ナヌムの家京畿道民官合同調査の結果発表される
昨日8月11日にようやくナヌムの家京畿道民官合同調査の結果が記者会見を通して発表されました。
基本的な方向性は私たち内部告発したものの意を汲んでくれていると思います。調査団が今後最終報告書をまとめた後、京畿道知事であるイ・ジェミョン氏に対し提出され、最終的に彼の判断を仰ぐという流れになるそうです。
曹渓宗が今後どういう出方をしてくるのか、知事がどんな結論をだすのか、それによってハルモニ達の余生とナヌムの家の今後、そして韓国における慰安婦問題の持つ意味が問われることになるかと思います。
調査団は調査結果の中で今後は民間合同協議会を組織しこの問題の解決にむけて取り汲んでいくべきだ、そのため監督行政機関である京畿道と広州市は努力をするよう勧告しています。
以下より結果内容を日本語に訳したものです。転送共有は自由ですので必要あらば活用してください。
〈結果内容〉
【記者会見文 2020年8月11日】
「ナヌムの家」民官合同調査団 調査結果
こんにちは。「ナヌムの家」民官合同調査団代表であり今日発表を担当することになりましたソン・ギチュンです。
「ナヌムの家」民官合同調査団は今年7月6日から同月22日まで京畿道広州市にあるナヌムの家で現場調査を実施しました。現在最終報告書を作成しております。
民官合同調査団は余生の限られた日本軍「慰安婦」被害女性たちの人生が最大限尊重され、彼女らの生きざまと記録が大切に保存されるよう急遽組織され、社会福祉施設としてだけでなく、私たちの社会が誰よりも大切に向き合わねばならない特別な位置にある女性たちのために調査を実施しました。
民官合同調査団には京畿道と広州市の公務員と民間の専門家が参加し、「行政と施設運営」、「会計」、「人権」、「歴史的価値」などの分野に分け、社会福祉法人大韓仏教曹渓宗ナヌムの家と療養施設であるナヌムの家、日本軍「慰安婦」歴史館および国際平和人権センター等を詳細にわたり調査しました。
調査は法人と施設の文書閲覧、建物と生活環境の精査、職員および関係者らとのインタビューといった方法をとりました。あわせて京畿道・広州市の関連行政文書を確認し関係公務員にもインタビューをしました。
「ナヌムの家」は誰も関心を持つことなかった「慰安婦」被害女性たちの穏やかな人生のため大韓仏教曹渓宗人権委員会等、仏教系の努力と国民による後援と参加によってスタートしました。
ソウルにあった「ナヌムの家」は1996年に京畿道広州市に建物を建て移転することで共同生活というスタイルが定着しましたが、次第に法人および施設運営面で問題点が発生していきました。
「ナヌムの家」民官合同調査結果をお伝えします。
1:寄付金物関連法に則した登録をしないまま寄付金を集め、公益法人がせねばならない決算書等の公開も行いませんでした。
「ナヌムの家」は2015年から2019年までホームページ等を通して“ハルモニたちの生活、福祉、証言活動”のため寄付金集めの広報活動をしてきました。さまざまな機関にも寄付を要請する公文を発送し集めた金額はこの5年間で約88億ウォン(約7億9千万円)となります。しかしナヌムの家の法人にしろ施設にしろ、寄付金物法に則した集金活動登録をしませんでした。公益法人決算書等の公開もせず、寄付金の総額と使用内容等がきちんと公開されていませんでした。
2:寄付金を女性たちのために使用しませんでした。むしろ他の目的ために使用されたり備蓄されてきました。
2015年12月「慰安婦」問題に関する日韓合意前後からナヌムの家で生活する女性たちに対する寄付金が急増しました。しかしナヌムの家の運営法人がハルモニたちの「生活、福祉、証言活動」のためだといいながら、国民たちから集めた寄付金は療養施設であるナヌムの家ではなく法人の口座に入金されていました。ナヌムの家の運営法人がこのような方法で過去5年間に集めた寄付金は約88億ウォンとなります。そのなかかから運営法人が使用した金額は、土地(林野)購入など財産形成のために使用した金額約26億ウォン(約2千3百万円)をはじめとして総額38億ウォン(約3千4百万円)にものぼり、実質的に女性たちが生活している施設であるナヌムの家に対し支出した金額(施設への全支出)は2億ウォンあまり(2.3%)だけです。施設に対する全支出金も施設運営のため間接経費としての支出が大部分でした。すなわち寄付金が女性たちの生活と福祉および証言活動の支援のために直接使用されることはまずありませんでした。
