ナヌムの家より矢嶋です。




今年2021年4月の臨時理事会発足と現在に至るまでの経緯について説明いたします。以前も一部お伝えしましたが、この間に起きたことと現状をご理解いただくためにも、ここでもう一度時間を戻してみなさんに説明するのがいいかと思います。




1:2020年12月、ナヌムの家の監督行政機関である京畿道の権限で、曹渓宗の僧侶理事たちを解任。しかしこの理事たちは不服を訴え行政裁判を起こす。現在係争中。1審の判決は今年末か来年初頭になる予想。現在この僧侶理事たちは職務停止状態。


2:2021年4月、京畿道および広州市の権限で全11名中8名の曹渓宗系理事が僧籍を持たない臨時理事(いずれも民間人)と交代。当初は8(臨時理事)対3(曹渓宗系理事)でナヌムの家民主化運動側に有利な理事会構成とみられていた。


3:曹渓宗がこの臨時理事会構成に不服を申し立てる。結果、カトリック系の臨時理事1名を解任し曹渓宗のヘイル和尚が代わりに理事として着任。バランスは7対4となるがこの時点でもまだ民主化運動系が有利とみられていた。


4:ところが臨時理事のなかの2名が実は曹渓宗の関係者であることが判明。これにより5対6と急遽パワーバランスが逆転する事態となる。


5:今年8月初旬に開かれる予定だった臨時理事会の場で多数決をとり全臨時理事を解任し、あらたに曹渓宗の関係者を理事として着任させるという案がほぼ承認されることが決まっていた。しかし曹渓宗側の臨時理事1名がこの理事会開催直前に良心の呵責で理事職を辞任。バランスが5対5となり全臨時理事解任は一時回避された。


6:広州市が京畿道の同意を得て、先週になって11番目の臨時理事を着任させると通達。この新理事はソウルにある曹渓宗が経営する福祉施設の院長と判明。よって臨時理事会内のバランスが5対6と、再び曹渓宗有利となる。


以上がこれまでの経緯と現状です。

民主化運動支持側の臨時理事たちがこの曹渓宗系新理事の着任に対し京畿道および広州市に抗議しましたが効果はありませんでした。

ひとつ望みがあるとすれば、曹渓宗側の臨時理事1名が、内部告発を通して私たちがその悪事を告発したウォネン和尚の裁判の担当弁護士だという点です。
この理事とウォネンの間には利益関係があるという点を明らかにし理事辞任に追い込みとりあえず5対5まで再度持ち込むというのが戦略のようです。
しかしこれもうまくいくのかどうかわかりません。またうまくいったとしてもこの理事に代わる新たな(曹渓宗系)理事が曹渓宗と癒着する京畿道・広州市の任命により着任する可能性が極めて高いわけですから、時間稼ぎ程度の効果しかないとみています。


このままいくと今月中には臨時理事会が解体され、曹渓宗体制が全面復活すると思われます。こうなると内部告発した私たち7名のスタッフはナヌムの家を近々去らねばならなくなる公算が高いです。


こういう展開になったしまった原因はいくつもあると思いますが、その主だったものをあげるなら、


A:臨時理事たちの中にすでに曹渓宗側の理事が2名いたこと。公正であるべきにもかかわらず京畿道・広州市はその原則を破り曹渓宗側の圧力に同調したようです。



B:臨時理事会発足直後に起きたヘイル和尚とカトリック系臨時理事の交代を臨時理事たちが認めてしまったこと。
しかも常任理事という理事会のなかでも権限の大きいポジションについたのです。じっさいヘイルの就任後臨時理事たちはたびたび弱腰でした。臨時理事たちは″ヘイルはウォネンと対立関係にある派閥に属する僧侶なので客観的に物事を判断する”という説明を監督行政機関から受けその言葉に期待していたようですが、私たち内部告発者に言わせると所詮曹渓宗という同じ穴の何とかです。曹渓宗の利益と名誉を守るためなら派閥など関係なく行動するだろうことは分かっていましたが、やはりそうなりました。

ヘイルが着任してまず始めたのが内部告発スタッフたちに対する個人攻撃と業務妨害です。すでに決済された新事業等を 常任理事の権限で白紙に戻す(特にハルモニ達に関わるものは深刻です。本来提供すべきサービスが提供できなくなります。)ことも何度かありました。



C:臨時理事たちの人選が果たして正しかったのか。臨時理事たちの顔ぶれを見ると進歩系の人物たちも入っているのは事実ですが、来年4月の大統領選でイ・ジェミョンを当選させたいという意図から曹渓宗による選挙運動妨害を避けたいという考えがあり、ことごとく曹渓宗側理事の意を汲む露骨な妥協がこの間繰り返し行われてきました。

現場でこういう状況をたびたび目の当たりにした私たち内部告発者と臨時理事たちの間で一時緊張関係が生じたほどです。
私たちの側だと一応公言する臨時理事の1名は90年代にハルモニ達の証言を集めまとめる作業をしていた人ですが、ナヌムの家の問題をどうするかということより本人の利益になることに関心の中心があるようで、正直期待できません。代表臨時理事も今になって″ヘイルを受け入れたのは誤りだった”と口にする始末です。


