〈報告〉戦時性暴力問題連絡協議会 第66回 水曜行動in新宿(2023.7.19)
7月19日、第66回目の水曜行動in新宿を行いました。
(1) 月間報告 池田恵理子さん
8月14日の「慰安婦」メモリアル・デーは、1991年に韓国の金学順さんが名乗り出て、アジア各国の被害者が立ち上がったのを記念した日。
今年は「慰安婦」制度での強制性を認めて、お詫びと反省を発表した「河野談話」から30年も経つが、日本政府はいまだに「強制連行の証拠はない」として、日本の国家責任を認めていない。
これは許されないことだ。しかし8.14には国内外で様々なイベントや街頭行動があり、闘いは続いている。
7月16日には、名古屋で行われた第34回「愛知サマーセミナー」に呼ばれて、日本軍の性暴力加害の証言を続けた不戦兵士・近藤一さんの生前の活動を話したが、中・高校生も含めて熱心に聴いてくれた。戦争による被害と加害を次世代に語り継いでいくことの重みを実感した。
(2) 東チモールにおける日本軍「慰安婦」問題 松野明久さん
日本のジェンダーギャップ指数は、世界146カ国中125位という過去最低の順位となった。
日本政府が女性の人権を尊重していないことが、特に「慰安婦」問題がその象徴としてある。「慰安婦」問題を解決できない日本は、国際的には大変恥ずかしいこと。
戦争中、東チモールには、日本軍が12000人も進駐した。
東チモールでは、慰安所ではなく、軍が行った先々の村々で、女性を何か月間か監禁して「慰安婦」とした。証言などを調べたところ5000人位の被害者がいた。サバイバー20人の証言をとったが今ではたった1人しか存命ではない。
被害者には、朝鮮人、中国人、チモール人、ジャワ人などもいる。被害者たちは、昼間は牛馬のように働かされ、夜は兵士の相手をさせられる生活。
東チモールには毎年行って、学生たちと「慰安婦」問題について話している。日本政府がこうしたことを知らないと否定することは、本当に恥ずかしいことだ。
松野さん発言の詳細発言は、下記参照して下さい。
https://www.restoringhonor1000.info/2023/08/66-in-2023719.html
(3)サバイバーを記憶する~中国のサバイバー 張先兎さん 田巻恵子さん
田巻さん発言の詳細は次のアドレスをクリックしてご覧ください
https://www.restoringhonor1000.info/2023/07/blog-post_21.html
(4)国連の普遍的定期審査(UPR)の報告書採択 山田久仁子さん
国連人権理事会の4回目の普遍的定期的審査が 1 月 31 日に行なわれ、その報告書の採択が 7 月 10 日に発表された。日本国内のさまざまな人権問題が指摘されその 300 の勧告のうち、180 を「フォローアップ」するとしたが、「慰安婦」問題への勧告はフォローアップしないと日本は報告、そのまま採択されました。
日本政府は、「責任を果たした、終わったことだ」としている。過去の不都合な事実にきちんと向き合い、被害者の声に応えることこそが、日本が生き残れる唯一の途だ。
(5)フィリピンの弁護士バージニア・ラクサ・スアレスさん
フィリピンの弁護士バージニア・ラクサ・スアレスさんが参加し発言。
マラヤ・ロラズが国連の女性差別撤廃条約に個人通報制度を活用して提訴し、被害者への完全が被害回復を実施するよう勧告を引き出した。
■以下、バージニアさんの発言内容(要約)■
同志の皆さんとの国際連帯万歳!
