〈報 告〉戦時性暴力問題連絡協議会 第92回 水曜行動 in 新宿 月間報告 池田恵理子(2025.11.19)
この1カ月の間、「慰安婦」問題に関連していろいろなイベントや動きがありました。私が直接参加したものだけでも7件にのぼります。
▼10月19日には劇作家のくるみざわしんさんが、『演劇で取り組んだ「慰安婦」問題~国家犯罪に立ち向かう』というテーマで講演を行いました(@文京区民センター)。主催は「『慰安婦』問題とジェンダー平等ゼミナール」です。くるみざわさんは『マリアの賛歌』や『あの少女の隣で』など、「慰安婦」をテーマにした演劇を書いてきた人なので、興味深いお話を聴くことができました。でした。
▼10月23日は私が「阿佐ヶ谷市民講座」に頼まれて『戦後80年 日本軍『慰安婦』問題はまだ終わっていない』と題する講演をしました。
私は1997年から「ビデオ塾」という小さな映像制作集団で「慰安婦」被害者や元日本兵の証言を記録してきたので、そのいくつかを紹介しながら話をしたのです。
▼10月24日は50年前のアイスランドで全国一斉に女性たちがストライキを行った日ですが、これを描いたドキュメンタリー映画『女性の休日』が10月25日から日本で全国公開されました。アイスランドでジェンダー平等を求めた女たちの闘いがどのように始まったのかを、丁寧に教えてくれます。女性のストライキを「休日」としたのは、「ストライキ」という言葉に反対する人がいたためだったと言いますが、1975年のこの日には全国の女性の90%が参加して大きく盛り上がり、ジェンダー平等を実現していくきっかけとなりました。世界で初めて女性が大統領になったのも、アイスランドです。この国はジェンダーギャップ指数が16年間ずっとトップで、日本は118位という最下位近くにいますが、こうした違いがよくわかりました。
▼10月25日にはオックスフォード大学で『歴史における記憶と責任、そして国際社会の役割』というテーマの国際会議があり、韓国のシン・ヘスさんや日本からはwamの渡辺美奈さんが参加して講演と討論が行われました。
▼10月30日は衆議院議員会館で「フェミブリッジ沖縄」主催の『アメリカ兵の性暴力を終わらせたい!!女性たちの連帯』というシンポジウムがあり、沖縄の女性たちの参加も多く、国会議員や地方議員も多数参加して活発な議論が繰り広げられました。
皆さんの議論を聴きながら、1995年8月末から北京で始まった世界女性会議が終わる頃に沖縄で発生した、米兵3人による12歳の少女への暴行事件をありありと思い出しました。私はNHKのディレクターで、世界女性会議の番組を3本シリーズで放送した後、すぐに沖縄取材に入り、10月21日、85000人が結集して米軍に抗議した県民集会に圧倒されました。
ところが今もなお、米兵による性暴力はなくならず、いくつもの事件が起きています。そして日本にある米軍基地の70%が沖縄に集中しているという問題を、私たちは抱えています。こうした現実に向き合って、私たちは日本政府と米軍を変えていかなければならない・・・という思いを抱えた人たちが集まった集会は、熱気に包まれていました。
▼11月8日には大妻女子大学で『買春処罰法と性売買・女性支援~フランスと韓国の経験から学ぶ』というシンポジウムが行われました。日本の売春防止法では買春する男性は処罰されないという問題があり、他方、売る側の女性には貧困や騙されて売春を強いられているという状況があります。その意味で、売春する女性たちも性暴力被害者ではないかという見方から、売買春をなくしていくにはどうしたらいいかなど、フェミニストや「慰安婦」問題に取り組んでいる者たちの中でも議論がわかれるところです。これらの問題を乗り越えつつ、ジェンダー平等を実現していかなければならないのだと思います。
▼そして今週の日曜日、11月16日には歴史研究者の吉見義明さんの講演会『「慰安婦」問題研究の30年 現状と課題を考える』が開かれました。主催は「大阪歴史科学協議会」です。
吉見さんが1995年に出版した岩波新書の『従軍慰安婦』は、「慰安婦」問題に取り組む人には必読書と言っていいと思いますが、これを改訂した新著『日本軍慰安婦』は多くの資料や研究成果を加えて膨らませたもので、新書としてはぎりぎりの分厚さで、充実した内容になっています。
しかしこれだけの歳月を経て、各国の「慰安婦」被害者の大半が亡くなられてしまいましたが、国際世論では彼女たちが戦時性暴力をなくしていくために大きく貢献してきたと認められています。
国連や国際的な人権団体、各国の議会からも日本政府に対して「慰安婦」問題の解決を求める勧告や意見が多数出されていますが、日本政府は依然として未解決のままに留めています。これは何とかしなければならない・・・という切実な思いが、応援や議論から伝わってきました。
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インドネシア・南スラウェシからの訃報と闘病中の被害女性
10月27日、インドネシアの南スラウェシの「慰安婦」被害者・ヌライニさんが亡くなられたという訃報が届きました。12歳の時に日本兵に拉致されて「慰安婦」にされた人です。心からのご冥福をお祈りいたします。
南スラウェシといえば、私たちの「全国行動」や「連絡協議会」が以前から支援活動をしてきた地域で、2019年には現地訪問もしたなじみ深いところです。
先日の関西ネットワークの情報は、南スラウェシのチンダさん(94歳)が胆石の手術をしたことを伝えていました。13歳の時に1年間も慰安所に入れられたチンダさんは、2016年11月に来日して韓国YMCAの証言集会で話され、wamでも証言をしてくれて、親しく交流ができた懐かしい人ですが、手術後の病状が良くないとのことで心配しています。
このように、高齢となった被害女性たちは亡くなったり体調を崩したりしています。それでも「慰安婦」問題が依然として解決しないという状況を、みなさまにお配りしている緑色のチラシをご覧いただいて知ってほしいと思います。私たちもほとんどが戦後世代で戦争体験はありませんが、私たちが担っていかなければならない戦争責任・植民地支配責任は多々あります。是非多くのみなさまにこの問題に関心を持っていただき、私たちにコンタクトしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
