金ジョンフン記者 「オーマイニュース」 2023. 7. 19.

 


[公判現場】検察側証人が尹議員に有利な証言を噴き出す

 

 


正義記憶連帯協賛金の私的流用容疑などで起訴された尹美香(ユン・ミヒャン)無所属議員が2023210日午後、ソウル市麻浦区ソウル西部地方裁判所で開かれた第1審判決公判で罰金1500万ウォンを宣告され、裁判所から出てきて立場を明らかにしている。©李ヒフン

 


検察が後援金横領などで無罪判決を受けた尹美香無所属議員の第1審判決を覆そうとしているが、難航しているようだ。19日に開かれた第5回公判では、検察側の証人として出席した李さんが検察の期待を裏切って、尹議員に有利な証言をした。

 


検察は結局、検察側証人に向かって「なぜ検察でした陳述と違うのか」と声を上げ、高圧的な態度をとったが、証人は検察の期待に反した証言をした。むしろ、尹美香議員の弁護側の言葉に耐えていた感情を噴出させ、涙まで流した。 結局、裁判長が検察に向かって「質問方法を変えるように」と指摘するほどだった。確かに検察が予想した情景ではなかった。

 

 

この日、ソウル高等法院刑事1-3部は、吉元玉(キル・ウォノク)ハルモニを2016年から2020年まで介護した介護保護士Aさんを招聘し、吉ハルモニの認知能力の有無を確認した。検察は、尹議員が重度の認知症と診断された吉ハルモニを騙し、正義記憶連帯などに後援金寄付を誘導したとみている。

 


〔吉元玉ハルモニの介護者、「吉ハルモニの状態は良好」〕

 

証人席についた介護保護者Aさんは検察の期待を裏切り、終始「吉元玉ハルモニの健康状態は良好だった」と述べた。

 

検察:「(介護を始めた)2016年の吉元玉ハルモニの健康状態はどうだったか?」

Aさん::「良好だったと見るべきです。」

 

検察::「具体的にどのような点が良好だったのか?

Aさん:「私が初めて吉ハルモニを見た時、(故・孫英美平和の家所長に)「認知症か」と尋ねました。でも認知症ではなく、当時はパーキンソン病だと言われました。」

 

検察:「認知症かどうか尋ねた理由は?」

Aさん:「ハルモニたちは認知症が多いから聞きました。私が行った時、(吉ハルモニは)動いていて歩行ができたので、認知症かと尋ねただけです。

 

検察:「健康状態が悪そうだったのでは?」

Aさん:「そんなことはありません。」

 

検察:『(20208)検察で調査された時、「健康状態はどうだったか」という質問に対し、「(吉ハルモニが)身体的にかなり不調だ。健常者の認知に及ばない」と言った。そうか?』

Aさん:「忙しくてよく分かりません。時間が経っているので分かりません。」

 

 

その後、検察の繰り返された質問にAさんは、「吉ハルモニがいつから認知症なのかは分からない」と証言し、「(私が見た時は)だいたい意思表示と記憶力は大丈夫だったようだ」と改めて強調した。

 


Aさんは尹議員側の反対尋問でも、「2016年から2020年に仕事を辞めるまで吉ハルモニの状態が維持されたか」という質問に対し、「個人的な見解だが、認知状態は大丈夫だった」と証言し、「吉ハルモニが(認知症のために)空言を言うのを見たことはない」と答えた。

 


〔検察の「認知症」映像にユン氏側「寄付発言」映像で対抗〕

 

この日、検察はA氏の証人尋問前にも吉元玉ハルモニが登場する動画十数本を法廷で流した。 これらの動画は2016年から2020年ごろの吉ハルモニの姿を収めていた。

 

最初の映像で吉ハルモニは、自分がひまわりを描きながら、何を描いているのか正確に認識できない様子を見せた。続く映像で吉ハルモニは自分の名前を記載するのに23秒以上かかる様子を見せた。 別の映像でも吉ハルモニはマスコミのインタビューを受けながら、質問と全く違う趣旨で答えたり、無表情で座っていた。

 

いずれも吉ハルモニの認知能力に問題があることを示す映像だった。しかしその後、尹議員の弁護側が公開した映像の中では、吉ハルモニの様子が明らかに違っていた。

 

同じ時期、ドイツメディアとインタビューした吉ハルモニは、はっきりとした声で「慰安婦という言葉だけでも恐ろしい」と述べ、「私たちの代では経験したことだが、私たちの子孫は私たちと同じことを経験してはいけないと思う。私たちの子孫が私たちと同じ経験をしないように戦争のない国、平和な国を造って欲しい」と話した。

 

また吉ハルモニは、2018年に故・金福童(キム・ポットン)ハルモニと在日朝鮮人学校を訪問し、「学生に奨学金を寄付する」という意思を明らかにした。

 

故・金福童:「あなた(吉元玉)も(奨学金を)少し出しなさい。」

吉元玉:「(在日朝鮮人学校関係者に対して)お金がなくて大変な学生、そんな学生二人だけ選んでください。お金がなくて大変な学生、私ができる限り助けます。」

 


映像で二人のハルモニの隣にいた尹議員は、「(吉元玉)ハルモニの意志を引き継いでやります」と声を上げていた。201954日に撮影された映像でも、吉ハルモニは尹議員との会話で、「貧しい人のために(財産を)使ってほしい」と話す。

 

尹美香:「ハルモニが生きている間に日本政府が賠償をしないで、 もし日本政府が(後で)謝罪して賠償をしたら、その時、その賠償金をどう使ってほしいですか?」

吉元玉: 「私の国の貧しい人のために使うように。貧しい人はいつも苦しいから。」

 

尹美香:「貧しい人のために使えということですよね?」

吉元玉:「はい。」

 

尹美香:「ハルモニ!神の元に行っても、日本政府に賠償されない人に、吉元玉ハルモニの名前で書けということですよね?」

吉元玉:「(尹美香)代表がしっかりしているから。」

 

尹美香:「じゃあ朝鮮学校の子供たちは?」

吉元玉:「まあまあ、自分の故郷でなく、他郷に住んでいても希望を失わず、卑屈にならず、他人の国に行っても卑屈になる必要はない。 卑屈にならず、平和な国で生きてほしい。」

 

検察は201711月、吉元玉ハルモニが女性人権賞の賞金1億ウォンを受け取った直後、5000万ウォンを正義記憶連帯に後援したことに関して、「尹議員と孫英美所長(検察捜査中に死亡)が吉ハルモニの認知症を利用して賞金の一部を取得するために共謀した」と疑った。


 

しかし今年2月、第1審裁判部は「寄付行為は吉ハルモニの意志に基づいて行われた可能性を排除できない」とし、吉ハルモニが認知症の診断を受けたのは事実だが、刑法上の「心身耗弱」状態とは見なされないと判断し、尹議員に無罪判決を下した。

 

2審裁判部は、920日に判決を下す予定。



(訳 権龍夫)