東近江市議会議長 市木徹 様





【 要 請 】




「元慰安婦等による日本政府に対する損害賠償請求訴訟に関する韓国ソウル中央地方裁判所の判決に対し断固たる措置を求める意見書」を採択しないでください!



私たちは、日本軍「慰安婦」にされた被害者に対して、日本政府が事実の認定と公式謝罪を早期に行うように求めて全国各地で活動している市民団体のネットワークです。3月 15 日、東近江市議会本会議に、韓国のソウル中央地方裁判所で 1 月 8 日に下された判決に対して断固たる措置を日本政府に求める意見書が提案されたことを知り、大変驚いています。




そもそも、日本軍「慰安婦」問題は女性の人権問題です。日本政府は、1993 年 8 月に「河野談話」を出し、慰安所の設置・管理、「慰安婦」の移送等について軍の関与を認め、「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」と述べています。そして、安倍前首相も含めて歴代の首相は「河野談話を継承する」と表明している問題なのです。ところが、提案されている「意見書」には、「戦後に生み出された『従軍慰安婦』という言葉をもとに作り上げられた政治問題」と書いてあり、これではあまりに事実を無視しており、無責任です。




また、「事実の十分な証明がなされないまま、一方的に我が国が責任を自ら負わされるかたちで今日に至っている」とも書いてありますが、アジア各国の「慰安婦」被害者たちが尊厳回復のために日本政府に謝罪と賠償を求めて 10 件の裁判を起こしたことを、ご存知でしょうか。裁判所はすべての訴えを国家無答責・除斥期間等の理由で却下しましたが、ほとんどの判決で「慰安婦」被害の事実を認定しているのです。これがわが国の司法の判断なのです。



このような問題の本質や事実も踏まえない誤った内容のものを、東近江市議会の意見書として採択されていいのでしょうか。



この「意見書」では、「慰安婦」問題は日韓請求権協定(1965 年)や「日韓合意」(2015年)によって解決済みとしていますが、日韓請求権協定によって個人の請求権までは消滅していないというのがこれまでの日本政府の立場だということを、ご存じでしょうか。




「日韓合意」は被害者の声を一切聴かず、日韓両国の外交問題として決着をみたものです。被害者一人ひとりは、日本政府から自分に届けられる謝罪、「二度とこのようなことは繰り返さない」という日本の将来への約束を求めているのです。被害者に届かないものが解決になるはずがないということは、容易に想像できることではないでしょうか。




また、「意見書」には、判決を「主権免除の原則までも否定した国際法上、常軌を逸したもの」と書いてありますが、これも誤りです。国際法は固定的なものではなく、「主権免除」も 19 世紀末からは「絶対免除主義」から商行為例外・不法行為例外・人権例外を設けた「制限免除主義」へと移行、拡大されて、今日に至っているのです。国際法は、国益より個人の人権を重視する流れになっています。韓国の裁判所のこの度の判決は、そうした流れに沿ったものなのです。




しかし、日本政府は「主権免除」を盾にしてこの判決を「国際法違反」「異常事態」と非難しています。それは言うまでもなく、人権例外適用の国際法の流れに反した主張です。東近江市議会がこの「意見書」を採択されることは、人権より国益を優先することを表明されることになりますが、それでいいのでしょうか。




日本軍「慰安婦」問題は、国際社会では決して過去の問題ではなく、現在も被害が続いている女性の人権問題として広く知られています。戦時性奴隷問題と位置づけて、国連の多くの人権機関は解決を求める勧告を重ねて出していますが、日本政府は無視し続けています。日本政府の姿勢が国際社会から問われ続けている問題なのです。




今、2 月の東京五輪 2021・組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視発言を契機にして、ジェンダー平等社会の実現を求める声が社会全体で高まっています。長引くコロナ禍にあって、社会的弱者である女性は雇用や暮らしに深刻な影響を受け、自死する人や性暴力・DV の被害者も増大しており、ジェンダー平等社会の実現はまさに喫緊の課題になっています。




東近江市議会におかれましても、女性議員が少ないこと等も含め、住民が抱えるさまざまな女性の人権問題に真摯に取り組まれていることでしょう。ともにジェンダー平等社会を実現していきましょう。




どうぞ、標記の「意見書」を採択されないよう、要請いたします。

2021 年 3 月 17 日


日本軍「慰安婦」問題解決全国行動

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日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク

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