日本の「主権免除」主張、ひっくり返してみると... 「慰安婦動員は国家主導」(総合)
2021-01-18
主権免除を除外する法律をつくってまでも慰安婦判決を批判
「死亡・肉体および精神的傷害の賠償は裁判で免除されない」
「主権免除は絶対的権利ではない」国連条約でも署名・批准。
(東京=聯合ニュース)イ・セウォン特派員=日本政府は、日本軍「慰安婦」被害者に賠償を命じる判決が国際法違反だと主張しているが、10余年前に人的被害の賠償責任などは主権免除対象から除外されるという趣旨の法を制定したことが確認された。
主権免除は絶対的権利ではなく、制限的に認めることは、国際的な流れに合致するとして条約に署名もしておいて日本軍「慰安婦」判決を批判する理由に疑問が提起されている。
18日(現地時間)、日本法務省などによると、日本は2009年4月24日に「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」(以下法律)を制定・公布した。
同法10条には「人を死亡させたり、けがをさせるなどの行為に対しては主権免除が認められない」という趣旨が反映されている。
(東京=聯合ニュース)イ・セウォン特派員=日本政府は、日本軍「慰安婦」判決が主権免除の原則を否定したと非難しているが、10年余前に主権免除の例外を制度化する法律を作り、関連条約まで締結したことが確認された。 日本が2009年4月24日に公布した「外国などに対する我が国の民事裁判権に関する法律」(右)10条と、日本の国会が2009年6月10日に承認した「国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約(略称:国連国家免除条約)」(左)12条には死亡もしくは傷害などの事件に関する賠償問題では外国政府の裁判権免除を認めないという、いわゆる主権免除の例外に関する内容がそれぞれ記述されている。
当該条項は、「外国等は、人の死亡若しくは傷害又は有体物の滅失若しくは毀損が、当該外国等が責任を負うべきものと主張される行為によって生じた場合、当該行為の全部又は一部が日本国内で行われ、かつ、当該行為をした者が当該行為の時に日本国内に所在していた場合は、これによって生じた損害又は損失の金銭的な保全に関する裁判手続について、裁判権は免除されない」と規定した。
簡単に言えば、他国政府が日本で人を死亡させたり、怪我をさせたなら、これによる被害を賠償せよという訴訟が提起された場合、主権免除を認めないという意味だ。
法律は外国政府などが日本の裁判権が免除されない場合を列挙し、このように死亡または傷害事件などによる被害が生じた場合、裁判を受けなければならないと規定した。
日本の国会議事録によると、法律制定に先立ち、国会審議が行われていた2009年4月16日、日本政府当局者は、参議院法務委員会に出席し、「過去には主権免除が絶対的であるように思われていたが、最近は制限的に認められている」として、法律制定の時代的背景を説明した。
倉吉敬法務省民事局長(当時)は、10条に登場する傷害の意味に関し、「肉体的傷害だけでなく、精神的傷害も含まれる」とし、「相違ない」と強調した。
1993年8月4日午後、日本首相官邸で日本軍「慰安婦」問題に関する日本政府の調査結果を発表する河野洋平当時の官房長官。 [京都=聯合ニュース資料写真]
同会議に出席した森英介法務相(当時)は、「人の死亡または傷害とした法律案第10条が定めるような場合には、それによって生じた損害賠償などについては、我が国の裁判所で裁くべきだと考え、この法律案を提出した」と説明した。
日本は、自国が他国の裁判所で享受する主権免除の制限を受け入れる条約まで締結している。
2007年1月11日に日本が署名し、2009年6月10日に国会で承認した「国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約(略称:国連国家免除条約)」(以下条約)第12条は、死亡・傷害等による被害の金銭的賠償を要求する裁判手続きについては、裁判権は免除されないと主権免除の例外を規定した。
北野充外務大臣官房審議官(当時)はこれに対し、法務委員会で「人の死亡、身体の傷害、または有体財産の損傷・滅失を起こした場合には、そうした人の死亡に対する金銭補償に関する裁判手続きにおいて、外国は法廷地の裁判所裁判権から免除を受けないという規定」と説明した。
