①月間報告 (池田恵理子)





「赤瓦の家」を書き、宋神道(ソン・シンド)さんを支えてきた川田文子さんの追悼会のこと。

wamで今開催されている松井やよりさんの全仕事展などを紹介。

2013年安倍政権下で、国連人権勧告を聞く必要はないと閣議決定されて10年。関東大震災下の朝鮮人・中国人虐殺から100年、改めて国家責任を問う。

あったことがなかったことにされている現在、伝え問うことを諦めない。




性犯罪に関する刑法改正の現状と問題点 (山田久仁子)




若年女性(男性)たちの性暴力被害が次々と明るみに出てきている中、刑法改正が今国会で成立した。強制性交罪が不同意性交罪になったことは評価できる。不同意性交罪の時効が5年延長され15年に、不同意わいせつ罪は7年から12年に延長されたが、「慰安婦」問題では名乗り出るまで40年から50年もかかっていることを考えると今回の時効延長では本当の解決にはならない。付帯決議がつき、5年後に見直しをすべきとなっている。被害者中心主義と時効の撤廃を求めたい。(詳しくは、添付のリーフの参照してください)



 刑法改正・ジャニーズ事件・「慰安婦」問題 の関係とは?(坪川宏子)





今、(山田久仁子さんから)刑法改正のお話があり、 評価できる点は、「強制性交罪」が「不同意性交罪」と変更されたということでした。

 これで、念願の「同意のない性交」は処罰されることになりましたが、実際は、「いやだ」と思っても言えない場合があります。今までは、必死な抵抗をしなければ、いやだと認められなかったけれど、今回の改正で、実態を考えて「不同意」の中身(要因)を8項目、決めたのは画期的です。

その中には、 恐怖によるフリーズ、虐待による心理的反応などの他に、相手が支配的立場を利用して行い、いやだと言えない場合も入っています。 これは重要な項目です。

例えば、ジャニーズ事件の場合。 アイドルを目指してジャニーズ事務所に入った134歳の少年たちに対し、喜多川元社長は、アイドルデビュー、舞台の立ち位置などの大きな支配力を背景に性暴力を行い、少年たちはいやだとは言えなかった。少年たちのその後の人生にも重く影響した。 同様に、ハリウッドの大物、ワインスタインが配役等の強い支配力を利用して多くの女優に性暴力をほしいままにしていて、拒否も告発も困難でした。

しかし、2017年、被害者たちが「もう黙らない!みんなで声を上げ、加害者やそれを許してきた社会を変えよう!」と立ち上がった「#Me Too」運動は、世界に広がった。いかに全世界的問題であることかを示している。 容認する社会をみんなで変える運動でした。本当に、性は自分のもの! 自分の人権の一部であり、性暴力は人権侵害であるという認識や教育が重要です。

では、「慰安婦」問題との関係は何でしょうか? まさに「不同意性交」であり、特にその中の、強い支配権力を利用した、いやだと拒否できない「性暴力」に該当します。

「慰安婦」被害者は、ジャニーズ喜多川や、ワインスタインとは比べ物にならない絶対的な大日本帝国の植民地支配や占領地支配の国家権力を背景とした性暴力であり、とうてい「いや」とは言えない状況下に置かれていました。植民地では配給を貰えなかったり、多くは貧しさにより詐欺・甘言で強制連行され、占領地では直接的な暴力で拉致され、「慰安婦」とされた。

こうした事実を調査した結果である「河野談話」では、「本人の意思に反して集められ」と認定しています。「本人の意思に反して」=即ち「不同意」ですね。 本人の意思、同意を無視する人権侵害が大きな共通性です。 

アメリカは彼を懲役23年に処罰しました。日本も今後、8項目に拡大した「不同意性交罪」により、性犯罪は正しく罰せられるはずです。

「慰安婦」問題においても、日本政府は、外交・軍事問題の解決ではなく、人権侵害の解決として、必ず処罰されなければなりません(国際基準で、責任者処罰、事実に基づく誠実な謝罪、賠償、再発防止)。 皆さまも、日本をより良い社会にするためにも、「慰安婦」問題に、ご理解とご協力をお願いします。


 最後に、皆さん、女性も男性も、万一、性暴力を受けたら、すぐに ♯8891シャープ   ワンストップ)番に電話をして下さい。                                                      

 


「サバイバーを記憶する」ー台湾:イワル・タナハさん





1 柴 洋子 


台湾の最後のサバイバーだったイワル・タナハさんが510日に亡くなりました。

イワルさんは1931年生まれ。お母さんのおなかの中にいたとき。1930年霧社事件があり、その流れの中でイワルさんのお父さんが亡くなっていました。父がどうして亡くなったのかは知りませんでしたが、小学校で同級生たちが父を呼ぶのをきいて自分には父がいないことを悲しく思い、母にそのことを聞きます。その時に霧社事件で亡くなったことを母は話してくれました。

イワルさんが5歳になったとき、彼女たちの生活を見かねた男性と母は再婚、8歳で小学校入学。その義父も5年生のとき死去、小学校6年で母が病死してしまい、1944年、花蓮に嫁いでいた母の妹に引き取られました。


194412月、部落の警察官に徴集され、村に駐屯していた日本軍の部隊に働きに行くことになりました。警察官の命令は絶対です。他の5人の少女たちとともに日本軍の部隊に行きました(大山部隊、またの名を倉庫部隊といわれていた)。


数ヶ月後、ニシムラ軍曹から別の仕事があるから残っているようにと言われ、晩ご飯まで用意してくれていたが、やがて一人ずつ、倉庫になっている洞窟に連れて行かれました。暗い洞窟の中で恐ろしく思っていると強姦され、それから悪夢の日が続いたのです。妊娠し、流産もし、性病にもかかるなど苦痛は続きました。


