金昌錄(キム・チャンノク 慶北大学法科大学院教授、正義記憶連帯理事) 202479

 


 

さる622日、イタリアの美しい都市スティンティーノ(Stintino)の海辺に「平和の碑」が建てられた。韓国以外では14番目、ヨーロッパの公的場では2番目に建てられた「平和の碑」だが、今回も相変わらず日本政府の執拗な攻撃が加えられている。


 

 1990年代初めに本格的に提起された日本軍「慰安婦」問題については、過去30年間、国連人権委員会など各種国際機関の報告書や米国など各国の議会・地方自治体の決議を通じて、国際社会に法的常識が確立されている。「日本政府は深刻な女性人権の侵害について、国家レベルで事実を認め、謝罪し、賠償し、真実を明らかにし、責任者を処罰し、被害者を追悼し、歴史教育を行うべきだ」ということだ。

 


 「平和の碑」は、そのような日本軍性奴隷制問題の歴史的事実を記憶し、今も世界各地で起きている戦時性暴力がなくなることを願う気持ちを込めて建てられた女性人権の象徴物である。肩に鳥がとまっている少女像とその横に椅子一つ、後方の影と蝶で構成された造形物である。 その小さな造形物に対して、首相をはじめとする日本の国家機関は、一体なぜ攻撃するのだろうか?

 


日本政府自身が1993年の河野官房長官談話を通じて、日本軍「慰安婦」問題が「女性の名誉と尊厳を深刻に傷つけた問題」であることを認め、「このような問題を永遠に記憶し、同じ過ちを決して繰り返さない」と誓った。それなのに、「記憶と誓い」のための象徴物である「平和の碑」をなぜ攻撃するのか?

 


 2015年に韓国政府と日本政府は日本軍「慰安婦」問題について、日本政府が責任を痛感し、日本首相が謝罪し、韓国政府が設立する財団を通じて「慰労金」を支給するなどの事業を行うと発表したことがある(2015日韓合意)。

しかしその「合意」は、韓国の憲法裁判所が宣言したように、当時の日韓政府の「政治的宣言」に過ぎず、国連の女性差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Discrimination against Women)、拷問禁止委員会(Committee against Torture)、国連人権委員会(Human Rights Committee)が繰り返し確認しているように、その「合意」に拘わることなく、日本は国家的責任を履行し続けなければならない。

 


 そして何よりも、政府が自ら責任を痛感し、首相が謝罪すると言っておきながら、その責任と謝罪の対象である日本軍「慰安婦」問題の象徴物を攻撃するのは完全に矛盾している。日本の「挙国的」な「平和の碑」に対する攻撃は、日本という国が表向きは謝罪を言いながら、実は日本軍「慰安婦」問題を消そうしているとしか説明のしようがない。

 


 「スティンティーノ平和碑」を建立するにあたり、リタ・ヴァレベラ(Rita L. Vallebella)市長はスティンティーノ市を代表して、「この銅像は人類の心に語りかけ、ジェンダー暴力に対する厳重な警告となり、これを見る人々に世界中のすべての女性の自由と尊厳を尊重する決意を促すだろう」と述べた。日本政府は、「世界中のすべての女性の自由と尊厳」を尊重するという崇高な誓いを卑劣にも政治化・外交化する誤った行為を直ちに止め、自らも宣言した「記憶と誓い」の隊列に謙虚に参加すべきである。