http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/05/21/2020052180017.html?fbclid=IwAR0kEBjFK2l9Bejmy91owkOGIfI-9vH-wmdf5usFDIQdGVC-X9X7w-PFS_I

 韓国の尹美香・正義記憶連帯(正義連)前代表と正義連に関する韓国保守メディア(朝鮮日報、中央日報等)の報道を読むたび、それらが悪意に満ちた歪曲であり誤報であるということが分かる一人として、真実を語らなければならないと思いつつ、何を言っても歪曲して出す保守メディアのやり口を見ていると、私が何かを言うことで迷惑がかかるるのではないかと心配になり、この間、慎重にならざるを得なかった。しかし、朝鮮日報のこの記事には、当時を知る者として黙ってはいられない。

問題点が2つある(他にもありそうだが、とりあえず目に付く大きな問題2つ)。
一つは、和田春樹氏が当時から挺対協と私たち(8ヵ国の被害者と支援者)が提示した解決策(「日本政府への提言」)を全く理解せず、いくら説明しても自分なりの理解に執着して考えを改めようとしなかったことだ。

 立案した私たち自身があなたの理解は間違っていると言っているのに、立案者でもない自分の理解が正しいと執着することは、あまりにも暴力的だ。朝鮮日報の取材に対して和田氏自身は自分なりの「善意」で答えたのだろうと思う(私は、和田氏は基本的に善良な人だと思っている。しかし、自分の誤解や勘違いを正すことのできない「善」は、本人の意図から離れて暴力に繋がる可能性があるということを証明してくれる人でもある)。

 まさに和田氏が勘違いと誤解に基づいて発言し行動することが、当時も、そして今も、私たちにとっては迷惑でしかないことを和田氏は知るべきだ。

2つ目は、そのような和田氏の勘違いと誤解に基づく間違った認識、そして彼なりの「善意」まであえて曲解して「和田氏の証言は、尹氏が2015年12月の慰安婦問題合意前、両国間の交渉に影響を与える案を提示し、実際に発表されると反対したという疑惑を日本側から提起したものだ」と臆面もなく書く朝鮮日報の意図だ。朝鮮日報がこれまでに展開してきた全ての報道がこんな調子だ。真実を知っている者の話は聞こうともせずに、尹前代表と正義連を貶める上で役に立ちそうな端緒が見つかりさえすれば歪曲してまで記事を出す(これについてはもう分かっている人たちも多いと思うので、これ以上は言わない。どうか魔女狩りに振り回されない健全なリテラシーを持つ人が増えることを願うばかりだ)。

 記事の中で和田氏は「2014年のアジア連帯会議決議文に法的解決要求が一切なく、日本政府を説得できる転換点と見て、尹氏に2015年の合意文発表まで4-5回会った」と言っている。まさにこれが和田氏の誤解であり勘違いなのだ。「4~5回会った」というのも嘘だ。和田氏と朝鮮日報のどちらが嘘をついているのかは知らないが、日本で会ったとしたら、私抜きで会うことはありえない。和田氏が韓国に行った際に会いたいと言って来たという話は聞いた覚えがあるが、解決策について話し合うような場はなかったと承知している。日本で会ったのは1回だ。記事にもあるように、2015年4月に日本の国会議員会館で開いた記者会見の時だ。この時に、私たちがアジア連帯会議で提示した解決案について和田氏が「法的解決の要求がなくなった」と誤解していることが分かり、私たちはその場で、記者たちに対し「法的責任」という単語がなくなっただけであって、私たちは日本政府の法的責任の認定と履行を求めているという趣旨を明らかに説明した。
 即ち、
「日本政府および軍が軍の施設として「慰安所」を立案・設置し管理・統制したこと」
「女性たちが本人たちの意に反して、「慰安婦・性奴隷」にされ、「慰安所」等において強制的な状況の下におかれたこと」
「日本軍の性暴力に遭った植民地、占領地、日本の女性たちの被害にはそれぞれに異なる態様があり、かつ被害が甚大であったこと、
そして現在もその被害が続いているということ」
「当時の様々な国内法・国際法に違反する重大な人権侵害であったこと」等の事実と、これに対する責任を日本政府が認めなければならないと私たちは主張したのだ。

