正義連、「省察とビジョン委員会」報告
1992年1月8日の水曜集会に始まった日本軍「慰安婦」問題の解決に向けた挺対協の歩みは、2015年12月28日の一方的で拙速な日韓政府合意に対して巻き起こった国民的抵抗とともに、正義連へと引き継がれてきました。30年間の道のりが常に容易ではない瞬間の連続ではありましたが、とりわけこの間の正義連への無分別な疑惑の提起などに深刻な危機意識を感じて、この運動の本質を回復し連帯するために、この場に立ちました。
正義連は、被害生存者に思いを重ねる市民の方々の心を結集し、再び新たに立ち上がって前
進するために「省察とビジョン委員会」を設置しました。
「省察とビジョン委員会」は、各界の専門家と女性・人権・市民団体の代表など、13名で構
成されています。6月24日の第1回会議以降、8月4日の第4回会議まで、正義連の運動の歴史性を継承・発展させ、組織を刷新するための具体的な内容と方向性について議論が深められました。
まず、「省察とビジョン委員会」は以下の四つを目的に開始されました。
1.正義連の会計管理体系の改善案の策定
2.正義連の組織と事業関連活動を点検・診断して改善案の策定
3.日本軍性奴隷制問題解決のための運動方向とビジョンの提示
4.対市民コミュニケーションの模索
議論の過程で、水曜集会を始めた際に提示された「日本政府による犯罪の認定、真相究明、
公式謝罪、法的賠償、責任者処罰、追悼碑と史料館の建設、教科書への記録と歴史教育」と
いう7つの課題は、依然として未解決のままであることが確認されました。また、日本軍「慰
安婦」問題を、日本の植民地支配責任、戦時性暴力、武力紛争と軍事主義、日常における性
搾取問題、女性の人権と平和の重要性につなげようとしてきた正義連の問題意識も正当であ
ったことを改めて確認しました。被害者の尊厳と名誉を根本から揺さぶる反歴史的・反人権
的な行動がすさまじく続いているため、この運動の意味が損なわれてはならないという事実
も再三確認しました。
同時に、正義連を支えてきた長年の後援会員と、この間の危機的瞬間に新たに手を握ってく
れ方々の熱い思いに対して、十分に責任を負えているのかを痛切に振り返っています。
生存者よりも亡くなられた被害者のほうが多くなっている状況下で、この運動の今後をリー
ドする青少年と青年世代を主体化させることに、どれだけ切実な思いで応答してきたのかを
反省しています。歴史を正しく立て直すために、未来世代の教育にもっと関心を注ぐべきだ
という李容洙(イ・ヨンス)さんの心配と苦言を深くかみ締めています
「省察とビジョン委員会」は、以上のような診断を前提に、内部診断と外部諮問を通じて足
りない部分を改善するための議論を続けています。省察のための優先課題として、会計と組
織刷新に関する部分を議論しました。
1. 効率的な会計管理体系をつくるために外部コンサルティングを受けており、この結果を基に、会計管理体系を改善していきます。
2.より開かれた民主的な意思決定の構造、より効率的で責任性を伴う組織改編を提案しま
す。
内部診断を綿密に行い、以下のような具体的目標に向かって前進したいと思います。
1.30年間、被害生存者とともに目指した7課題「日本政府による犯罪認定、真相究明、公式
謝罪、法的賠償、責任者処罰、追悼碑と史料館の建設、教科書への記録と歴史教育」の解決
に向け、揺らぐことなく進んでいきます。
2.この運動を理論的に支える調査・研究活動を強化し、未来世代のための教育コンテンツ開
発とプログラムづくりに力を注ぎます。
3.行動する市民の誰もが参加できる後援会の構造に改善し、国内外で連帯する諸団体との持
続可能な連帯のあり方を模索します。
4.戦時性暴力の再発防止のための国際的な女性人権基準をつくってきた活動を引き継ぎ、世
界的な女性平和運動へと発展させていくことを目指していきます。
5.以上の取り組みを進める過程で、市民の皆さんの意見に耳を傾け、反映していきます。
後援会員、連帯団体、市民団体や研究者、そしてまさに被害生存者とともに歩んできた関連
団体を中心に、全国を巡回する傾聴懇談会を開催します。声のかかるどこにでも駆けつけて
苦言を受け止め、正義連の改善方向を共につくっていきたいと思います。
この運動にすべてを差し出してくださった被害生存者の方々と、無分別な非難の中でも逆に
定期会員となって熱い思いを寄せてくださった市民の方々、共に連帯する世界各地の支持者
の方々からの、厳しい叱責と激励を心に刻みながら、慎重に一歩ずつ踏み出していきます。
希望はすべてが絶望的になった瞬間にこそ生まれるという言葉のように、30年前に故金学順
(キム・ハクスン)さんの低くて小さな声から始まったこの運動の新たなスタートを切るため
に、初心を思い起こし、皆さんとともに走り続けます。
2020年8月12日
「省察とビジョン委員会」委員一同
省察とビジョン委員会 名簿