在寅(ムン・ジェイン)大統領(当時)は韓日合意2周年の2017年12月28日、2015韓日合意は被害者の意志を正しく反映しない、手続き的、内容的に重大な欠陥がある真実と正義の原則に反する合意で、日本軍「慰安婦」被害者問題の本当の問題解決になることはできないことを公式的に発表した。

外交部長官は2018年1月9日、韓日合意が日本軍「慰安婦」被害者問題の解決になれないと再度確認し、「慰安婦」被害者たちの名誉・尊厳回復と心の傷の治癒のために政府が全ての努力を尽くすと発表した。2015韓日合意にある「最終的・不可逆的解決」を否定し、2015韓日合意は実質的に無効化された。



  文大統領はまた、2018年1月4日に被害者たちを大統領官邸(青瓦台)へ招請し、2015韓日合意に関して謝罪した。以降、大韓民国国務会議は2018年7月24日、日本政府から和解・治癒財団に出された10億円を全額、政府予算から代替するための予備費編成を決定し、和解・治癒財団は2019年7月3日、解散登記を終え、正式解散した。これで2015韓日合意は最終的に破棄され、無効化された。



 さらに(韓国)憲法裁判所は2019年12月27日、2015韓日合意は合意の効力に関する両国当事者の意志が表示されていないだけでなく、具体的な法的権利・義務を創設する内容を含んでおらず、法的拘束力がある条約に該当していないと確認した。憲法裁判所は、2015韓日合意には日本軍「慰安婦」被害者が受けた被害の原因や国際法違反に関する国家責任が指摘されておらず、日本軍関与の強制性や不法性も明示されておらず、日本軍「慰安婦」被害者の被害回復のための法的処置に該当するとは見ることはできないと明確に明らかにした。



  したがって2015韓日合意は、これ以上論議される理由はない。
大韓民国の外交部長官が早急な韓日関係回復のために2015韓日合意精神を云々するのは到底理解できない。すでに廃棄された2015韓日合意へ回帰しようとする試みを喜ぶのは日本だけだ。



  いま尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権がすべきことは、「被害者中心主義原則に従って被害者たちの名誉と人権回復のためにすべての外交的努力を果たす」という大韓民国政府の約束を守ることだ。
尹錫悦政権は、国連人権理事会などの国際人権機構が勧告し、被害者たちが30年以上要求してきたとおり、日本政府が日本軍「慰安婦」を軍の政策で企画、募集、慰安所を運営管理したという歴史的事実を認定し、公式謝罪、賠償、真相究明、歴史教育と追悼事業などの再発防止処置を取るよう、あらゆる外交的努力を尽くすべきだ。



  また強制動員労働者の被害補償問題は、被害当事者がすでに明らかにしたとおり、加害者の三菱側の率直な謝罪と賠償以外に解決方法は存在しない。



  大韓民国の大法院は2018年11月、三菱重工業に対して被害者に賠償しろと判決を下し、これに被害者たちは2019年3月、三菱重工業の国内特許権・商標権を押収した。
水原地方法院・安養支院は2021年8月、強制徴用被害者に対する賠償を拒否している三菱重工業の物品代金債権に対する押収・取立命令を下した。いまや被害者たちが申請した三菱重工業の韓国内資産の商標権と特許権に対し、特別現金化命令(売却)の大法院の最終判断だけが残った状態だ。大法院の判決に従って、三菱重工業が被害者たちに賠償すれば解決する問題だ。



  尹錫悦政権は日本との関係改善にばかり目を奪われ、2015「慰安婦」韓日合意と同じ屈辱的な拙速合意の前轍を踏んではならない。




 2022年7月21日 
韓国 国会議員 尹美香(ユン・ミヒャン)



(訳 権龍夫)