そしてある日、いつものように部隊に仕事に行くと、日本兵は全員いなくなっていました。日本の敗戦をこのとき知りました。


1996年、日本兵(台湾人)の補償を求める会がつくられ、そこに出席した際に、元「慰安婦」問題が出されました。そこで自分もそうだったと名乗り出た女性たちがいて、イワルさんも婦援会に申請しました。


1999年、日本政府に謝罪と賠償を求めて訴訟を提起した原告9人の一人になりました。

イワルさんは熱心なクリスチャンで、いつも祈りを忘れない物静かな人でした。

そのイワルさんが裁判のために来日したおり語ったことです。

「どうして日本政府が謝らないのですか。何もしないのですか。台湾の兵隊さんにやられたわけではないのです。怒りが日に日につのります。

~すでに50年たちました。50年間、気持ちが激しく揺れるとき、心をやわらげるために歌っていた歌があります。それをこの場で歌います。」と言って法廷でタロコ族の賛美歌をイワルさんは歌ったのです。傍聴席はもちろん裁判長も静かにその歌を聞きました(ドキュメンタリーフィルム「阿媽の秘密」のエンディングで、このときと同じイワルさんの歌う賛美歌が流れます)


イワルさんは敬虔なクリスチャンです。イワルさんが今までの苦しみに耐えて生きてこれたのは基督教の教えがあったからだという。「これからは,あなた方に頼みたい。なんとか解決してほしい」と。


2000年に訴えたイワルさんの言葉は20年以上前の言葉だが、いま、あらためて言われているような気がします。イワルさんがあれほど望んだ日本政府の謝罪は今現在もなされていないという現実が身にしみます。

 

2、山口明子


5月10日、台湾で名乗り出た日本軍性暴力被害者の最後の一人だったイワル・タナハさんが、92歳の生涯を終えました。

イワル・タナハさん日本によって凄絶な被害を受けました。植民地の原住民として、生まれる前に父親を奪われ、故郷の土地を追われ、言葉を奪われ、信仰の自由を奪われ、最後にはわずか13,4歳で日本軍性暴力の被害に遭いました。どんなにか、恐ろしい経験だったでしょう。


日本人の私たちが、簡単に友人とよんでよいのか、ためらうのですが、そのイワルさんが晩年私たちの親しい友人となってくれたのは、彼女の赦しであったと思います。


しかし、彼女は、日本の罪をなおざりにしたわけではありません。彼女は神様は正義の神であると信じて、正義が行われることを待ち望んでいました。彼女たち被害者が亡くなったことで、問題を終わりにさせてはならない、私たちは彼女の願いを受け継いでゆく責任があると思います。







●配布したリーフ














●リーフの内容●

 

多発する性犯罪と刑法改正の今

―性暴力被害者の願いと「慰安婦」問題からー

 


今、若年女性(男性)たちの性暴力被害が次々と明るみに出ています。最近ではジャニーズ事務所の長年の前社長による少年たちへの性被害が、やっと明らかにされました。しかし、勇気を奮って訴えたことに、今の日本社会は誠実に応えているでしょうか?

 


日本政府は第2次世界大戦で東南アジア全域を戦場にして、若い女性たちを日本軍兵士の性奴隷にさせた罪、加害の責任を未だにとろうとしていません。

この態度は現代の若い女性(男性)たちが性暴力被害にあっても救済されない今の社会に大きく影響しているのではないでしょうか?

 


男性優位の家父長制のなごりが、同性婚やLGBTQの人々を差別したり、性暴力被害にあっても、被害者の側が証拠を出さなければ、信用されない、加害者は、お咎めなし、の実態に現われています。


被害者の女性は他の女性たちが二度と自分のような被害にあわないためにと顔も、名前も出して、仕事もやめて、人生を棒に振る覚悟で、名乗り出ているのに加害者の男性は名前も顔も出さない、証拠があるなら出してみろ、とふんぞり返っている現状にこそ、そのなごりがでています。「慰安婦」裁判でも同様でした。

 



 今から4年まえの20193月に4件の性暴力犯罪が無罪になったことをきっかけに、全国に抗議のフラワーデモが起き、刑法改正の運動へと繋がり、やっと、このほど、その改正案が今国会で成立(616日参議院全会一致)しました。


その結果、被害者の実態に即した要求がある程度反映されています。

強制性交罪が不同意性交罪に、公訴時効は5年延長、性交同意年齢は13才から16才に引き上げ、などが主な点です。



評価出来る点は、被害者が大暴れしないと、抵抗したとみなされないなど暴行脅迫要件等が今回8項目に増えたことで、処罰範囲が明確、拡大したこと。しかし、それは、被害者の側の条件(成立要件)が増えただけで、加害者がなぜ、同意したと判断したのかの問いがない、不充分なものではないでしょうか?


 そして大きな問題は時効の短さです。


不同意性交罪では現行の10年を15年に、不同意わいせつ罪では7年から12年に延長されましたが、かつての「慰安婦」裁判では実に、名乗り出るまで40年~50年もかかっています。


強制性交罪は世界では、イギリスやカナダは時効なし、フランスは30年、ドイツは20年です。日本はたった15年です。子どもや若年女性(男性)が、自分の身に起きたことが性暴力被害であることを認識するまで、時間がかかり、また、他の人に相談しない、出来ないが実に6割もあると言われる実態があります。


国会質疑でもこの時効の問題や盗撮、手なずけ(グルーミング)、性教育、再発防止などが挙げられ、付帯決議がなされ、諸課題は5年後の見直し、とされました


被害者に寄り添う更なる改正にするには、専門家に頼らない法務省自らの被害者聞き取りがなにより重要です。その上で、私たちは時効の撤廃を求めて行きます。


引き続き、この問題にご注目下さい