 このような事実とそれに対する責任を認めるならば、日本政府に法的責任があることを認めたことになるので、あえて「法的責任」という文言を使う必要はないという意味だと私たちは説明した。
その場には和田氏の「挺対協が法的責任、法的解決と言わなくなった」という話を聞いてきた記者たちも多かった。ところが私たちの説明を聞いた後でそのような記者たちがした質問は「それでは挺対協は法的解決を諦めたわけではないんですね」だった。その場で私たちの説明を聞いた、それなりの記者たちは私たちが言うことの意味を理解したのだ。そこで翌日の日本国内の報道は扱いが小さかった。「法的責任」の履行方法が具体化されたことは理解したが、本質的に私たちの要求に変化があるわけではないことを理解したため、記事の扱いは小さくならざるを得なかったのだ。ところが和田氏は違った。その後も、自分の「理解」が間違っていたことを認められないのか、理解できないのか、その後も同種の発言を続けている。

 上記のような事実を日本政府が認めるならば、それは不法行為を認めることになるので、その不法行為に対する責任を認めることが法的責任の認定になるという論理は、日韓の法律家たちが何度も会議を開いて研究、検討した結果だった。そして私たちは2014年にアジア連帯会議を開いて各国の被害者たちが何よりも望むのは日本政府の事実認定であることを確認した

 想像してみてほしい。
 日本政府が談話を発表する、その中には日本軍がアジア各国でおかした日本軍「慰安婦」に対する加害事実が具体的に言及されている、被害女性たちが戦後も生涯、苦痛の中で生きてきたという事実を認める言葉がある、もしそうなったら「法的責任」という一言が入るよりもはるかに被害者たちの心に届くはずだ。私たちは、そのような解決を望んだのだ。真の解決を願ったのだ。

 その真の解決を誰よりも切実に願い、誰よりも必死に飛び回った人が尹美香だ。上記2015年4月の記者会見は和田春樹氏が私たちに提案してきたものだった。日本軍「慰安婦」問題解決全国行動に対して尹美香と共に解決案について記者会見を開きたいと言ってきたのだ。私たちは迷った。和田氏はアジア女性基金を推進した人だ。そのような人と場を共にすることは、尹美香にとっては負担だろうと思ったからだ。しかし当時、和田氏は日本政府にルートがあると私たちは聞いていたので(今となっては本当にそうだったのかは分からないが)、とにかく和田氏の提案をそのまま尹美香に伝えることにした。尹美香の答えは簡潔だった。迷いがなかった。
「OK、和田春樹だろうが、誰だろうが、解決のためにプラスになるなら何でもする、どこにでも行くし、誰とでも会う、それが解決のためならば」だった(私は当時、この言葉を聞いて、本当に感動したのだ。だから明確に覚えている)。
 日本では保守、リベラルに関わらず、尹美香と正義連は「慰安婦」問題の解決を願っていない、なぜなら彼女たちの存在価値がなくなるからだ、と言う。本当にそのように信じているのだと思う。しかし、それは違う。誰よりも切実に解決を願った人が尹美香であり、挺対協だった。上記記者会見がどのように開かれることになったのかを見ただけでも、それは分かるはずだ(いや、このような話をしても、聞く耳持たない者には届かないことは分かっている。それでも言う)。
尹美香に罪があるとしたら、日本軍「慰安婦」問題解決のために火の粉も避けずに一身をなげうってきた罪しかない。その解決案が被害者の名誉を毀損するものになってはならないと、真っ先に被害者のことを考えた罪しかない。

 韓国外交部が日韓合意の前日、夜遅い時間になって尹美香に「少女像問題の解決」「最終的・不可逆的解決」「国際社会における非難を控える」といった事項を伏せたまま、「事前説明」をおこなったと吹聴してきたことについては、すでに外交部の見解をはじめ、メディアの検証によって、当時の外交部関係者たちの主張の方が間違っていることが明らかになっている。にもかかわらず、未だに尹美香の「突然の変化」を印象づけようとする朝鮮日報の、このような悪意の報道に人々が騙されないことを願うばかりだ。

(文責:梁澄子)