〈戦時性暴力問題連絡協議会〉第85回 水曜行動 in 新宿 月間報告 池田恵理子 (2025.3.19)
3月は歴史的に大きな災害や事故が起こった月です。
80年前の太平洋戦争では3月10日に東京大空襲があり、30年前の3月20日はオウム真理教の地下鉄サリン事件、そして14年前の3月11日には東日本大震災が起こりました。ですから、私たちに関係の深い3月8日の「国際女性デー」は小さな記念日に思われそうですが、これも非常に重要な日です。
去年10月に国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)が8年ぶりに日本の女性差別の状況を審査し勧告を出しました。これにはもちろん「慰安婦」問題も入っており、これまで何度も勧告を受けているのに日本政府は一向に対応してこなかったことへの厳しい言葉もありました。教科書から「慰安婦」記述が消されたことも厳しく指摘されました。
ちょうど1カ月前の水曜行動の日に様々な女性団体が集まり、このCEDAWの勧告について外務省が説明をする・・・という集会がありましたが、そこでも外務省からのきちんとした応答はありませんでした。
ところが勧告の中に、「皇位継承を男系男子に限っている皇室典範には改正が必要だ」という項目があったことには政府は強い憤りをみせ、日本からCEDAWへの拠出金をやめさせる、CEDAWの委員の訪日の予定を断るという行動に出ました。私たちは2月28日、様々な女性団体と共に外務省前で抗議行動を行いました。それまでにも抗議集会や署名活動、国会議員への説明なども行ってきましたが、未だに事態は変わっていません。このような状況は、今の日本の実情をあらわしていると思います。
3月8日の「国際女性デー」に関連して、2000年の女性国際戦犯法廷の共同代表だったフィリピンのインダイ・サホールさんから「3月18日にニューヨークの国連本部のワークショップで女性法廷を取り上げるので、日本からのメッセージが欲しい」と要請がありました。そこで全国行動からは短いメッセージを送りました。
女性法廷は「慰安婦」被害の事実認定と、昭和天皇など日本の責任者に有罪判決を出し、その後、様々な国の戦争や紛争での戦時性暴力の責任者を裁く民衆法廷に弾みをつけました。女性法廷には64人の被害女性が参加しましたが、その判決は彼女たちの励みにもなり救いにもなりました。しかし日本政府は25年経っても、一向に解決に向けた歩みを見せていない・・・と言うしかありませんでしたが、短いビデオメッセージを送りました。
今日はこの女性法廷から25年が経つにあたり、金富子さんから報告をしていただくので、みなさん、しっかり聴いていただきたいと思います。
この1カ月の間には、日韓問題に関してもいくつもの動きがありました。朝鮮半島が日本の植民地支配から解放されて80年が経ち、その後南北に分断されましたが、日韓基本条約からは60年が経っています。
ところが、「慰安婦」問題が解決されていないように、植民地時代の強制動員問題も未だに解決できていません。これに関しても日鉄や三菱重工といった関連会社に対する要請行動では、2月14日に私たちの団体からもメンバーが参加して声をあげました。
また日本における在日コリアンへの差別は依然として残っており、深刻になっています。例えば高校無償化の動きの中で朝鮮学校だけが外されているのは差別だ…と批判してきましたが、まだ状況は変わっていません。忌々しい状況です。
もうひとつ、同じく日本の殖民地だった台湾では、この3月8日の「国際女性デー」に台北の「慰安婦」資料館、「アマの家」=「平和と女性人権館」で、「慰安婦」問題の調査をまとめた本の出版記念イベントが行われました。これは、台湾、日本、韓国、中国の専門家たちによる台湾で初めての「慰安婦」問題の学術書だそうです。『歴史正義と人権の呼びかけ』というタイトルで、「『慰安婦』問題に対する日本の責任追及を決して諦めない」という副題がついています。このような報告を聴くと、台湾も頑張っているんだということがわかって、嬉しくなってきました。
「慰安婦」問題は日本政府によって無視され、なかったことにされて、メディアもなかなか取り上げないので、みなさんも「解決したんじゃないの?」「もう終わってるんでしょ」と思われる方がいると思いますが、未解決のままなんです。私たちは戦争体験者ではなく、日本軍兵士だった私たちの父や祖父の多くも亡くなってしまいましたが、この国に生まれ育っている者の責任として、解決していかねばならない問題だと思っています。
みなさんは今配っているチラシをご覧になり、「慰安婦」問題に関心をもっていただきたいです。「慰安婦」問題は女性差別の問題と深く結びついているのですから、是非ごいっしょに取り組んでいこうではありませんか。