中国語(繁体字  簡体字

 



今年5月に韓国に新政権が誕生し、日韓両政府間で「最悪の日韓関係の改善」の名のもとに「慰安婦」問題の「日韓合意」による幕引きの動きが活発化している。




 

 84日、カンボジア・プノンペンで林芳正外相と韓国の朴振(パク・チン)外相は718日に続く2回目の日韓外相会談を行った。両国関係の悪化を招いた元徴用工問題や「慰安婦」問題などの懸案を巡って議論し、早期解決を目指す考えで一致したという。報道によれば両政府は、日本軍「慰安婦」問題については2015年「日韓合意」を再評価し、その完全履行によって今度こそ「最終的・不可逆的な解決」とし、関係改善を急ぐ方針のようである。しかも日本側は、ボールは韓国側にあるとして韓国に解決策を要求する姿勢を崩していない。これは、戦争犯罪・人権侵害を犯した加害国として到底あり得ない姿勢であり、私たちは重大な懸念を表明する。





強制動員被害者賠償に伴う「現金化」問題についても、加害企業の謝罪と賠償が唯一の解決策であるにもかかわらず、日本政府は韓国政府に圧力を加え、責任と解決策を押し付けるという本末転倒な状況にある。

「日韓合意」はすでに破綻しており、再びこれを持ち出して幕引きをはかろうとすることに断固反対し、その理由をあらためて明らかにしたい。




                            

Ⅰ、「日韓合意」は、直後から韓国では被害者をはじめ、市民、支援団体から猛反発が沸き起こり、日本および各国支援団体も強く反対し、全国行動も抗議声明を発表するなど問題点を明らかにしてきた。その内容は以下の通りである。

 


第1)被害者たちを無視した一方的な政府間合意であった。


例えば、金福童(キム・ポクトン)さんは「被害者たちに一言の相談もせずに、いったい何の理由で妥結したというのか」と問いただし、李玉善(イ・オクソン)さんも「お金で私たちの口はふさげない」と怒りを露わにした。

  こうした被害者無視の拙速合意の背景にあるのは、その目的が極東の安全保障戦略を推し進める米国の軍事的要請にあり、被害者の被害回復のためではなかったという事情がある。これは現在の状況とも重なる。



第2)「日韓合意」の内容(公開と非公開部分を含む)について以下の問題がある。


①被害事実については明示せず 

②性奴隷表現を使わない約束をさせた 

③「お詫び」は河野談話の部分的引用にすぎず、被害者の求める加害事実に基づく真摯な謝罪とは到底言えない 

10億円について日本政府は「賠償ではない」と断言した ⑤少女像の適切な解決(撤去)を要求 

⑥一方的な「最終的・不可逆的解決」の押し付け。



まさに「慰安婦」問題の幕引きと記憶の抹殺をはかったものだった。



 

こうした内容は、被害者にとっては25年もの長い間求め続けてきた「解決」とは程遠く、到底受け入れられないものである。さらに、被害者が切望する日本政府による心からの謝罪について政府にその気があるのかどうか、はからずも安倍元首相の被害者への謝罪の手紙について問われた際の国会答弁「毛頭ない」で明らかにされた。加害の事実に向き合う姿勢や被害者に赦しを請う姿勢は最初から微塵もなかったのだ。

 


第3)「日韓合意」は被害者中心主義の国際人権基準から見ても大きくかけ離れたのである。


女性差別撤廃委員会は日本政府への総括所見(2016)で「日韓合意」は「被害者中心のアプローチ」を十分に採用していないことに懸念を表明している。さらに拷問禁止委員会は韓国政府への総括所見(2017)で、「当条約の14条に沿って、性奴隷被害者に補償・社会復帰や真実への権利、賠償・再発防止の確保といった是正措置が確実に提供されるよう『日韓合意』を見直すこと」と勧告した。




 

 、文在寅政権は、「日韓合意」検証チームを設け、201712月にその検証結果を発表し、翌年1月、日本軍「慰安婦」問題は合意で解決されないことを明確に示し、被害者中心アプローチに基づく解決を日本側に求めた。「和解・癒し財団」を解散し「合意」が凍結されたのは、こうした韓国政府の方針によるものであり、簡単に覆すことはできない。


 

すでに破綻した「日韓合意」を復活・完全履行させることによって政府間で「最終的・不可逆的解決」することは、愚行を繰り返すことであり、決して被害者に受け入れられる解決への道ではない。そもそも、解決とは加害国日本と被害者個々人との間の重大な人権侵害の被害回復の問題であり、政府間の政治・外交問題にすり替えてはならない。



そうした観点から、2014年の第12回アジア連帯会議で「慰安婦」問題解決のための道筋を示した「日本政府への提言」をあげる。日本政府が、軍による性奴隷犯罪の具体的事実と責任を認めて心に響く公式謝罪を行ない、謝罪の証としての賠償を実施、再発防止策を取ることは今からでも可能である。私たちは岸田政権がこれまでの対応を撤回し、一刻も早く日本軍「慰安婦」問題の真の解決に向けて取り組みを始めることを強く要求する。




 

202288


            日本軍「慰安」問題解決全国行動