〈尹美香氏裁判 2022年6月10日第13回公判〉検察、吉元玉ハルモニ、すべての女性人権活動「自らの意志ではない」と主張~息子と妻、ハルモニの「慰安婦」問題解決運動には無関心~
法律ドットコム=
検察が認知症の吉元玉(キル・ウォノク)ハルモニを相手に寄付させるなど、準詐欺を犯したという疑いで尹美香(ユン・ミヒャン)議員を起訴したことに対する公判で、吉元玉ハルモニの息子夫婦が(ハルモニは認知症だが)自分たちに行った行為は正常な精神によるものだったという趣旨で陳述して議論になる。
10日午前、ソウル西部地方裁判所刑事合議の11部(部長判事ムン・ビョンチャン)審理で尹美香国会議員と韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)、日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)関連13回公判でのことだ。
この日、吉元玉ハルモニの養子とその妻が検察側証人として吉元玉ハルモニの健康状態などをめぐって順次陳述を行った。
まず、証人席に立った息子Aさんは、検察の聴取当時、ハルモニが「短期記憶障害」で「認知症」と陳述したが、「(短期記憶障害ではなく)記憶が途切れがち」と語ったという。認知症だとは思えなかった」と話した。
そして「賢明な方なので、高齢のせいで記憶が途切れがちなのだと思った。ことばもみんな理解した」とし「(大小便を見分けられない)そんなことはない。夜に(孫英美ソン・ヨンミ)所長に苦労をかけているとばかり言っていた。精神力が強かった」と証言した。
彼は吉元玉ハルモニが1998年登録以後2004年に挺対協が運営するシェルターに移住した後、週1回訪問し、毎日2回電話で安否を尋ねたが、当時は吉元玉ハルモニの認知症症状はなかったという。ただ、2020年6月に仁川に連れて行った後で、病院で診断を経て認知症だと確認したという。
妻も同様に証言した。
彼女は、「認知症症状というよりは短期記憶問題と聞いた。お歳が90歳を超えているので、そうかなと思った」とし「2020年6月、仁川に来られた後、病院の診断を受けたところ認知症状態だった」と話した。
結局、ハルモニの息子夫婦もまたハルモニを度々訪ねて連絡をしたが、認知症だとは認識せず、最近になってわかったということで、この場合、2020年の息子Aさんの養子入籍過程はもちろん、吉ハルモニの尹美香議員を相手どった告発、妻のBさん のハルモニの国家による支援金管理なども問題となることになる。
2020年5月に行われた養子入籍過程も釈然としないと伝えられる。吉元玉ハルモニが実際に養子入籍に同意したかどうかを尋ねる質問に息子と妻はハルモニが同意したとしたが、実際の養子縁組書にハルモニが署名したかどうかは明らかではない。息子Aさんは「母に署名をもらったと思う」と言ったが、妻のBさんは「母が直接署名したんですか?
覚えていない。それは違うと思う」と、互いに違う回答をした。
尹美香議員を相手どった不当利益金返還訴訟の原告が吉元玉ハルモニであることについても、Bさんは「母が正常な時にした」としながらも「24時間認知症ではないからこちらの言うことを聞き取って意思表現をするが、正常な意思表現だと判断するのは難しい」
と言って吉ハルモニの自由意志による訴訟であるととることができるかどうか疑問を投げかけた。
吉元玉ハルモニの政府支援金、賞金など通帳にあるお金をめぐっても妻の認知症の有無判断は一貫していないように見えた。
吉元玉ハルモニは毎週シェルターを訪れる息子に少ない時は5~10万ウォン、多い時は50~60万ウォンを小遣いとして渡したが、妻のBさんは認知症状態ではなく、精神がはっきりしていた時だとした。
また、現在ハルモニに支給されている国家支援金を妻が管理しているが、吉ハルモニがこれに同意するときは「許可された」という回答で完全に正常だったということだ。彼女は現在、吉元玉ハルモニ名義でインターネットバンキングを使用している。
しかし、家族は2015年から2020年まで、挺対協・正義連のシェルター在住当時、息子にお小遣いと1000万ウォンを与えた以外のすべての活動は吉ハルモニが認知症状態時だったとの主張を繰り広げた。
