私たち日本軍「慰安婦」問題を記憶・継承する会・滋賀は、20223月に発足したばかりで、会として発足後にメモリアル・デーの行事を持つのは今回が初めてです。


全国レベル、関西圏でもいろいろな団体がある中で、敢えて地域で団体をつくろうとしたきっかけは、20212月の滋賀県議会での決議3月の東近江市議会での意見書の採択です。



日本軍「慰安婦」被害者が日本政府に損害賠償を求めていた裁判で、ソウル中央地裁が202118日に日本政府に慰謝料の支払いを命じる判決を下したことについて、日本の「国益」を損なうという観点からのみ非難する内容でした。



そこには、日本政府に謝ってほしいと原告となった被害女性への最低限のリスペクトすらみられず、被害者の尊厳の回復はどうあるべきかということが全く視野に入っていませんでした。



私たちは、メモリアル・デーに何を取り組もうかと考える中で、映画「金福童」の上映が良いと考えた理由もここにあります。



一人の日本軍「慰安婦」被害者が、自身の尊厳の回復を求めて闘っていくなかで、他の性暴力被害者や植民地主義の被害者の存在に気づき、ともに尊厳を求めて闘う人権活動家となっていくことにフォーカスをあてた映画を通じて、裁判を起こしてでも日本政府に謝ってほしいと願った被害者の存在と向き合い、出会うことができるのではないかと考えました。


とはいえ、日本での上映機会が少なかったので、メンバーの中で映画を観たことがあるのは一人。韓国の配給会社の連絡先をお聞きしてコンタクトをとってみたものの、忙しいらしくていつもなかなか返事が来ず、本当に上映できるのか?!とハラハラしましたが、何とか無事に準備が整いました。上映12日前から、会のFacebookに、毎日、映画「金福童」に関する投稿をして広報につとめました。






8.14当日に開催することにしたため、お盆で出にくいということに加え、かつ新型コロナウィルス感染症関連で急に参加できなくなる方もいる中で、チケットぴあでの予約販売はたった10枚、手渡しの予約券もそれほど好調とは言えず、少人数の開催になってしまうだろうなと覚悟していたところ、当日券で参加の方が予想以上に多く、延べ135(午前の部85人午後の部50)が共に「金福童を記憶する人」になりました。



参加いただいた方は、終了後口々に参加してよかったとその思いを主催者に表明してくださいました。映画の内容はもちろんのこと、言うまでもなく金福童さんの取組みと生き様そのものに大きな感動をされたものと思います。それは、提出いただいたアンケートが参加実人員の過半数を超え、さらにほぼ全員がよかったと回答され、「大変良かった」は76%という数字にも表れていました。



いくつかの感想(の概要)を紹介します。



・日本軍「慰安婦」問題といえば、外交問題、歴史問題としか扱われない傾向があるが、被害者がいる問題だということに映画を通じて改めて気付かされた。


・「平和の少女像」の意味がはじめてよくわかった。


・安倍氏の「国葬」を許せば、日本軍「慰安婦」被害者にまた失望と傷を与えてしまうと感じた。


・エンディングの歌が、フラワーデモにぴったりだと思った。


・金福童さんの力強さ、屈しない精神に感動した。


・韓国の若者に引き継がれていることがすごい。


・金福童さん、あなたの名前を忘れません。



私たちが「金福童を記憶する人」になると同時に、「金福童」の後ろには、尊厳が回復できないまま亡くなった方、名乗り出られなかった方が数多くいるということ、その一人ひとりに大切な人生があることに想いを馳せることが大切だと思います。


日本軍「慰安婦」被害者、そしてすべての性暴力被害者の尊厳の回復のために「希望をつかみ取って」、今後も活動を続けていきたいと思います。



日本軍「慰安婦」問題を記憶・継承する会・滋賀