〈報告〉戦時性暴力問題連絡協議会 水曜行動 in 新宿 韓国では「慰安婦被害者保護法」を改正 坪川宏子(2026・4・15)
■皆さん、「慰安婦」問題は解決済みなのに、なぜ、まだ続けているのと不思議に思われるか
もしれませんが、それは違うのです。「終わった」と言っているのは日本政府と右派勢力だけ
です。その証拠に、アジアの高齢の被害者たちは、今もなお、日本政府に本当の解決を求め
ていますし、国連からも、つい先月の3月に、国連の人権専門家16人が声明を発表しているの
です。要約すると、「戦後80年たっても「慰安婦」被害者に真の解決が実現していない。被害
者は何十年もの間、事実認定、公的謝罪、法的賠償を待ち望んできた。我々は関係国に対し
(主として日本を指します)、一刻も早く実現するように強く求める。」と要求しているので
す。皆さん、日本は、まだ正式に解決していないということを理解してください。余計なこ
とですが、16人の中には日本人男性が含まれているのを知って、少し嬉しくなりました。
■さて、今日お話しするのは、多くの歴史資料や被害者の証言によって、正しい歴史事実が確定しても、その歴史を根本から否定し、虚偽の歴史にゆがめてしまう勢力が台頭してくる事態もあります。
有名なのはご存じのドイツで、「ガス室はなかった」など、ナチスのユダヤ人絶滅政策(ホロコースト)を否定する勢力があります。日本にも「南京大虐殺はなかった」とか、「慰安婦」問題もいろいろ否定論があります。実は、韓国でも最近、「日本の支配はよいこともした」と日本の植民地支配を正当化する、勢力も出現しています。
そういう歴史否定が強大な勢力になりそうな事態に、どのようにそれを食い止めるかが問題ですね。賢明な政治家や市民が、事実を守るために、歴史否定勢力に毅然と反対する対策を取るかどうかにかかっていると思います。
今日の本題は、「慰安婦」問題に関する歴史否定の勢力について、韓国での状況はどうなっているかを紹介し、それに対し、韓国政府がどのような対策を講じたかについてです。
■韓国では6,7年ほど前から、右派「慰安婦法廃止国民行動」のメンバーは、水曜デモなどで被害者たちの名前を呼び捨てにし、「うそつき」、「自ら金を稼ぐために行った」と暴言を直接浴びせたり、「「慰安婦」は国際的詐欺だ」とか「売春婦」など(私の使う言葉ではありませんが、彼らが実際に使っているので、あえて)と事実に反する侮辱を繰り返しています。また、全国各地にある少女像に「撤去」と書いたマスクをつけたりしているそうです。(6,7年前から、少女像前の水曜デモの場所を奪われたことは(略))それに対し、李在明大統領はこう言っています。「戦争犯罪である性奴隷被害者を売春婦呼ばわりするとは、人間ならばあり得ないことだ」、「無理やり戦場に連れて行かれ、死の恐怖の中で毎日数十回も性暴行を受けた(ついには虐殺されるに至った)彼女たちの苦痛に、人間の姿をして、なぜあれほど残忍でいられるのか」また、「人を傷つける獣は、人間として教育し直すか、隔離すべきだ」と強く非難しています。これだけ聞いても大統領はたいした人物ですね。
ついでですが、最近、李大統領は、イスラエルがガザ地区への攻撃や侵略、レバノンの民間人地区への爆撃に対し、こう言ったといいます。「どんな状況であれ、国際人道法は順守されなければならないし、人間の尊厳は(妥協することができない)最優先の価値として守られねばならない、」などと明確にイスラエルを批判し、「誰も言えないことを言った」と勇気ある発言を評価されています。高市氏にはできませんね。
こうした韓国の李政権と市民の、「歴史否定は許さない!」「被害者の侮辱は許さない!」という強い決意によって、2月12日、これまでの略称「慰安婦被害者保護法」に、それらを禁止する条文を追加して、「慰安婦被害者保護法」を改正しました。元の法律は、1993年に制定された後も、保護や支援の内容を強化する改正を続けています。右派の代表は、改正が成立後、「死者名誉毀損罪」の疑いで警察に逮捕されました。」
■では、追加した点は何でしょうか? 以下の4つの内容を追加したのです。
1つは、第2条 (定義)
「日本軍慰安婦被害」とは、日本帝国により強制動員され、性的虐待を受け慰安婦としての生活を強要された被害をいう。と定義しました。
2つ目は,第10条 (実態調査) これは略します。
3つ目は,第16条(被害者に対する名誉毀損の禁止)
公然と被害者を誹謗する目的で、被害の事実を否定し、また虚偽の事実を拡散して被害者の名誉を毀損させてはならない。
4つ目は,第17条(被害に関する虚偽の拡散禁止)
慰安婦被害に関する虚偽の事実を流布(拡散)した者は5年以下の懲役又は5千万ウォン以下の罰金に処する。(後に、新聞、演説…など方法を記す)
*学問・研究の場合は例外とする。(これは朴裕河氏や、ラムザイヤー氏の件ですが、ここでは(略))
■この改正法の素晴らしい特徴は、何でしょうか?