残っている寄付金残額に関しては理事会会議録および予算書によると、できる限り節約することで今後法人の財産確保と療養院および国際平和人権センター建立等の目的のために数年のあいだ使用されるか備蓄されてきました。
これは人々をだまして富の交付を受けたり、業務に違反する形で財産運営による利益を取得してはならない、という刑法第347条及び第355条、第356条に違反する恐れがあると見なされます。
3:法人と施設の組織構成と運営が入れ混ざっています。
法人と施設はそれぞれの組織運営と会計が区分されねばなりません。しかしナヌムの家では国庫補助によって運営される施設から給与を支払われる職員が、施設と法人の業務をすべて行っており、また法人に関する行政文書も施設長の名義で発送されていました。法人傘下には社会福祉法人の性格上運営が不適切である“国際平和人権センター”を置いておきながらこの機構は別の定款と会員を持っており、京畿道に非営利民間団体として登録されていますが、最近数年間の活動実績を確認することができませんでした。
4:理事会の議決過程での不当行為が明らかになりました。
社会福祉法人は理事会の議決の際委任が不可能にも関わらず、理事会に出席していない理事が議決権を委任したケースが数回あり、実際に参加した理事の数が理事定数の過半数に達していない場合もありました。
定款で理事の除斥規定を定めているにもかかわらず、定款に違反して理事候補者が理事選任手続きに参加して自分自身を理事に選任しました。2019年11月の理事会において社外理事3人が自分たちの理事選任に関する案件の議決に参加しました。この3名を除外すると理事会開催定数に達しない会議となり社外理事選任決議は成立しません。
2015年から2019年まで計11回開かれた理事会中、公益法人法上書面決議禁止規定に違反した理事会が5回確認され、そのうち3回の理事会では過半数が出席していないことを確認しました。また理事会議事録上、割印が互いに合わない場合もありました。
5:調査の過程で、女性たちに対する精神的虐待状況が明らかとなりました。
現在ナヌムの家施設長は女性の一人が一種の認知能力低下状態で「せん妄状態」にあるため、彼女の言葉には「効力がない」と自認しておきながら、この女性をメディアに露出させて施設側に有利な証言をさせました。
ナヌムの家の介護人は「おばあちゃん、捨てに行くぞ」、「じっとしてろ、なぜそうなんだ!」、「頭にくる、ずる賢くて」など精神的な虐待に相当する言葉による暴力を加えました。これらの精神的な虐待は特に意思疎通と身動きがほぼ不可能な女性に集中していました。調査団は介護人の虐待行為は単に個人による逸脱行為ではなく、ナヌムの家運営上の問題から派生した医療の空白と過重な業務などが原因であると判断します。
6:寄付金を証言活動等に参加する女性たちのために使うことなく、医療面での放任状況も明らかとなりました。
ナヌムの家は女性たちの生活と福祉および証言活動支援のために寄付金を使用するとしたにもかかわらず、ほとんどの寄付金が女性たちのために直接使用されていませんでした。女性たちは2015年から2018年の間毎年100⁓150回ほど訪問者に会い証言活動に参加しながらも、寄付金に関して十分に知ることも出来ず正当な対価を受けることもできませんでした。女性たちは90歳以上の高齢であり一部の女性たちは寝たきり状態にもかかわらず、“日常生活に支障がない者”を対象に設置された“養老施設”であり法人からの別途支援がほとんどないまま過ごしてきました。むしろナヌムの家は国庫補助で運営されている養老施設の人員を法人と歴史館の業務に投入し女性たちの保護に関して空白地帯を形成してきたとみられます。その結果女性たちは本人たちに必要な医療人材と設備の整わない空間で、自由な外出や移動もできない生活をおくらねばなりませんでした。