D:Cの一部とも関わってきますが、ナヌムの家の問題が政争の道具として利用されているという点。

7月にナヌムの家前代表理事だったウォルチュ和尚が死にました。しかしその死因が内部告発とそれを支持する京畿道(イ・ジェミョンが現知事)によるストレスだと対立候補であるユン・ソギョルに発言させるなど、大統領選を射程に入れたナヌムの家問題の利用がすでにスタートしています。

ちなみに仏教界は原則ユン・ソギョル(国民の力)を支持しています。イ・ジェミョン陣営としては仏教界の支持を取り付けなくても組織的妨害は避けたいという考えがあるようです。その点を突く形で曹渓宗は″ナヌムの家という利権”を守るため裏であれこれ動いているとの情報が入ってきています。



D:曹渓宗を管理できる外部機関が存在しない。曹渓宗自体歴史も長く、行政機関、警察機関、司法機関、産業経済、教育機関などを始めその影響力の及ばないところはないと考えていいかと思います。
私たち内部告発スタッフたちは肌身をもってそのことを感じてきました。弾劾で大統領を退陣に追い込むことができる強い市民社会があるにもかかわらず、曹渓宗の悪事に関することとなるとこの強大な宗教権力集団と前面から対峙できるような社会構造が存在しないことがこの間明らかになりました。



さて次はみなさん気にかかるハルモニ達の現況です。

イ・オクソンハルモニ運動治療にも毎回参加するなど体を積極的に動かそうとしていますが、気力の衰えが著しいです。これまでは毎朝のように一階におりてきて私たちと話をしたり花札をしたり、時にはドライブに出かけるなどしていたのですが、ここ一月ほど自分の部屋で過ごすことが多くなりました。話もあまりしないなどふさぎ込んでいるようにも見えますので心配しています。
先日顔見知りの神父さんが会いにやってきてくれました。その時は本当にうれしかったようで、会心の笑顔。明日は日本の高校生たちとzoomで対面する予定ですが、実現するかどうか。


ソンリサンハルモニ:だいぶ痩せましたが、とりあえず健康の方は維持しています。週に何度か一階に降りてきて私たちと話をしたり買い物に出かけます。自由を好む性格ですので自分の行きたいところに行きたいとき行き、やりたいことをするというのがハルモニのスタイルです。それが運営陣の交代後思うようにできなくなった、またそれまでいうことを聞いてくれた看病人たちも人が変わってしまったようだと、不満をよくこぼしています。運営陣は看病人を通してハルモニを統制しようとしているのは明らかですからその件を臨時理事たちにどうにかしてほしいと伝えても術がないとの返事だけ。
曹渓宗側有利なのを知ってか運営陣は臨時理事たちの言葉に耳を傾けようともしません。ハルモニ達に最大限のサービスを提供するはずが、最小限の寝食を与えるかつてのナヌムの家に逆戻りしています。


パク・オクソンハルモニ運動治療に参加し始めてからもはや寝たきりではありません。先日は自力歩行で階段を一段上り下りしました。旧運営陣の勝手な判断で寝たきり状態にさせられてしまった2年間を乗り越えてようやく自由を少しづつ取り戻しつつあります。チュソクの時には娘さんが顔を見にやってきました。


カン・イルチュルハルモニ:娘さんが法人により雇用された以後、私たちとの積極的な交流は今でも絶たれた状態ですが、運動治療の参加を通じて週に何度か顔を合わせるようになりました。運営陣により寝たきりにさせられる直前までいったのですが、 運動治療の時には大きな声で歌を歌ったり再び自力歩行するようになりました。認知症はありますが、人と会って話をするのは好きですので、娘さんがハルモニにつていないときは私たちもなるべく話をするようにしています。


今年2月にナヌムの家のハルモニが一名亡くなりました。そのハルモニの胸像を運営陣が勝手に作りその開幕式がチュソク後に行われました。しかし実際胸像を目にして驚きました。亡くなったハルモニの面影が全くなく、まるで別人なのです。胸像を制作するときは私たち(内部告発した)スタッフと担当作家が相談しながらこれまで作ってきたのですが、運営陣は私たちに内緒でこの作家と連絡をとり自分たちだけで進めてしまったのです。作家のアトリエを何度も訪れ一緒に直したりしながら生前のハルモニ達の面影が感じられるように努めてきたのですが、今回は運営陣がハルモニの写真をこの作家に送ったのち制作過程確認作業を一切しないまま出来上がった像だけを見てOKを出したそうです。
運営陣がやってきてからこのハルモニが亡くなるまでの半年のあいだ、ハルモニと接する機会は何度もあったはずです。にもかかわらず全く似つかない胸像に対しOKを出してしまいました。また胸像に付けるハルモニ紹介の英文訳も間違いの多いかなりいい加減な翻訳であることにすぐ気づきました。作家に問いただしたところ、原文を自動翻訳を使って英語に翻訳しそれを運営陣に見せたところをOKをもらったのでそのまま文句を石に刻んだとのことでした。以前の胸像とレターフォントもそろっていませんし、胸像担当作家としての誠実さが全く感じられない雑なつくりのものになってしまいました。


なお、私たちが内部告発したのちもハルモニ達の存在を前面に出した寄付金集めのシステムを法人は変えておらず、法人の口座に振り込まれた寄付金がハルモニ達のためにきちんと使われることは今現在もありません。もし海外から今もナヌムの家に定期・不定期に寄付をしている方がいらっしゃるのなら、考え直されることをお勧めしたします。


3週間後に次回理事会が開かれる予定です。その結果が分かりましたらまたお知らせしたと思います。