〈報告〉戦時性暴力問題連絡協議会 第81回水曜行動 in 新宿 月間報告 池田恵理子(2024.11.20)
10月27日の日本の総選挙では自民党が少数与党になって注目を浴びましたが、このところで何よりも大きな衝撃を受けたのは、アメリカ大統領選でのトランプ圧勝のニュースでした。この選挙で露わになったアメリカ国内の分断と対立の深刻さがみえてきて、この混沌とした状況の中で世界はどうなるのだろう・・・と不安にかられています。
一方、10月17日に国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)が日本政府のジェンダー平等への取り組みを8年ぶりに審査して、29日に行った勧告が話題になりました。選択的夫婦別姓の導入や同性婚の容認、国会議員への女性の立候補の推進、男系男子に皇位継承を限定した皇室典範の改正・・・など多岐にわたる勧告が出て、報道されたのです。
CEDAWは「慰安婦」問題を再度取り上げて、戦争犯罪と反人道的犯罪には時効がなく、被害者の賠償請求など権利保障の努力が必要だ・・・と繰り返し強調しましたが、日本政府はこれまでの弁明を繰り返すだけだったようで、メディアは報道もしませんでした。
日本は先進国の中でも男女平等が最も遅れており、この6月に発表されたジェンダーギャップ指数では156カ国中118位という下位でしたが、その実態が次々と示されたように思います。
数少なくなってしまった「慰安婦」サバイバーのひとり、インドネシアの南スラウェシに住むチンダさんが目の治療を受けると知らされました。日本からは多くの支援やカンパが寄せられて、手術が行われているようです。
11月14日には韓国で、日本の最高裁判所に当たる大法院が、「慰安婦」の支援団体「正義記憶連帯」への寄付金流用などで前理事長の尹美香さんに有罪判決を下しました。歴史的な事実を無視した不当判決には、私たち・日本の支援団体からは批判と抗議の声をあげています。
「慰安婦」問題では、日本の市民が海外の市民運動や女性運動と連帯して活動を続けています。10月26日には「日本軍『慰安婦』問題解決ひろしまネットワーク」が主催して、「平和の少女像」建立のために、オーストラリアのメルボルンとドイツのベルリンと日本をつなぐシンポジウムを開催しました。「メルボルン『慰安婦』友の会」事務局長のクリスティーン・キムさんと「ベルリン女の会」の梶村道子さんの講演があり、メルボルン在住の田中利幸さんが通訳を務めながら、メッセージを発してくれました。
「慰安婦」のシンボルとなっている「平和の少女像」は、韓国内に146、海外に33も建立されていると言います。
オーストラリアではシドニーにも建てられましたが様々な議論が巻き起こり、メルボルンでも日本の右派からの激しい攻撃にさらされながら、粘り強い闘いが続いていることがわかりました。ぜひとも応援していきたいですね。
国内外の「慰安婦」問題では様々に困難な状況が見え隠れしていますが、このところ嬉しいのは、日本の若い世代がこの問題に関心を寄せて、学習や活動を始めていることだと言えましょう。そのひとつが「希望のたね基金」(略称キボタネ)の若者プロジェクトです。私もメンバーである「山西省・明らかにする会」は、この6月から8月までの間にキボタネの若者たちが企画した7回のワークショップに参加しました。
私たちが支援してきた山西省の性暴力被害者の大娘(ダーニャン)たちはすでに全員が亡くなられてしまい、若者たちは被害女性の聞き取りはできませんが、大娘たちを支えてきた日本のメンバーから聞き取りをしよう・・・という試みです。彼らはこれまでに出版した本や機関誌、資料などを丹念に学習していました。
このような、戦争体験者の孫や曾孫の世代が戦争被害・加害とその責任を引き継いでいく、という動きには感動するばかりです。若い劇作家やアーティストたちも取り組みを始めています。私たちは、未だに解決できていない「慰安婦」問題について、こうした次世代と共に思いや情報を共有しながら解決の道を探りつつ、継承していきたいと思います。