吉ハルモニは2017年、正義記憶財団が市民募金で集めた女性人権賞とともに受け取った1億ウォンのうち5千万ウォンを吉元玉女性平和賞として寄付したが、これをめぐってBさんは「認知症というのは24時間おかしいというわけではない、 瞬間瞬間に元に戻ることもあるが、5千万ウォン以上寄付するのは母の意思ではない」と話した。
このうちの1千万ウォンを息子に与えるときは正気だったのかという弁護人の質問には言葉を濁らせた。
判事が養子縁組と民事訴訟などについて平常な精神であったかどうかを重ねて確認すると、「正確な判断は医師がすることで、私が判断するのは難しい」とも話した。
妻のBさんが管理する国家支援金と関連して、彼女は「今年から介護費があがった。介護費が400万ウォン入ってくる。合わせておよそ600万ウォン以上入ってくる」とし「介護費が高くて500万ウォン以上かかる。一般生活費で100万ウォンかかり、50~60万ウォンが残る」と話した。
これは、孫英美所長が管理したのは認知症患者を利用したものであり、自らが管理したものはそうではないという主張と解釈される。
吉元玉ハルモニ、遺言で「賠償金出たら貧しい人々に」
一部メディアで論争になった吉元玉ハルモニの遺言の手紙と映像もこの日公開された。妻のBさんは検察で「息子が元気なのに、私たちも知らない遺言なのでとても驚いて映像を見てみると、私の母と尹美香前代表が問答する映像だったが、映像の内容は私たちの母親の死後に葬儀手続きを挺対協に一任して日本から賠償金が出たら在日朝鮮学校に支援するということだった」と陳述した。
しかし、この日公開された2019年5月4日付遺言映像にはBさんの陳述内容はなかった。吉元玉ハルモニと尹美香当時正義連理事長が問答する映像には「(賠償金を受けとったら)わが国の貧しい人々に使う。貧しい人はいつも大変だから」という内容があるだけだ。
ただ、映像撮影の前日である5月3日に吉元玉ハルモニが直接作成した遺言の手紙には「私の葬儀を行うこと、残りの私に関連するすべてのことを整理することを挺対協の尹美香代表に任せます」と書かれているだけで、在日朝鮮学校を支援するという内容はなかった。
息子と妻はハルモニの「慰安婦」問題解決運動には無関心
吉元玉ハルモニの家族として「愛」を強調した息子と妻は、実際にハルモニの日本軍性奴隷制問題解決運動の活動には無関心だった。
2017年、あるマスコミとのインタビューで「母親の秘密を知り、心強い支援者になった」という発言したことをめぐって息子Aさんは「うわべの言葉だった」と話し、「慰安婦」問題への関心を問う質問には「関心ない」と明らかにした。
妻のBさんは、吉ハルモニが熱意を持って運動したのではないかという判事の質問に「24時間(挺対協が)世話をした。そこに染まってそうなることはあり得るだろう。 そんな活動を(挺対協が)説明すれば、私にはできないとは言えないだろう」と返答。傍聴席からはため息がもれた。
一方、裁判で公開された映像で吉ハルモニは次のように語った。
「息子だといっても法律上そうなっていないから、いくら言いはってみても、できないことは自分たち(息子たち自身)が分かっている。無理やりにはできないよ。できることをやるならいいが、できないことを無理やりやろうとしても無駄だよ。
(ハルモニ、誰に最後までお世話してほしいですか?)
所長がいるじゃないの。息子より百倍良いよ。 私が気が楽だから。
(息子さんがハルモニのお世話をしたいと言っているじゃないですか)
いいや、嘘は長続きしないから。あの人たちも世話したかったらここにくる前に迎えにきただろうに。そうじゃないよ。私が年を取って老いてしまったから、こうしようと言えばこうするし、ああしようと言えばああするけれど、息子が無理に連れて行くといってもそれは違う。私がここで暮らすと言えばそれまで。行こうと言ったら夢のようなことを言っていないで静かにゆっくり生きられるように放っておいてくれって言えばいいだけだよ。ここは気が楽だが、あそこは心が楽ではないから」
*14回公判は6月20日に開催される。
(訳 方清子)
〈原文〉
http://m.lawyersite.co.kr/a.html?uid=5588&sc=&sc2=