81日に開幕した「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」がわずか3日で中止されることが発表されました。
「平和の少女像」の撤去を求める抗議電話やメール、河村たかし名古屋市長ら政治家たちの検閲発言、補助金交付差し止めを示唆した菅官房長官の圧力発言、そして「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」といった脅迫文に屈してこのような決定をしたことは、結局、この日本社会が「表現の不自由」な状況に陥っていることを世界に示す結果しかもたらしません。また、政治家の検閲や圧力に屈すること、犯罪的な脅迫文に屈することは、今後に累を及ぼす判断と言わざるをえません。これらを助長させないためには、犯罪に対しては取り締まり、検閲に対してははねのける、毅然とした対応を取る以外に方法はないと考えます。中止は最悪の選択です。

私たちは、このような決定を行った「あいちトリエンナーレ2019」実行委員会会長の大村秀章知事及び津田大介芸術監督に対し、直ちにこの決定を撤回し、表現の自由とこの社会の民主主義を問う、本来素晴らしい趣旨の同展示を即刻再開させるよう求めます。


ところで、いずれも何らかの理由で過去に展覧会などで撤去された経緯のある作品ばかりを集めた企画展で、日本軍「慰安婦」被害者を表象した「平和の少女像」だけがターゲットになったことに、私たちは強い怒りと落胆を感じずにはいられません。他はともかく日本軍「慰安婦」制度という戦争犯罪についてだけは絶対に認めたくないという強い意思が示されたものと考えざるをえないからです。
アジア各国の日本軍「慰安婦」被害者たちは、日本が事実を認め、再発防止のための教育と記憶・継承をたゆまず続けて行くことを訴えてきました。「平和の少女像」も、そのような被害者たちの願いを反映して、被害者を追悼し記憶・継承するために製作されたものです。日本政府と日本の市民こそが、その趣旨を最もよく理解し、尊重し、世界と共に守って行こうとした時にはじめて、被害者たちの赦しを得ることができるのに、政治家をはじめとする一部の人々が再び真逆の言動をとって、その本心をさらけ出してしまいました。
「日本人の心を踏みにじる」(河村たかし市長)、「日本で公金を投入しながら、我々の先祖がけだもの的に取り扱われるような展示物を展示されるのは違うのではないか」(松井一郎・大阪市長)といった倒錯した「被害者意識」は、加害の歴史を直視せず反省もしていないことを示すもので、これこそが世界に対して日本の「不名誉」となる発言に他なりません。
日本政府と日本の市民に求められているものは、事実を直視し、事実を深く学び、これを記憶し継承することによって、再発を防止する取り組みを率先して行うことだということを、この機に改めて強く訴えます。

201984
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動
共同代表     梁澄子 柴洋子