〈報告〉戦時性暴力問題連絡協議会 第101回水曜行動 in 新宿 月間報告 池田恵理子 ( 2026年10月21日)
● 国際社会で注目を浴び続けている 「慰安婦」問題
この秋―特にこの1カ月は「慰安婦」問題や性売買についての国際的な議論が盛り上がった月でした。
10月8日には韓国のソウルで「ラディカ・クマラスワミ国連報告書30周年国際シンポジウム」が開かれました。国連人権委員会の特別報告者だったクマラスワミさんは「慰安婦」制度を「性奴隷」制と位置づけ、日本政府の責任を明記して解決を迫りましたが、30年経った今でも日本政府はこの問題解決に踏み出していません。
また10月9日には南アフリカ出身で元国連人権高等弁務官のナビ・ピレイさんにノーベル平和賞が授与されました。彼女は2014年に人権高等弁務官の任期を終える直前に異例の声明を発表しましたが、そこでは日本政府が「慰安婦」問題を解決してこなかったことに深い遺憾の意を語り、「『慰安婦」問題は過去の問題ではなく、現在の問題である」と訴えたんです。そしてノーベル平和賞を受賞した時のスピーチでは、「私たちは国際法と人権が深刻な政治的攻撃を受けている時代に生きている」と語りました。
海外からの目が日本軍「慰安婦」問題に向けられていることは様々な場で言えますが、この10月にはちょっと変わった古典芸能の舞台がありました。
10月3日にアメリカ人などの海外アーティストたちが、沖縄に残留した朝鮮人「慰安婦」サバイバーのペ・ポンギさんの生きざまと人生を「能」にして演じたのです。日本の伝統芸能である「能」を、英語で演じてみせてくれました。今ここに集まっている何人もが実行委員になって(私もその一人でしたが)、公演の準備を手伝いましたが・・・初めて観る英語の「能」で、しかもペ・ポンギさんを生き生きと描いていたのです。不思議な感動をおぼえ、忘れられない一日になりました。
売・売買春をめぐる「セックス・ワーク論」と「北欧モデル」
ペ・ポンギさんの英語能があったその翌日、10月4日には、東京で2つのシンポジウムが開かれました。タイトルはいずれも「ストップ! 性売買」です。9月17日に法務省のもとで有識者による「売買春に係る規制の在り方検討会」が出した報告書が発表になりましたが、それをめぐる議論が沸騰したのです。この秋の国会でも議論になることでしょう。
そもそも、なぜ売防法の見直しを始めたのかというと、去年の11月にタイ国籍の12歳の少女が東京で、1カ月間に61人もの男たちへの性接待を強いられる・・・という事件が起こって問題となり、高市首相が売防法の見直しをするよう 法務省に指示したからでした。ただ、この報告書を読むと、買春への処罰ではなく、買春勧誘行為を処罰するということで、売春女性を処罰するところは変わっていない、売防法のどこをどう変えようというのか・・・ということをめぐって、様々な議論が巻き起こりました。
性売買についてはヨーロッパやアメリカでかなり長く議論が行われてきており、今では二つの方向に意見が分かれています。
ひとつは「セックスワーク論」の立場で、性売買を合法化して無処罰化をするというものです。
もうひとつは「北欧モデル」と言われ、性売買は女性への暴力であり、女性たちは被害者であるのだから保護し支援しなければならない、そして買春する側を処罰すべきだ・・・という立場です。
「セックスワーク論」はドイツやオランダが、「北欧モデル」はフランスやスウェーデン、ノルウェーという国々が選択をしてきました。それでもまだ各国では売買春の状況や対応の仕方をめぐる議論が続いていますが、世界にはこの二つの立場があるわけです。
日本を考えてみますと、4年ほど前に「20歳から49歳までの男性の48%に買春経験がある」という調査結果が発表されました。日本人男性の半分近くが買春をしていることがわかります。それくらい売買春が当たり前になっている日本は「買春大国・日本」などと言われてきましたが、その歴史は古く、10世紀ごろには売春業が成立していたといいます。公娼制度は安土桃山時代に始まって、延々と続いてきました。江戸時代から明治、大正、昭和へ・・・。
そしてアジア太平洋戦争の時には、日本軍がアジア各国に夥しい数の慰安所を設置し、「慰安婦」制度を作りあげてきました。敗戦後には公娼制度は廃止となり、1956年には売春防止法が作られましたが、売春業自体は変わらずにずっと続いてきているわけです。
このように振り返ってみますと、日本での売買春の長い歴史の中で軍隊が「慰安婦」制度をつくってきたことが密接につながっており、それらを当たり前のようにして維持し続けてきたのがこの国なのだ・・・ということを考えざるをえません。
も・もっと語ろう 「慰安婦」問題と売買春問題
先月の9月22日、神戸で私たちと同じように毎月の水曜行動で「慰安婦」問題を訴えている「慰安婦」支援団体の一人・おかだだいさんが、この売防法見直しの報告書についてスピーチをしました。
彼は朝鮮半島やインドネシアの「慰安婦」被害者の支援活動や元兵士への聞き取りなどを熱心にしてきた人ですが、そのスピーチでは「日本は性搾取の歴史の中にあります。性売買被害者の尊厳回復のために 売防法の改正を!」と訴えました。「買春男性の理屈は、慰安所に通っていた元日本兵のそれと丸々ダブってみえます」「買春男性は人権侵害しているという自覚はなく、買春で少女を支えているつもりの人もいるのです」「男が男の常識を変えていかねばなりません」。
これには私も同感です。これはすぐにも解決するとかいう問題ではなく、これからたくさんの議論をしなければならない問題で、日本がどの道を選んでいくのかについては真剣に考えていかなければなりません。
「慰安婦」問題の解決と性売買をどうしていくのかということは、非常に語りにくい、だけど非常に重要で大きな問題として私たちに突きつけられているのだと思います。
私たちはこれからも真摯に向き合って取り組み続け、語り合って解決の道を求めていきたいと思っています。みなさんも是非ご一緒に考えていきましょう。
