104日、中央日報は「『慰安婦合意聞いたことない』(尹美香)ごまかしに、言葉も出ない」という刺激的なタイトルで朴槿恵(パク・クネ)前大統領の回顧録を報じた。

 


報道によると、朴元大統領は回顧録で「2015日韓合意」を高く評価し、「前挺対協代表がハルモニたちに合意内容を伝え、周知することを期待したが、そうせず、合意が発表されるや知らないふりをした」と主張したという。「2015日韓合意」の本質をごまかし、問題を市民団体の責任に転嫁しようとする居直り的な歴史歪曲に呆れるばかりだ。

 


まず、事実関係が間違っている。

 


日本軍「慰安婦」問題の正しい解決のために、当時の韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の代表と外交部関係者が会って現状を把握し、被害者の要求を伝達することは、不定期ながらも常時行われていた。



合意」直前に通知された内容も、日本政府の責任痛感安倍首相の総理としての反省と謝罪日本国庫から10億円の拠出など3つだったという。


「最終的・不可逆的解決」、「少女像問題の適切な解決」、「国際社会での非難・批判の自粛」、そして反省と謝罪の具体的な内容と形式などは伝達されなかった。


「第3国の少女像問題」など、「韓日日本軍慰安婦被害者問題合意検討タスクフォース」報告書で指摘された密約の主要内容が知らされなかったのはもちろんだ。さらに「10億円」などの内容は、20151227日、尹美香(ユン・ミヒャン)挺対協代表と外交部との面会前にすでにマスコミを通じて報道され、これに対する被害生存者たちの反対の立場表明も当時、複数のメディアを通じて報道された。

 


もう一つの問題は、「2015日韓合意」の本質を歪めているという点だ。

 

20151228日、韓日外務大臣共同記者会見を通じて奇襲的に発表された「2015日韓合意」は、被害生存者と全世界の市民を衝撃に陥れた歴史的な事件だった。


安倍晋三政府は、具体的な事実認識と再発防止策が欠落した「責任痛感」と「慰謝料」10億円、韓国政府の財団設立で問題は終わったと宣言し、朴槿恵政権はこれにより日本軍「慰安婦」問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」し、「駐韓日本大使館前の少女像に対する日本の懸念」を韓国政府が解決し、「国連など国際社会で同問題に対する相互非難・批判を控える」ことを約束した。


手続き、形式、内容のすべての面で問題のある「2015日韓合意」で引き起こされた国内外の市民の怒りが天を衝いた。故・金福童(キム・ポットン)、李容洙(イ・ヨンス)ハルモニを始めとする被害生存者の激しい反発もよく知られている事実だ。これに対し、当時のすべての大統領候補者は「2015日韓合意」の問題点を指摘し、「再交渉の検討」などを公約として掲げた。

 



文在寅(ムン・ジェイン)政権は201712月、「韓日日本軍慰安婦被害者問題合意検討タスクフォース」の検討結果報告書を通じて「2015日韓合意」を「政治的合意」と規定し、すでに国際規範として定着した被害者中心の原則が交渉過程で反映されなかったことを指摘し、根本的な問題解決にならないと確認した。



これにより、韓国政府は10億円に相当する金額を女性家族部傘下の両性平等基金に組み入れ、「和解・治癒財団」の解散手続きを行った。国連女性差別撤廃委員会、国連拷問禁止委員会などの国際機関も、被害者中心のアプローチに違反し、「真実の権利と再発防止の確保を保証することに失敗した」と指摘し、再交渉を要求した。昨年9月にも、国連真実・正義・賠償及び再発防止増進特別報告者は人権理事会で、「人権的アプローチが不足し、被害者の権利を縮小」させた「2015日韓合意」の問題を指摘し、改正の必要性を勧告した。

 


さらに大きな問題は、「2015日韓合意」が日本軍「慰安婦」問題の解決どころか、別の問題を絶えず派生させてきた事実を朴元大統領は理解も認定もしていない点だ。

 


日本政府は「日本が失ったのは10億円だけ」と明言し、「2015日韓合意」を日本軍「慰安婦」問題消去の道具として利用してきた。

日本外交公文書で「性奴隷説」を公式否定し、世界中の少女像の設置妨害と撤去攻撃の先頭に立ち、歴史教科書に日本軍「慰安婦」関連の記述を削除・縮小することで帝国主義日本の植民地支配と戦争犯罪を歪曲してきた。日本軍「慰安婦」被害者への賠償を求めた韓国裁判所の判決に対しても、国際機関で歴史的真実と継承を取り上げる際にも、「最終的・不可逆的に解決された」、「韓国が国際法に違反している」などオウム返しに繰り返し、問題提起自体を封鎖したり攻撃してきた。 

そして、当時外務大臣だった岸田氏は日本の総理大臣になり、「平和憲法」9条改正に拍車をかけ、軍国主義に回帰している。

 



結果として「2015日韓合意」は戦争犯罪の加害者が「お金で解決した」、「二度と謝罪しない」と強弁する根拠となり、歴史否定と歪曲の口実を提供し、被害者侮辱と非難、攻撃の道具となってきた。韓国政府が日本軍「慰安婦」問題を「普遍的人権問題」として国際社会で言及することさえ「合意違反」と日本政府が反発する口実を提供することで、被害者の存在を消し去り、歴史的真実を封鎖しようとする加害者の試みに対応する手段すら無力化してきた。

何より「2015日韓合意」を擁護し、強制動員の「第3者弁済案」を発表した尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の歴史観を生み出し、日本右翼の主張に同調する反民族・反民主・反人権勢力を復活・拡大させた。韓国政府が国連人権理事会に『日本政府が「慰安婦」被害者と「強制動員」被害者に公式謝罪し、加害事実を認めた』という文書を提出し、自国民や被害者ではなく加害国を代弁する悲惨な現実を生み出した。

 


これにより、回顧録と当該報道を通じて明らかになった事実は、朴槿恵前大統領は「2015日韓合意」という自分の決定がどのような意味を持つのか、どのような不幸な結果をもたらしたのか、当時はもちろん、今も理解していないということだ。

 


そこで私たちは要求する。

 


一、朴槿恵前大統領は「2015日韓合意」の問題を直視し、反省すること。問題の本質をごまかしたり、市民団体に責任を転嫁する行為を直ちに中止せよ。

 

一、尹錫悦政権は国連「真実正義賠償特使」が勧告したように、「日本軍性奴隷制の生存被害者が国際基準に基づいて真実、正義、満足を含む賠償及び再発防止を保障されるように」積極的に努力せよ。

 

一、日本の反人道的犯罪行為である日本軍性奴隷制を消そうとする「2015合意」は廃棄されるべきであり、誤って渡された10億円は日本政府に返還されるべきであることを再確認する。

 



2023105

正義記憶連帯



★『「慰安婦合意を聞いたことがない」と尹美香(ユン・ミヒャン)ごまかし、言葉も出ない』[朴槿恵回顧録1] https://www.joongang.co.kr/article/25196717#home



(訳 権龍夫)