尹美香氏裁判(2022.2.25 第10回公判)挺対協元職員「寄付は良心の選択」……検察「それで褒められたのか」
法律ドットコム 2022年2月26日
<取材 インターネット言論人連帯取材本部 編集 李ジェサン記者>
「称賛されたか?」、「同僚たちと分けたらどうか?」という検察の皮肉っぽく非常識な質問が証人にされる。国家補助金詐欺などの容疑で起訴された尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員の第10回公判でのことだ。
韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の前職員だったAさんは、女性家族部の国庫補助金事業から受取った人件費を挺対協に寄付した理由について、「良心の選択だ」と述べた。また、国庫補助金が無駄に使われないよう、銀行振替の手数料500ウォンも惜しんで女性家族部の日本軍「慰安婦」被害者の支援事業をしてきたと確認された。
2月25日午後、ソウル地方法院 刑事合議11部(部長判事;文ビョンチャン)の審議で尹美香国会議員と挺対協・正義連(日本軍性奴隷問題解決のための正義記憶連帯)関連の第10回公判が開かれた。
検察側は寄付行為を皮肉ったが、挺対協職員たちの献身性が浮かび上がった
この日の公判は、女性家族部の国庫補助金事業から支出された人件費を受取った上で挺対協に寄付した前職員が証人として出席して注目を受けた。
Aさんは2013年1月から2015年1月まで、挺対協で主に広報事業を担当したが、2014年には女性家族部の日本軍「慰安婦」被害者治療事業を担当した。2014年から自分が被害者支援業務を引き受けたいという意思によるものだった
Aさんは2014年当時、女性家族部の被害者支援事業として策定された月150万ウォンの人件費を受取り、これと同様の金額を挺対協から月給として受け取った。このうち女性家族部被害者支援事業の専任者として受け取った人件費は、自分から進んで挺対協へ寄付した。
検察側はこれを、国庫補助金の人件費を挺対協へ「返還」した詐欺行為だと主張したが、前職員は「寄付行為」だと証言したので、検察側は面目を失うことになった。
Aさんが重ねて「寄付」だと答弁を繰返すや、これに満足しない検察はAさんに、「(治療事業で)単純なカード整理でなく、とても働いたと述べたが、ひと月分の月給を挺対協へ寄付したのか?」、「寄付しろと誰が指示したのか?」、「立派な職員が立派なことをしたと称賛されたか?」、「そんなに勿体ないなら、挺対協へ寄付するのでなく、同僚たちと分ければよいのではないか?」と質問した。
これにAさんは検察側に対して、「攻撃的」だと強く反発しながら、「(尹美香)代表が外で講演したら、講演謝礼をそっくり挺対協へ寄付するのを見た。ずっと述べている通り、挺対協活動に協力したくて寄付行為をしただけなのに、まるで犯罪行為を追求されているようだ。なぜこの場で同じ話を反復しなければいけないのか理解できない」と反駁した。
挺対協、国庫補助金の銀行手数料500ウォンまで惜しんで「慰安婦」被害者支援事業を展開
この日の証人尋問で、2014年に挺対協が初めて遂行した女性家族部の日本軍「慰安婦」被害者治療事業の内訳が公開された。銀行手数料500ウォンまで惜しんで国庫補助金が無駄に使われないように努力した事実が確認された。
挺対協は2014年、女性家族部から日本軍「慰安婦」被害者の治療事業の執行を依頼されて遂行した。2013年まで韓国女性人権振興院が担当したが事業遂行が難しく、挺対協が担当することになったものだ。
そのために女性家族部の職員が挺対協を訪問して事業遂行を要請し、これを受けて挺対協は、事業公告期限の2013年12月を超える2014年1月に事業申請書を提出した。挺対協は生存者福祉事業の一環として既に被害者支援事業をしていたので、女性家族部の事業を遂行するのに適切だったと見える。
しかし、既存の生存者福祉事業と違い、女性家族部は被害者健康治療費支援事業が追加されていた。被害者の健康治療支援事業は、被害者たちの非給与の治療費支給のための「ヒーリングカード」支援と管理だ。
Aさんは、「当時、女性家族部の担当者が挺対協の事務室を訪問して、治療事業を挺対協が担当することを要請した」、「(挺対協生存者福祉事業と女性家族部事業の)大きな違いは、女性家族部とウリ銀行が協約して、ヒーリングカードを生存者ハルモニたちに支給して非給与の治療費として使うようにした事業だ。この部分は、挺対協が行っていない事業なので差異があった」と説明した。
挺対協は2014年に女性家族部の国庫補助金支援事業を遂行して、被害者支援のための計画を細かに立て、国庫補助金が無駄に使われないように努力した様子が事業計画に表れていた。