1,まず「慰安婦」被害を、連行の時と慰安所での生活が「強制」であったと明確に定義したことです。
定義があれば、それを否定したり、そこから外れることは、明確な違反行為になります。ですから、強制連行や性奴隷生活を否定することは許されないという毅然とした姿勢です。
2,被害者に対する名誉毀損が、法律によって禁止されたことです。先にイスラエル批判のところで触れましたが、「人間の尊厳は最優先の価値である」という人権尊重が基本にあることです。
3,被害者の名誉毀損の禁止のために、その前提である虚偽の拡散に、重い罰則を付けて処罰し、厳しく対処する強い姿勢が特徴だと思います。
■では、この法律を他国と比較してみましょう。
日本は、 国の「ヘイトスピーチ解消法」は罰則がありません。
川崎市は、唯一、罰則付きの「ヘイトスピーチ禁止条例」を制定しました。 50万円以下の罰金第12条(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の禁止)とあります。
何人も、……公共の場所において、拡声機を使用し、看板、……を掲示し、又はビラ、……を配布することにより、本邦の域外にある国又は地域を特定し、当該国又は 地域の出身であることを理由として、次に掲げる本邦外出身者に対する不当 な差別的言動を行い、又は行わせてはならない。 (1) 本邦外出身者(……)をその居住する地域から退去させることを煽動し、又は告知するもの (2) 本邦外出身者の生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることを 煽動し、又は告知するもの (3) 本邦外出身者を人以外のものにたとえるなど、著しく侮辱するもの。 以上が12条です。
条文が非常に具体的です。実際に発言された言葉は(1)は「日本からたたき出す!」と
か、(2)は「死ね!」とか、(3)は「ゴミ、ゴキブリ」とか、さらに、口にするの
も憚れる暴言で、李大統領ではありませんが、「どうしてここまで残酷になれるか、と
ても人間とは思えない!」です。聞いただけでも恐怖です。在日コリアンの女性が防刃
チョッキを着用されていた、さらに腕にまで着用したということです。実際はさらにひ
どい悪口雑言で、植民地支配の歴史否定による激しい排斥、人格攻撃のヘイトスピーチ
があり、罰金付きの禁止条例が成立しました。でも、50万円では少なすぎる気がしま
せんか。
ドイツでは、ナチスの歴史否定は法律で厳しく対処していると聞いていましたが、実際は知りませんでした。
ドイツ刑法130条(民衆扇動罪)がそれで、罰則付きです(ウィキペディア2015改正版)
第1項 国籍・人種・宗教などによって定められる集団や、その構成員である個人に対して
、(「公共の平穏を乱すのに適した態様で」、)「憎悪をかき立て、あるいは暴力的ないし恣意的処置をとるよう扇動する」こと、(あるいはそのような態様で、)それらの者を誹謗中傷することにより、その人間の尊厳を攻撃する事を禁止する。 (3か月以上5年以下の自由刑)
第2項 1項に該当する内容の文章を配布・掲示・放送などすること、およびその為に当該文書を作成・調達などすることを禁止する。 (3年以下の自由刑又は罰金刑)
第3項 「(公共の平穏を乱すのに適した態様で」、)ナチスが行った民族謀殺を是認・矮小化
し、またはその存在を否定することを禁止する。(5年以下の自由刑又は罰金刑)
