【要請書】内閣総理大臣 安倍晋三 殿 

8・14日本軍「慰安婦」メモリアル・デーに、あらためて日本政府の責任を問う

8月14日、今年で5回目となる日本軍「慰安婦」メモリアル・デーを迎えました。1991年のこの日に韓国で金学順さんが勇気を持って名乗り出られたことを契機として、朝鮮民主主義人民共和国、中国、台湾、フィリピン、インドネシア、東チモール、オランダ等、多数の日本軍性奴隷被害者たちが声をあげ始めました。これにより、戦後50年もの間、歴史の中に埋もれていた事実が明るみに出されたのです。
 ところが、日本政府は26年を経た今なお真剣にこの問題に向き合おうとせず、2015年12月28日の「日韓合意」をもって「最終的かつ不可逆的」に解決したとの立場です。しかし、いまだ被害者への公式謝罪表明はなく、安倍首相が被害者への謝罪の手紙について「毛頭考えていない」と答えたことは「合意」で表明された謝罪が口先だけのものだったことを露呈しました。10億円の拠出金についても、「賠償ではない」ことを繰り返し強調しています。こうしたお金の支給は、かつての国民基金による「見舞金」と同様、お金で被害者の口封じをはかるものだとして、被害者および韓国市民の不信と反発を招きました。「和解・癒し財団」の説得によってお金を受け取った被害者やその家族がいることをもって、「慰安婦」問題が解決したとする日本政府の主張はとうてい受け入れられるものではありません。



「合意」では日韓両政府が共に被害者の尊厳回復事業を行うとしていますが、日本政府のその後の対応は真逆のものでした。韓国政府に合意の履行としてソウル日本大使館前「平和の碑」を撤去するよう執拗に求める一方、釜山領事館前に「平和の少女像」が市民の手によって設置されると、対抗措置として駐韓大使と釜山総領事を三か月にわたって帰国させました。韓国文在寅政権のもとで「合意」の見直しや検証が進められる中、今年から8・14メモリアル・デーを公的な記念日とすることが決まりました。これに対し8月15日、安倍首相は「ゴールポストが動くようなことは絶対にありえない」、「合意がすべて」と発言し、「合意」を見直す考えがないことを表明しています。
忘れてはならないのは「慰安婦」問題は日韓の政治・外交問題ではないということです。女性差別撤廃委員会は「(日韓合意は)被害者中心のアプローチを十分に採用していない」として締約国に被害者中心の真実・正義・被害回復措置に対する権利を保障するよう求めています。「慰安婦」問題は人権問題であり、人道に反する犯罪であることは、今や世界の常識であり、これに反論・抗議することは恥ずべき行為です。また、アジアの多数の被害者をおきざりにしたまま「最終的解決」など、できうるはずもありません。
日本政府がとるべき対応について、私たちは2014年6月、各国被害者と支援団体とともに「日本政府への提言」を発表、以下のことを実現するよう求めてきました。

一、被害事実の認定と真相究明
二、被害者に対する心からの謝罪と、その証しである法的賠償
三、二度とこのようなことが起こらないために記憶の継承と歴史教育

 私たちは、加害国の市民として、日本政府が今こそ歴史の事実に向き合い、解決のために行動することを求めます。被害者の尊厳を回復することは同時に現在の差別と性暴力に苦しむ人々の被害回復への道であり、暴力のない平和な社会の実現に向けた第一歩となるでしょう。

2017年8月30日
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動