この日の公判で提示された証拠によれば、2013年韓国女性人権振興院は情緒的安定、健康治療、経常運営費に事業を分けて予算を執行したが、2014年挺対協は人件費、管理運営費、全国巡回訪問、情緒的安定支援事業、健康治療費支援事業などに区分して事業を執行した。
予算でも韓国女性人権振興院は、情緒的安定事業2,800万ウォン、健康治療事業9,700余万ウォンを策定した。一方、挺対協は全国巡回訪問800余万ウォン、情緒的安定支援事業4,500余万ウォン、健康治療費支援事業1億2,000余万ウォンの計画を立てた。
とくに経常運営費の場合、韓国女性人権振興院は3,300余万ウォンを予算計上したが、挺対協は2,800余万ウォンと経常費を減らし、最大限に被害者支援へ国家補助金を使えるようにした。
挺対協が策定した経常費のうち人件費は1,800余万ウォンだけだったが、これは韓国女性人権振興院が2013年に策定した人件費よりも低い水準に見える。
Aさんは、「事業計画書を見るなら、予算は増えたが人件費の比重が下がったことに関して、ハルモニたちがもっと支援を受けて支援金の比重を増やそうとしたと考える」、「事業結果報告書で、ハルモニたちに支援される健康治療費項目が前年比で30%以上増えた。ハルモニ支援金額を拡大させることで、人件費は前年比で確実に減少した」と述べた。
この過程でAさんは、「国庫補助金の銀行手数料500ウォンまで節約するために努力した」と明らかにした。
AさんはK銀行が主な取引銀行だったが、女性家族部の国庫補助金はO銀行口座だったので、他銀行振替時に生じる手数料500ウォンを節約するため、K銀行ではない自身のO銀行口座を人件費支給通帳に活用した。
Aさんは、「補助金通帳口座は、O銀行と女性家族部の協約でO銀行だけ使用可能だった。私のO銀行口座から人件費を支給すれば手数料500ウォンが不要だ」、「国庫補助金500ウォンを他に活用できるから、私の口座を使って国庫補助金500ウォンを節約しようとした」と述べた。
しかし挺対協は、2014年だけしか女性家族部事業を遂行しなかった。市民団体の独立性が損なわれるとの理由からだった。
実際、Aさんによれば、女性家族部は「父母の日」に被害者たちへ「女性家族部」の名前が入った花を送るよう」指示したという。しかし病院入院中の被害者は花を受け取れず、「慰安婦」被害者と公開されるのを嫌うハルモニたちにも「女性家族部」の名前が入った花を送れなかった。
また他の例として、女性家族部が祝日の贈物として「干柿を届けろ」という指示は、挺対協として従えなかったという。
Aさんは、「当時、(贈物の)受取拒否したハルモニに関する意見を提起して女性家族部と摩擦もあった」、「女性家族部の名義で祝日の贈物をしたが、ハルモニの健康状態としては当時、良く咀嚼できないハルモニもいて、便秘のハルモにもいて、干柿の摂取が難しい問題があるなど、事業遂行に難しい点があった」と述べた。
日本軍「慰安婦」被害者の状況をよく把握できないで事業実績を重視する女性家族部との摩擦で、挺対協は結局、2015年の事業申請をしなかった。
挺対協が被害者支援に努力した証拠が提示されたのに、検察は「挺対協は被害者支援団体なのに、なぜ被害者に一部しか支援しなかったのか?」とゴリ押しした。
するとAさんは、『挺対協は日本軍「慰安婦」問題解決のために毎週水曜デモをして、戦争と女性人権博物館も設立・運営して被害ハルモニのための生存者福祉活動もした。』、『挺対協は生存者支援活動もするが、「慰安婦」問題を知らせ、問題解決のための市民団体の性格が強く、問題解決の全般的活動に事業費が使われた」と反駁した。
「挺対協の最終意思決定は代表者会...月給150万ウォンの活動家が尊敬に値する」
一方でこの日検察はAさんの尋問を通して、挺対協・正義連の最終決定権者は尹美香常任代表であると立証しようとした。だがAさんは、「毎週、事務所で会議をして、毎月の実行理事会があって、詳細に報告して、毎年の代表者会議で報告する体系だ。最終意思決定は実行理事会、代表者会だ」と述べた。
「(職員)7名が互いに机を突き合わす非常に狭い空間で活動した。いつも夜遅くまで残業して、明るいうちに帰宅できたらとてもうれしかった記憶」で、「(月給150万ウォンに)初めは驚いたが、10年以上活動した活動家や常任代表が一般的に低い金額なので、不満というより、やるせなく、尊敬の念を抱いた」と証人は述べた。こうして検察は、挺対協活動家たちの献身性を聴く羽目になった。
次回、第11回公判は3月18日で、裁判部の人事異動による公判更新手続きが行われる予定だ。
(訳 権龍夫)
★次回公判は4月8日に延期になりました。
理由は検事がコロナに罹患したためということです。