ただし、この条約は30カ国が参加して初めて発効するもので、国連が公開した条約情報によると、最近まで28カ国が署名しており、未発効の状態だ。
諸般の事項を総合すると、日本は外国政府が自国内で死亡・傷害などを起こした場合、主権免除を受けられないよう法を作り、他国の裁判所が同じ状況で裁判する場合、日本もまた主権免除が制約されるという趣旨の条約を批准したのだ。
日本は死亡や傷害など人的被害を伴う状況などに対して主権免除が適用されないと積極的に制度を構築してきたわけだ。
こうした中、日本軍「慰安婦」問題と関連し、自国に不利な判決が下されるや、主権免除の原則を無視した判決であり、国際法違反だと主張した。
このような態度は一貫性がないという指摘も生んでいる。
他国が自国民の生命を奪ったり、身体・精神的被害を与えた場合は主権免除を認めないとしながら、自国が起こした加害行為に対しては主権免除を適用して裁判を受けないという主張と解釈できるからだ。
日本政府が条約や法律で主権免除を認めないのは「私法的行為であり、国の公権力を動員して行った『主権的行為』については、依然として主権免除の原則が認められる」との立場を固守しているとの解釈もある。
日本軍「慰安婦」の動員は私的な不法行為ではなく、国家レベルで行われた主権的行為なのだから、これについては韓国が裁判管轄権を主張できないという主張であるわけだ。
しかし、このような主張を展開するのは、日本政府や軍が組織的に乗り出して慰安婦を動員して慰安所を運営・管理したということを自ら認めることになる。
もちろん、慰安所は当時の(日本)軍当局の要請によって用意されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送に関しては、旧日本軍が直接または間接的にこれに関与し、慰安婦募集に官憲が直接加担したりもしたというのはすでに日本政府が「河野談話」でも確認している。
東京の国立公文書館が日本の市民団体に公開したバタビア軍法会議判決文。 ここでは、第2次大戦中に日本軍がインドネシア内の捕虜収容所でオランダの女性を強制連行して慰安婦にしたという内容が明記されている。 [京都=聯合ニュース資料写真]
ただ、日本の政界では最近、このような歴史的事実をぼかそうとする動きが活発な状況だ。
こうした中、主権免除を主張することは、加害者が日本政府という点を浮き彫りにする結果を生む恐れがある。
法的責任を免れようとして日本が戦争中に女性に加えた国家暴力を広く知らせる状況が起り得るということだ。
実際、日本政府は記者会見で、今回の判決は「主権免除のため、原則的には無効」と主張しているが、具体的にどのような側面で問題なのか詳しく説明していない。
この問題を突き詰めると、日本軍「慰安婦」動員が国家が行った暴力だという点が明確になる状況を避けるためのものという疑念を拭いがたい。
日本政府は主権免除と主張しながらも、日本軍「慰安婦」動員が主権的行為だったのかについては、慰安婦訴訟では立場を明らかにせず、裁判手続きにも応じなかった。
2015年12月28日、尹炳世当時、韓国外交部長官と岸田文雄、当時の日本外相が、ソウル鍾路区都染洞外交部で開かれた共同記者会見で、日本軍「慰安婦」の交渉が妥結したと発表した後、握手している。
もちろん、主権的行為だという理由で、無条件に外国の裁判所の裁判の免除を受けることができるわけではないというのが、最近日本軍「慰安婦」訴訟を担当した韓国裁判所の判断だ。
ソウル中央地裁は日本軍慰安婦の動員が「日本帝国によって計画的・組織的に広範囲に行われた反人道的犯罪行為であり、国際強行規範に違反したもの」とし、「国家の主権的行為だとしても、国家免除を適用することはできず、例外的に大韓民国の裁判所に被告(日本政府)に対する裁判権がある」と判決した。
日本軍「慰安婦」動員が日本という国家レベルで行われた反人倫的犯罪であり、裁判権免除対象ではないと判断したものだ。
sewonlee@yna.co.kr
(訳 Kitamura Megumi)
<原文>
https://www.yna.co.kr/view/AKR20210118000551073