第4項 ナチスの「暴力的かつ恣意的支配」を是認・賛美・あるいは正当化することにより、「犠牲者の尊厳を侵害する態様で公共の平穏を乱す」ことを禁止する。(3年以下の自 由刑又は罰金刑) (注:自由刑とは、自由を束縛する懲役、禁錮、拘留)
人間の尊厳という言葉がキーワードのようです。
ドイツに行った時、生徒が先生の質問に「はい!」「はい!」と手を挙げる時も、手の平を拳にすると聞きました。
韓国は、 5年以下の懲役又は500万円以下の罰金です、懲役はドイツを参考にしたのかもしれませんが、高額の罰金は韓国独自の考えからでしょう。(ドイツの罰金は書いてなく、日本円でいくらかは不明)罰金は、川崎の10倍! 500万円! かなり痛い額ですね!
歴史の否定・改ざんを許さず、被害者の名誉と尊厳を擁護し、正義の実現に努力する国ですね!
■最後に、つい、日本と比べてしまいます。
最初に「慰安婦」問題が起った35年前は、日本政府は1年半、広範囲の調査を行い、その調査結果に基づいた政府見解=「河野談話」を発表しました。日本政府は、強制連行と慰安所生活の強制を認めた正しい事実認定の立場に立ち、誠実なお詫びを表明しました。政府が認めたので、すべての中学教科書に「慰安婦」が記述されました。これが右派を恐怖に陥れ(義務教育で教えられ、「慰安婦」問題が国民の常識になる恐怖)、教科書から「慰安婦」を消し去る、強制連行や性奴隷を否定する一大歴史否定の運動が湧き起りました。
本来は、ドイツや韓国のような、歴史否定を防止する賢明な政府があるべきですが、逆に安倍政権など政府と(自虐史観の)民間右派との連携・共同で、歴史否定政策が強行されたから、たまりません。
今や、歴史否定主義が通常・常識となり、文科省は一昨年、「日本軍が朝鮮の女性を強制連行した事実はなく、彼女らは報酬をもらって働いていた」という右派の主張を堂々と記載した中学用「国史教科書」を検定合格にしたのです! 許せません!!(もちろん、私たち全国行動は文科省への「抗議文」を作成して長時間抗議し、教科書ネット21とオール連帯は共催で、抗議の記者会見を開きましたが、焼け石に水です。なお、今年は同様の内容の高校用教科書は不合格になりました)
また、外務省は「外交青書」に「強制連行や性奴隷という主張は事実に基づくとは言えない」と記して、暗に、被害者は「嘘つき」と侮辱し、虚偽を世界に拡散しているので、韓国の改正法では、16条、17条違反で5年の懲役刑、または、500万円の罰金に当たるのです。
日本のこのような歴史否定主義に乗っ取られた状況を、みなさんとご一緒に何とか変えていく道はないでしょうか。(私たちは自分たちの力不足を深く反省しつつ)どうぞ、ともに考え、行動のご参加をよろしくお願いいたします!
【参考】
* 日本の支援者から資金受け「慰安婦被害者」を侮辱した疑い…韓国極右団体代表を起訴
ハンギョレ 5年間で800万円 (2026-04-14 06:38)
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/55924.html
* 正義連 声明
金柄憲(キム・ビョンホン)氏の捜査で明らかになった日韓極右ネットワークを糾弾し、司法府は今こそ厳正な断罪をもって歴史の正義を正せ!(2026-04-15)
https://www.restoringhonor1000.info/2026/04/blog-post_15.html
