〈戦時性暴力問題連絡協議会〉報告 第70回 水曜行動 in 新宿(2023年11月15日)
◆月間報告 池田恵理子さん
池田恵理子さんの月間報告は、このところのガザへのイスラエル軍の凄まじい攻撃に対して、草津、京都、愛知、北九州など各地の仲間たちが街頭や声明で、「ジェノサイドを止めて!」と停戦を訴えていることから始まった。
大きなトピックスとしては、韓国の「慰安婦」被害者から名誉棄損で訴えられた『帝国の慰安婦』の著者・朴裕河氏の裁判で、大法院が高裁の有罪判決を差し戻したことをあげた。日本のメディアでは「学問の自由」が認められたと好意的な論調が目立つが、とんでもないと思う。朴氏は曖昧な事実認定と、公的な強制連行を否定したり、「慰安婦」は売春の枠組みにいた女性たち…などと記載して、被害者から訴えられていたのである。
韓国では今、正義連への攻撃など日本の右派と連携したバックラッシュが強まっている。被害者と共に歩む私たちはこうした動きに注意を払い、批判していこう。
他方フィリピンでは、被害者や支援団体が活発な活動を続けている。
岸田首相がフィリピンを訪問して11月4日に首脳会談を行った後、「慰安婦」被害者のエステリーダさんや支援団体のリラ・ピリピーナは緊急記者会見を開き、「首脳会談では軍事協力強化をうたっているが、それよりも元『慰安婦』への補償や正式な謝罪を!」と岸田首相に呼びかけた。
日本政府は、2018年にフィリピンに建立された平和の少女像を撤去させている。そんな中でも闘い続けているロラたちを応援していきたい。
中国・海南島の被害者、李美金さんが11月9日に98歳で亡くなられた。これで海南島で名乗り出た被害者は、全員亡くなられた。李美金さんも出演している中国のドキュメンタリー映画『二十二』には、日本政府を提訴した被害者がほとんど出てこない。この映画は日本でも上映されているが、批判や疑問の声があがっている。
(訃報:李美金さん
https://www.restoringhonor1000.info/2023/11/19262023119.html)
被害女性たちの大半が亡くなっている現在、その声を次の世代に伝えていく活動が一層重要になってきた。そして、日本政府が歴史の事実を忘れさせようとすることを許さず、公式謝罪と賠償を求め続けていかなければならない。
◆青木初子さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)
沖縄も日本も戦場にさせないために、今、声をあげよう!と道行く人々に強く訴えた。
自衛隊は、戦争の時のために血液製剤まで作り、死体処理まで準備し訓練している。戦争は他人事ではない。今声をあげないと、軍需産業の利益のために戦争に引き込まれる。
沖縄は戦争反対の闘いを続けている。11月23日には、那覇市奥武山公園で県民平和大集会が計画され、戦争反対の声を世界に届ける。その沖縄の声に応えて同じ11月23日、国会正門前で「沖縄も日本も戦場にさせるな!」という大集会を開催するので、総結集を!
(詳細は下記を参照して下さい
https://www.restoringhonor1000.info/2023/11/blog-post.html)
◆〈サバイバーを記憶する〉 川見公子さん
「サバイバーを記憶する」では中国山西省の被害者・王改荷さんの人生を語った。
2001年2月に東京地裁で証言するために来日した王さんは、法廷にたち「どうしても日本に来たかったんです。命を懸けてきました。おなかにためてきた辛さ、苦しみを話したい」と切り出した。
王さんは被害から数十年を経ても日本軍が迫ってくる悪夢に悩まされました。性被害にあった人は生涯その被害を忘れることはできない。二度と同じ被害を起こさないために、戦争を起こさないために、性暴力をなくすために、私たちは王改荷さんから手渡された「出口气」を心に受け止め歩み訴えていこう。
(詳しくは添付を参照して下さい。 https://www.restoringhonor1000.info/2023/11/19192007.html)
◆〈歌と語り〉 保田千世さん
ガザの子どもたちのこと、ウクライナでのレイプ、1937年の南京レイプ、そして現在の武器輸出、戦争への道に走る日本の現状を『死んだ男の残したものは』の歌とともに、思いを語った。
〈歌〉死んだ子どもの残したものは ねじれた脚と乾いた涙
他には何も残さなかった 思い出ひとつ残さなかった
今、ガザでは、瓦礫の中で、灰色の粉塵にまみれた子供が血を流しながら泣いています。
4500人超の子どもが、この1か月余りの間に死んだと国連の人権機関が報告しています。
また、「イスラエル軍の救急車や病院への攻撃によって10分間に1人の子どもが死んでいる」と、11月10日に国連の会合でWHO世界保健機関の事務局長が述べました。
さらに、昨日の新聞報道によると、ガザ北部のすべての病院は機能できなくなり、電源が切れて保育器の中の新生児も死んでいます。
〈歌〉死んだ女の残したものは しおれた花とひとりの子ども
他には何も残さなかった 着物一枚残さなかった
戦争や紛争が起きると、今も昔も、兵士による女性への性暴力が頻発し
ます。
ウクライナでは、ロシア兵によるウクライナ女性へのレイプが多発しています。
この歌が作られた1960年代のベトナム戦争でも、参戦した兵士によるベトナム人女性への性暴力が発生しました。韓国では、日本軍「慰安婦」問題の解決に取り組む女性たちが、1999年から自国の兵士がこの戦争でベトナム人女性に対して行った性暴力を告発し、被害者を支援する運動を行っています。
旧日本軍でも、1937年12月の南京攻略の時に、日本人兵士によって多数の中国人女性が強姦され、殺されました。このことによって抗日感情が高まることを恐れた日本軍は、この後、本格的に、アジアや太平洋諸島に慰安所を作っていきました。
11月4日、岸田首相は日本の首相として初めてフィリピンの国会議会で演説し、中国をにらんで、フィリピンと日本の軍事協力を強化すると述べました。
また、10月にフィリピンに防空レーダー1基を輸出したことを、防衛省が11月2日に明らかにしました。日本から国産の完成品の武器が輸出されたのは、戦後、これが初めてです。
岸田首相の演説当日、軍事協力の強化に反対してフィリピン女性たちが記者会見を開きましたが、その席で、93歳のエステリータ・ディさんが小柄な体を震わせて訴えました。
「私は、1994年、14歳の時に、パナイ島のタリサイ町の市場の前で日本軍に捕まって、慰安婦にさせられました。私の身に起こった苦しくつらい体験が、今の若い女性たちに再び起こらないように、私はすべての戦争に反対します。」
〈歌〉死んだ兵士の残したものは 壊れた銃とゆがんだ地球
他には何も残せなかった 平和ひとつ残せなかった
今、日本政府は、中国による台湾有事に備えるとして、沖縄の島々に自衛隊基地を増強し、ミサイルを配備しています。
武力で平和は作れるのでしょうか
※歌「死んだ兵士の残したものは」
谷川俊太郎 作詞、 武満徹 作曲 から抜粋