昨年1123日にソウル高裁で出された判決、この判決を勝訴に導いた韓国弁護団が、125日に来日し、裁判がどのような経過で闘われたのか、被害者たちはどのような想いでこの裁判に訴えたのか、どういう丁寧な審議の末に勝訴判決を勝ち取ったのか、ということについて集会を開きお話を聞きます。



この判決が昨年11月に勝訴となった時に、日本政府はなんと言ったか。「国際法違反だ」「大変遺憾で、到底受け入れられない」と言った。政府の「国際法違反だ」と言うこのことを疑わない限り、政府の言うことをうのみにしてしまうことになる。

結論からいうとこれは決して国際法違反ではなく、特に市民的立場で考えると、こうした判決が検討されなければ私たち自身の権利、人権が危うくなるということ。ですからこの判決の内容について私たちは知ることによって、韓国とか日本とかそうした国境の壁を乗り越えて自分自身の人権を大切にするという見地から共に守っていくべき判決なのだ、ということをこの場で確認したい。



日本政府のいう国際法違反というのは、「主権免除」と言われている国際慣習法、「国家は他国の裁判には服さない」という国際慣習法に照らしたら、日本国は韓国での裁判に服さないということであり、国際法違反ということになる。



国を相手にして民間人が民事訴訟を起こすことはできないという法規が慣習法として成立しているというのが日本政府の主張です。確かに昔は完全な形で成立していた慣習法です。しかしこれは19世紀の末あたりから少しずつ例外が認められていって、完全無欠の国際慣習法ではなくなっています。

1000年以上も前の慣習法が今も何の修正もなく日本政府がそれに寄って立っていることは問題であることを見抜かなければなりません。19世紀の末から国家の商行為に対しては主権免除を認めない。

たとえば国家であっても他国に行って商行為をすることはあります。建物を建てたりするとき現地の工事者を使ったりして、そことの間に何らかのトラブルが生じることもありうる。そういうトラブルが生じたときに、こちらが外国の国家だから裁判に服する義務はありませんと言ってしまったら、被害を被った側は不当に感じます。そのため不法行為に関しては国家であっても主権免除は認めない、裁判にかけられるということが19世紀末からすでに始まっていて、今でもこれはほとんど確定されている。

例えば日本に来ている外交官が交通事故を起こして被害者が死んでしまったそういう時に、国家公務員が行ったことなので被害者が泣き寝入りするしかなかったが、しかし国家であっても不法行為を行った場合にはその国の裁判所で裁かれる、そういう不法行為というのも裁かれるということが、今やすでに確定している。これについては日本の中でも確定している。

さらに人権例外というのもある。

近年、多くの国で判決が出始めている。重大な人権侵害、たとえば日本軍「慰安婦」問題のように国家によって重大な人権侵害を被った被害者が人権侵害を告発して頑張ってきたがなかなか認められない時に最後の手段として自分の国の裁判所に訴えた。

たとえば日本軍「慰安婦」被害者の場合には、日本の裁判所にも訴えた、アメリカの裁判所にも訴えた、そして国連にも訴え、日本政府に直接外交交渉で訴えることを30年にわたってやってきたが、結局、被害者たちが望むような形では解決されていない、最終的には日韓合意と言う形で「終わった」と日本政府が言っていることに対して、この裁判の原告たちは訴えた。そういう場合に重大な人権侵害を被った被害者たちの被害回復をすることの方が、国益とか国家の威信とかいうことよりも重要だ、と考えるのが人権例外という考え方です。これは大変先進的な、進んだ考え方です。



実は韓国では人権例外を採用して原告たちを勝たせた裁判というのが、20211月にすでに出されていました。これも日本軍「慰安婦」被害者たちの裁判ですが、今回の裁判とは違う原告たちの裁判です。地裁で人権例外を認めて主権免除を排除して原告勝訴の判決を出し、日本政府はこれを無視したため地裁判決が確定しています。これは1次訴訟といわれているものです。


そしてもう一つ日本国を相手にして裁判が行われていて、これはあとから始まったので2次訴訟と言っています。その2次訴訟の判決も20214月に出されたが、この時は主権免除を認めて原告敗訴の判決を出しました。この時は日本政府はとても歓迎しました。それで2次訴訟の被害者たちは控訴をし、その裁判の判決が今回でたわけです。


今回でた判決は人権例外ではなく、不法行為例外を採用しました。そのため具体的に被害者たちがどういう不法行為によって被害を被ったのか、ということを丁寧に審議しています。これだけの不法行為による甚大な被害があった、しかもそれが連れて行かれるときにはみんな朝鮮半島にいた、現代の韓国で行われた不法行為に対して、責任のある日本国を訴えることは、ほとんどの国で、日本でも認められている主権免除の不法行為例外を認められるということで、今回、ソウル地裁判決を破棄して高裁で原告を勝訴させた。いずれにしても1次訴訟の人権例外、2次訴訟の不法行為例外、これらは私たち自身の人権を守るためにも、日本の市民が、世界の市民が共に大切に育てていかなくてはいけない国際世論にしていかなくてはいけない大切な判決だと私たちは思っています。



そこで1月25日、この判決を勝ち取った弁護団が直接日本に来て、これについて話してくださいますので、是非、ご参加ください。


この判決について、日本政府は国際法違反だというだけではなく、この裁判に一切かかわりませんでした。そして出ませんでした。上告もしなかったので高裁判決が確定しました。これは大変上から目線の高飛車な態度だと思います。

かつて同じ被害者たちがアメリカで裁判をした時には、日本政府はそれに必死に対応しました。意見書も出していましたし、ロビー活動もめちゃくちゃやっていました。なぜアメリカの裁判所だとそこまで頑張るのか、韓国の裁判所だとここまで無視するのか、そこにも日本政府の上から目線の高飛車な傲慢な態度が見て取れます。こうしたことを人権に立脚した知性的なお隣の国の判決を私たちは支持するのだという態度を鮮明にしてこの判決の意義を共に広めていきたいと思います。