[韓国民弁声明]日本軍「慰安婦」被害者の名誉と尊厳の回復のための歴史的な歩みを踏み出した司法府の判決を心より歓迎する。
私たちはこの判決が人道に反する重大な人権侵害事件であり、最終的手段として選択された民事訴訟にまで国家免除を適用することは裁判を受ける権利を保障した私たちの憲法秩序および国際人権規範に符合しないという点を明らかにした最初の判断であり、特に国際人権法上の「被害者中心主義」を積極的に反映することによって世界の人権史に新しい道しるべを示した歴史的判決として評価する。あわせて「慰安婦」被害者に対する日本国の法的責任を明白に認めて日本国、日本軍が行った反倫理的戦争犯罪を確認し、この判決を歴史に記録することを通じて原告をはじめとする「慰安婦」被害者の名誉と尊厳性が少しでも回復することを心より願う。
この事件の主な争点は国家免除理論がこの事件訴訟にも適用することができるのかどうかであった。この間、国家免除論という国家中心の国際慣習法理によって深刻な人権侵害の被害者たちは長きにわたって最小限の実効的救済を受けるための司法に接近する権利までも認定されなかった。
しかし、今回の判決では国家免除論は恒久的で固定的な価値ではなく、国際秩序の変動により継続して修正されている点、国家免除は手続き的要件に関することではあるが、手続き法が不充分であることによって実体法上の権利や秩序が形骸化されたり歪曲されてはいけない点、国家免除論は絶対規範(国際強行規範)に違反して他国の個人に大きな損害を負わせる国家がその背後に隠れて賠償と補償を回避できる機会を与えるために形成されたのではないという点を認定した。
何より今回の判決は、「慰安婦」被害者にとって他の救済手段がないという点、他の救済手段がないため最終的な手段として選択した民事訴訟に対して裁判権が免除されると解釈するならば、これは憲法で保障された裁判を受ける権利を剥奪するということであり、憲法秩序全体の理念に合わない点、被告が対外的に主張するように1965年請求権協定や2015年韓日合意によって「慰安婦」問題が解決されたのではないという点を正確に指摘したことでその意味が大きい。
これにより裁判所は日本政府が主張する国家免除論を否認し、被告である日本国の日本軍「慰安婦」に対する真実と法的責任を明確に明らかにした。この間「慰安婦」被害者は日本政府に対し法的解決を促してわが政府に対しても外交的保護権の行使を20余年間にわたって主張してきたが、どこにおいても権利の救済を受けることができなかった。
特に日本政府は日本軍「慰安婦」問題が1965年請求権協定で解決されたという主張だけを繰り返し、明らかな不法行為の責任を認めなかったし、日本の最高裁判所は1965年請求権協定で日本の裁判所に裁判を請求する権利がないとの判決をくだすことによって、裁判所の閂をかけて締め出した。
このような状況で原告が最終的手段として選択した今回の訴訟を無視せず「慰安婦」被害者の呼びかけに積極的に応じたという点で裁判所は人権の最後の砦としての役割と真の法治主義の実現という任務を全うしたものということができる。
あらためて裁判所の今回の判決を歓迎し、さらにこの判決が今日の国際社会が持続的に発展させてきた国際人権規範形成の始発点になることを期待する。
2021年現在の被害者の年齢は90を越えている。日本政府はこれ以上遅くなる前に原告をはじめとする「慰安婦」被害者に心からの謝罪し、いまからでも被害者に対する法的責任を履行することを願う。
すべての被害者が亡くなれば惨憺たる過去の過ちに対して直接許しを請う機会さえ失ってしまうという点を肝に銘じなければならない。
私たちは日本政府が上記の判決の結果を謙虚に受け入れて原告に心より謝罪し、判決にともなう賠償を行うよう強く求める。
来る1月13日、もう一つの「慰安婦」被害者らが日本国を相手に提起した損害賠償訴訟の1審判決(ソウル中央地方法院第15民事部、裁判長ミン・ソンチョル)宣告が予定されている。もう一度今回の判決のように国際社会が追求している国際人権規範に沿って「慰安婦」被害者の名誉と尊厳を回復し、歴史の正義を立て直すことができる判決が宣告されることを願う。
2021.1.8
民主社会のための弁護士会
会長 キン・ドヒョン
(訳 方清子)
<原文>
<English 英文>
Seoul Central District Court1 The 34th Civil Chamber Judgment (1・8慰安婦判決要旨)
http://minbyun.or.kr/wp-content/uploads/2021/01/ENG-2016_Ga_Hap_505092.pdf