〈報告〉戦時性暴力問題連絡協議会 第82回 水曜行動 in 新宿 「月間報告」 池田恵理子(2024.12.18)
この水曜行動の場に立つと毎月、この1カ月がいかに波乱万丈だったかという話から始めてしまいますが、今月も同じです。
12月10日頃は、核兵器の廃絶を訴え続けてきた日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を授賞したという明るいニュースに満ちたものの、12月3日には韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の戒厳令の発令に大きな衝撃を受けました。しかし、即座に市民や若者たちが抗議の声をあげて集結し、国会も急遽、全会一致で解除要求の議案を可決するという早業で戒厳令は解除されました。ハラハラしながらも韓国の底力を目の当たりにして圧倒されましたが、この混乱はまだ続くことでしょう。こういう状況下では、いつ何が起こるかわかりません。被団協がノーベル平和賞を授賞したのも、今の世界ではいつ・どこで核兵器が使われるかわからない・・・という危うさがあるからこそだと思います。
この10月には8年ぶりに国連のCEDAW(女性差別撤廃委員会)の日本審査が行われ、11月に「最終見解」が公表されました。女性差別撤廃条約に基づき女性差別の解消と男女平等を求めて、日本政府には厳しい勧告がいくつも出されました。メディアではなかなか取り上げられませんでしたが、「慰安婦」問題についても日本政府の対応を強く求めています。
そこで、全国の「慰安婦」被害者の支援団体で構成している私たち・「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」では12月5日、この勧告を受けとめて「慰安婦」問題の解決を求める要請書を総理大臣と外務大臣に提出しました。そして12日には衆議院・参議院の国会議員40人ほどを訪ねて、この要請書を手渡して回りました。
「私たちは、第2次石破政権の発足にあたり、政府が日本軍「慰安婦」問題に今一度真摯に向き合い、性暴力の根絶や平和と人権を求める国際社会で、日本が名誉ある地位を確立する為に、以下を要請します。
1.日本政府は日本軍「慰安婦」(日本軍性暴力・性奴隷制度)による人権侵害の事実を認め、被害者に対する公式謝罪、賠償、再発防止を行うこと。
2.日本政府はベルリンの平和の少女像など、世界に建立されている日本軍「慰安婦」の像や碑に対する設置妨害や撤去要請をやめること。
3.日本軍「慰安婦」を歪曲する教科書を認めず、歴史教育の中で事実を正しく伝えること。
4.2021 年 1
月のソウル地方裁判所、2023 年 11 月のソウル高等裁判所の判決(国益よりも人権を重視する国際慣習法の潮流に沿って主権免除を否定した)に従い、被害者に損害賠償を行うこと。
5.国連の人権機関などの日本政府に対する勧告に従うこと。特に2022
年 11 月の自由権規約委員会、2024 年3月の ILO 専門家委員会、2024年10月の女性差別撤廃委員会の勧告に従うこと。」
CEDAWの勧告を活かして、関西では大きな集会を開きました。また勧告には、沖縄の女性と少女に対する性暴力の防止と、加害者の捜査、訴追、処罰を適切に行うことが明記されています。12月13日には沖縄の米兵による少女誘拐と性的暴行事件の判決公判が那覇地裁であり、懲役5年の実刑が言い渡されました。これに対して東京や沖縄の女性団体が外務省前で性暴力根絶と米軍基地撤去を求める街頭行動を行い、22日には沖縄と東京での集会が予定されています。
米軍基地下での性暴力は、「慰安婦」問題とも深くつながっている深刻な問題です。「慰安婦」問題に取り組んでいると、戦時性暴力の根絶をめざす世界の女性たちと連帯するようになってきました。各国の被害女性の証言と訴えによって、私たちはたくさんのことを教えられてきました。これは今後も継承していかなければなりません。
この水曜行動では毎月、訃報が伝えられた被害女性のお名前を報告していますが、今月はフィリピンのエステリーダ・ディさんです。11月24日に亡くなられました。94歳でした。戦争反対を訴える力強いサバイバーのお一人でした。心からご冥福をお祈りいたします。
先ほど、私たちが配っているチラシを道の真ん中に立ち止まり、じっと読んでいる10代後半くらいの若者を見かけて嬉しくなりました。被害女性たちの声は次の世代に、どうしても伝えていきたいと思っています。みなさんの中にも、この問題に関心を持たれる方がいらしたら、是非、私たちにお声をかけてください。ごいっしよに取り組んでいきましょう。