私はフィリピンから来ました弁護士バージニア・ラクサ・スアレスです。
私はKILUSAN(民主主義のための国民運動)の事務局長であり、また女性の全国連合の一つであるKAISA KA(自由のための団結)議長でもあります。
私はまた、第2次世界大戦中、日本軍による包囲作戦と性的暴力被害者であるルソン島中部マパニケのロラ(おばあさん)たちの組織、マラヤ・ロラズの弁護士も務めています。そして、ロラたちの正義のために、特に日本政府に対して闘う団体や個人の幅広い連合体組織である「The Flowers for Lolasキャンペーンを代表して、皆さんに挨拶を送ります。
マラヤ・ロラズは国連CEDAW(女性差別撤廃条約)に提訴し、勝訴しました。(ロラたちを含む全ての戦争被害者への完全な被害回復措置を実施するよう勧告を引き出したこと)
しかしながら、この勝利は、フィリピンのすべてのロラたち、つまり軍隊による性的暴力と性的奴隷の被害者のものです。現在でもフィリピンでは米軍による性的被害が起きています。CEDAWが女性に対する戦争と軍国主義の影響を取り上げたのはこれが初めてであり、意義あることです。
CEDAWの決議により、フィリピン政府はロラたちを支援し、国家基金による賠償を提供し、ロラたちの健康を確保するためのリハビリテーションを行い、フィリピン・カリキュラムにロラの歴史を盛り込み、ロラのための記念館/博物館を設立する義務があります。ロラたちの大義の実現を、私たちの政府が引き受けることでもあります。
そして最後に、日本政府に対する正義を求めるロラの大義を、私たちの政府が引き受けることです。
戦いは終わっていません!
私たちは正義のために闘い続け、CEDAW決議が確実に実施されるよう注視しなければなりません。
ありがとうございました。
※
The Flowers for Lolasにはリラ・ピリピーナ、マラヤ・ロラズ、華人系フィリピン人(Teresita Ang See)などの団体、および個人が参加。
■当日配布のリーフ■
■リーフの内容■
「NO to WAR!」と7月10日、国連人権理事会の日本政府の採択に合わせて訴えるナルシサ・クラベリアさん
今年も敗戦から78年目の夏が巡って来ました。
ウクライナとロシアの戦争は全く収まる気配はなく、台湾有事、沖縄軍事強化などと、徐々に世界を巻き込んでいます。国民を再び戦争への道に導くのではないかと恐怖と不安を抱きます。アジア太平洋地域の平和が急速に脅かされている状況のなか、フィリピン人「戦時性奴隷」被害者の女性たちから、この7月、日本政府に向けて「日本政府は戦後処理問題を未処理のままにして過去を闇に葬ってはいけない」との声明が出されました。
被害者と支援者の団体であるリラピリピーナの代表はジュネーブに行き、国連人権理事会にむけたサイドイベントを開催して「過去を思い出し、未来を主張するロラたち(被害女性たち)は立ち上がり、戦争に反対するNO to war‼」 と叫びました。
2023年7月10日、国連人権理事会 第53会期・日本の人権状況に関する普遍的定期的審査(UPR)におけるフィリピン人「慰安婦」による声明をここに一部要約し、紹介します。
――第二次世界大戦の終結から78年が経ちますが、戦時中の日本軍『性奴 隷』制、すなわち「慰安婦」とされた被害者たちは、日本軍により彼女らが被った損害について、今もなお達成されていない正義を求め続けています。
日本は、第二次世界大戦中に侵略・占領したフィリピンなど太平洋地域の国々で数多くの女性、少女になされた戦時中の戦争犯罪を無視し続け、継続的差別を行いながら、一方で女性の人権のために取り組んでいると主張する事は出来ません。
日本は、国際社会の責任ある一員として、第二次世界大戦で犯した歴史上の大きな不法行為を誠実に正さなければなりません。――
フィリピンのレイテ島で被害にあった故レメディアス・フェリアスさんがキルト(自らの被害体験を1枚の布に刺繍)
日本政府は被害者の声に誠実に向き合え
国連の人権理事会の普遍的定期的審査とは、193カ国全ての国連加盟国が互いに人権状況を審査し合う制度で、2006年につくられました。日本も加盟しています。
この、第4回目の日本の普遍的定期審査が1月31日に行なわれ、その報告書の採択が7月10日に発表されました。日本国内のさまざまな人権問題が指摘されその300の勧告のうち、180を「フォローアップ」するとしましたが、「慰安婦」問題への勧告はフォローアップしないと報告、そのまま採択されました。
以前の日本政府の態度のまま、責任を果たした、終わったことだとしているのです。
過去の不都合な事実にきちんと向き合い、被害者の声に応えることこそが、これからの国際社会で日本が生き残れる唯一の途ではないでしょうか。
私たちは、このことをフィリピンの被害女性と共に求めていきます。