〈報告〉戦時性暴力問題連絡協議会 第94回水曜行動 in 新宿 月間報告:池田恵理子(2026年1月21日)
私の担当は、この1カ月間に「慰安婦」問題をめぐってどんなことがあったかを報告することですが、この1カ月を振り返ると、年明けからは激動の時代に突入してしまいました。アメリカのトランプ大統領によるベネズエラ侵攻やグリーンランド領有の宣言などがあり、日本では高市首相が突然の衆議院解散・総選挙を表明してテンヤワンヤです。
私たちはこんな流れに抗して、「戦争はやらない!」と宣言すればいいのにアメリカに追従するばかりの日本政府を、何とか変えていかなければなりません。
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「慰安婦」問題解決を求める 韓国と日本の市民運動
さて、去年の12月18日にはソウルで国際シンポジウム「日本軍性奴隷制問題解決のための35年の研究成果と対抗 記憶の未来」が開かれました。主催は韓国の「正義記憶連帯」と日本の「Fight for Justice」です。「慰安婦」問題に初期の頃から取り組まれ、1995年に岩波新書で『従軍慰安婦』を出した歴史学者の吉見義明さんが、その後の30年間の流れと研究成果を盛り込んだ改訂版『日本軍慰安婦』を出版したので、それを祝う日韓の研究者や活動家たちが集まって長時間のシンポジウムを開催したのです。重要な問題が網羅され、鋭い議論が展開されました。配布資料のレジュメだけで80ページもあって、私はまだ読み切れていません。
韓国では、2015年12月28日の「慰安婦」問題の「日韓合意」からちょうど10年が経つということで、いくつもの動きがありました。この「日韓合意」は「慰安婦」問題の「最終的かつ不可逆的な解決を確認した」とされていますが、「慰安婦」被害者や支援者たちの声も聴かず、日韓の外務大臣同士が勝手に、「これで合意に達した。問題解決だ」と宣言したもので、韓国では「最悪の外交事件」と批判を受けてきました。これには私たちも全く同感です。
韓国に生存する「慰安婦」被害者はわずか6名しかいなくなってしまいました。しかし、被害女性たちが亡くなられても、その訴えは今も生き続けています。彼女たちが日本政府に求めてきたのは、被害事実の認定、正式の謝罪と賠償、次世代への継承、教育の中で若い世代に伝えていくこと・・・などですが、日本政府はこれらをやってこなかっただけでなく、「慰安婦」問題などなかったことにしようとしています。その上、日本と韓国の右翼団体の連帯活動が進んできたため、何かあると官民一体となって「慰安婦」問題を否定する動きが強まり、きわめて危険な状況です。
しかし日本各地では、私たちがやっているこの「水曜行動」のような、「慰安婦」問題の解決を求める街頭行動が毎月、続けられています。北海道から九州まで、もちろん関西でも、水曜日ではなく、木曜日や月曜日というところもありますが・・・。
「水曜行動」の発端は、韓国・ソウルの日本大使館前で毎週水曜日に「慰安婦」被害者のハルモニたちや支援者たちによって行われてきた「水曜デモ」にあります。1992年に始まった「水曜デモ」は世界最長のデモとしてギネスブックに登録され、記録を更新し続けており、すでに1782回を数えています。
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若者世代や医療関係者の取り組み
私たちが嬉しいのは、キボタネ(希望のたね基金)という若者たちのグループが、このところ熱心に「慰安婦」問題の聞き取りをしていることです。キボタネは2017年から活動を始めており、「慰安婦」被害者がいなくなってもめげることなく、被害女性から直接聞き取りをした活動家たちや遺族への聞き取りを始めています。12月21日にはオンライン集会を「このままじゃ終われない」のキャッチフレーズを掲げて行なったり、1月16日からは、「若者が聴く~地元から始める『慰安婦』問題」という連続講座を始めました。
また、この1月2日から9日まで、東中野のポレポレ座で『医の倫理と戦争』というドキュメンタリー映画が上映されました。これは「安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会」が共同製作をした映画で、各地で上映されています。直接、「慰安婦」問題を取り上げた映画ではありませんが、731部隊で人体実験を繰り返し、敗戦後にはその事実を隠蔽して日本の医学界に居座った医師たちや、そうした負の歴史に向き合って戦争反対の声をあげる医療関係者たちを追った作品です。
ナチス・ドイツでは医療関係者の戦争犯罪は戦犯裁判で裁かれましたが、日本ではほとんど裁かれることはありませんでした。それは、731部隊での”成果“を戦後のアメリカ軍が、朝鮮戦争やベトナム戦争などで利用するためだったのではなかったか・・・とまで言われています。
この映画では、731部隊の医師たちの犯罪を追いながら、千葉の「かにた婦人の村」で暮らした日本人元「慰安婦」の城田すず子さんのことも取り上げています。城田さんは性産業で追い詰められた女性たちを受け入れる施設や、「慰安婦」を追悼する記念碑を作るよう働きかけた人です。日本ではほとんど省みられてこなかった戦時性暴力や、戦争責任、植民地支配責任に向き合うべきではないか・・・と訴える内容になっていました。
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アジアの国々での試み
アジアの国々でも、「慰安婦」問題に関わる動きがいくつもありました。韓国では「日本軍『慰安婦』問題研究所」がインドネシアで慰安所や「慰安婦」被害者の現地調査と聞き取りを行っている、という報告が年末にありました。
フィリピンでは「慰安婦」被害者の支援活動を続けている「リラ・ピリピーナ」がクリスマス・パーティの模様を知らせてくれました。中国からは上海で蘇智良さんらによる『日本軍「慰安婦」全史』4巻を出版したというニュースが入りました。
日本国内の若い世代もアジアの国々でも、「慰安婦」問題の解決を日本政府に求め、戦時性暴力をなくすために何をすべきかを訴える動きが熱心に進められています。日本では政府の後ろ向きの姿勢により、メディアと教育の分野で「慰安婦」問題への取り組みが規制され自粛されているため、若い人たちの中には「慰安婦」問題を知らない人、教えられてこなかった人もいると思います。そんな人たちには、今配布しているチラシを受け取って読んでもらい、私たちの活動にも関心を持ってもらいたいと思います。