7:日本軍「慰安婦」被害女性たちの生きざまと闘争の歴史を含んだ記録が放置されています。
ナヌムの家には女性たちの生きざまや活動に関する品々と記録が残されています。すでに3千点の記録が国家指定記録物とされているのです。しかしながら今日のナヌムの家はこれまでナヌムの家で起居してきた女性たちの名簿さえ正確に管理をしておらず、女性たちによる絵画や彼女らの写真、学生や国民からの応援と激励が込められた絵や手紙などを粗雑な麻袋やビニールに入れ建物のベランダに放置していました。その放置された記録物の中には国家指定記録物に指定されたものもありました。
“ナヌムの家の「慰安婦」被害女性たちの人生と活動記録緊急整理事業”のような措置をとることが切実なほど急がれます。
8:歴史館は寄付金・寄付物品集めに寄与しましたが、歴史の保存と活用を疎かにしました。
入場料(5千ウォン)の収入で運営されている第1歴史館は湿度調整がなされないまま第一資料の一部を展示していました。また第2歴史館は床の施工が不十分だったため床が反りあがり観覧者の安全が懸念される状態でした。
9:調査過程においても不法録音の事例等が発生しました。
民官合同調査団は社会福祉法第51条の規定により京畿道知事の委嘱という形で構成されました。しかしながら調査団の委嘱医師が女性の精神健康状態を調べるために面談調査する過程を、法人の職員である介護人が違法録音しました。またナヌムの家の新施設長は調査団による「生活館調査」をコロナ19を理由に拒否しましたが、繰り返される要求に対しようやく次の日の午前10時に調査活動実施に合意したにもかかわらず、当日女性のうちの一人を外へ連れ出し、施設の不良運営のため解雇となった前施設長と前事務局長に会わせました。
国民のみなさん!
誰も自ら進み出るものがいなかった当時ナヌムの家が「慰安婦」被害女性たちのために、多大な努力をしてきたという点は尊重されるべきです。しかしそれでも誤った点があるのならばそれは改善されねばなりません。
ナヌムの家は京畿道をはじめとする政府補助金の支援とともに国民による支援によっても運営され、「慰安婦」被害女性たちの痛みをやわらげるところであるはずです。
後援者たちは女性たちの穏やかな老後の生活に使用されることを期待する思いで寄付をしました。
しかし、法人はそのように使用せずに寄付金を女性たちの生活支援や福祉とは直接関係のない事業のために使用したり備蓄をしました。
女性たちの人生が最大限尊重されており、また彼女らの記録が大切に保存されているところだという点は認め難い状況でした。2018年社会福祉施設の評価結果、養老施設としてもC評価を受け全国でも下位とされた施設25%の中に含まれます。
今回の民官合同調査で明らかになったナヌムの家法人や施設のいくつかの法令違反行為等は、司法機関の捜査を通じて今後さらに明らかになることでしょう。
ナヌムの家の問題は法人と施設を含み、それらに対する処分や指導・監督の権限は京畿道と広州市の双方にあります。
ナヌムの家の問題を適切に解決するためには、京畿道と光州市が積極的に協力しなければならず、特にこの問題に多くの関心を持つ専門家などが参加する民官協議会が構成される必要があります。
民官協議会が“女性たちの快適な余生”と“慰安婦の歴史”の記録と保存などについて緊密に協議しナヌムの家正常化に向けた方策が設定されねばならず、京畿道と光州市は正常化のための方策がきちんと施行されることができるように努力してもらいたいと思います。
ありがとうございます。
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